スライ&ザ・ファミリー・ストーン『ウッドストック・エディション』

スライ&ザ・ファミリー・ストーン『ウッドストック・エディション』

2009年7月22日発売 EICP1257〜8 2枚組:¥3,780(税込)

完全生産限定盤●紙ジャケット仕様●未発表*収録
両面刷り折込ポスター付●解説・歌詞・対訳付

米盤(BN26456)をE式セミダブル・ジャケットにて再現

DISC 1 : STAND !

1. スタンド! 5. シング・ア・シンプル・ソング
2. ドント・コール・ミー・ニガー・ホワイティ 6. エヴリデイ・ピープル
3. アイ・ウォント・トゥ・テイク・ユー・ハイヤー 7. セックス・マシーン
4. サムバディズ・ウォッチング・ユー 8. ユー・キャン・メイク・イット・イフ・ユー・トライ

1969年5月に発売されたスライ&ザ・ファミリー・ストーンの4thアルバム『スタンド!』。しなやかなファンク、ソウル、ゴスペル、サイケデリック、ロックが見事な融合を見せる本作は彼らの最高傑作の1枚であると同時に、60年代を代表する最重要かつ最大の影響力を持つ作品として名高い。

パワフルな曲群と希望、調和、団結を訴える熱いメッセージの数々。それをまとめ上げる発想力豊かなアレンジ、重なり合い空高く舞い上がるヴォーカル、そして超タイトな演奏。崇高にしてスピリチャル、高揚的で扇動的。まさに名盤だ。

60年代後半の社会、文化、政治的思潮をそのまま映し出した本作には名曲が揃う。中でも最大のヒットを記録したのは「エヴリデイ・ピープル」で、同曲はビルボードのポップ、R&Bチャートの首位まであっという間に上りつめた。ジャンルの壁をまたぎ、国を二分していた人種の壁も取り払ったのだ。アンセムと呼ぶにふさわしい「アイ・ウォント・トゥ・テイク・ユー・ハイヤー」も、スライの並はずれた曲作りの能力を裏付けるナンバーだ。音楽とメッセージがひとつに融け合い、そこにゴスペル的な熱さが加わることで、爆発力満点の曲に仕上がっている。もちろん、アルバムはスライのヒットメーカーとしての有り余る才能をあらためて示しただけに終わらない。13分におよぶ「セックス・マシーン」ではバンドの高い演奏力を証明し、「ドント・コール・ミー・ニガー・ホワイティ」では人種間の争いを冷静に批判している。本作は1969年、アメリカを激しく揺さぶった政治・社会問題を鮮やかに捉えた1枚の写真と言えよう。「前の3枚のアルバムもパワフルだったが、『スタンド!』は初めてグループのヴィジョンが本当の意味でひとつにまとまったアルバムだった」とレガシーのプロデューサー、ボブ・アーウィンは語る。「これで彼らの今後の歩みが決まったんだ」

DISC 2 : RECORDED LIVE AT THE WOODSTOCK MUSIC & ART FAIR, SUNDAY, AUGUST 17, 1969

1. マレディー * 6. ミュージック・ラヴァー/ハイヤー
*2. シング・ア・シンプル・ソング * 7. アイ・ウォント・トゥ・テイク・ユー・ハイヤー
3. ユー・キャン・メイク・イット・イフ・ユー・トライ * 8. ラヴ・シティ *
4. エヴリデイ・ピープル * 9. スタンド! *
5. ダンス・トゥ・ザ・ミュージック  

ウッドストックのパンフレットを開くと、スライ・ストーンの写真の下に彼らのマニフェストが載っている。「立ち上がり……声を張り上げ……踊り……平和に身もだえする……自らの感じる音楽を演り、自らの演る音楽を感じる。なあブラザー、頭を貸してくれ。そうすればわかるさ!」
午前3時半の出番だったにもかかわらず(筋金入りの音楽ファンにもきつい時間だ)、スライ&ザ・ファミリー・ストーンはウッドストック・ジェネレーションを感動の渦に巻き込み、音楽界が誇る最強のライヴ・バンドの名に恥じないその驚異的なパワーを発揮する。最新のスタジオ盤『スタンド!』のヒットの勢いに乗った白熱のステージは、頂点にあるグループの姿を余すところなく伝えるとともに、のちの映画とサウンドトラック盤のハイライトになった。「スライのステージはエネルギー満点で、波動の広がる勢いがものすごかった」とイベントの共同プロデューサー、マイケル・ラングは振り返る。「衣装も誰よりも派手でね、パーティーにふさわしい格好だった。他の出演者の目をいちばん奪ったのはスライたちだ、間違いないよ」

『スタンド!』の収録曲を中心にしたアンセムの数々と、スライ・ストーンの比類無き音楽的才能。そして驚愕の演奏力を誇るバンド(弟でギターのフレディ・ストーン、妹でキーボードのローズ・ストーン、いとこでベースのラリー・グラハム、ドラムスのグレッグ・エリコ、サックスのジェリー・マティーニ、トランペットのシンシア・ロビンソン)。彼らが生み出すパーティー的な高揚感に煽られ、雨と泥にまみれた観衆のテンションは一気に上がる。群衆が盛り上がる様はまさに「家族の一大パーティー(ファミリー・アフェア)」だった。「何十万という人間が集まった伝道集会みたいだった」とラングはいまだ興奮が収まらない様子で語る。「あのコール&レスポンスで、ウッドストックが教会になったんだ」とボブ・アーウィンも言い添える。「スライたちはとてもリラックスして、自信に溢れていた。曲目は基本的にやりながら決めていったんだ。どういうふうに、どんな順番で演るのがベストなのか。客のリアクションを感じて、それで決めたんだよ。完璧な読みだったね」

アドレナリン全開の「エヴリデイ・ピープル」や「ダンス・トゥ・ザ・ミュージック」でヒットメーカーとしての実力を見せつけ、「ミュージック・ラヴァー」と「アイ・ウォント・トゥ・テイク・ユー・ハイヤー」ではジャム風の演奏を展開。ステージと会場とが一体になり、誰もが恍惚の極みへと上りつめていった。「バンドは観客が放つエネルギーを、観客はバンドの出すエネルギーをもらっていた。驚愕のパフォーマンスだった」とアーウィンは語る。40年後の今も、このステージはウッドストックの精神を体現したパフォーマンスとして、そしてスライ&ザ・ファミリー・ストーン史上に残る名演として語り継がれている。