ジェファーソン・エアプレイン『ウッドストック・エディション』

ジェファーソン・エアプレイン『ウッドストック・エディション』

2009年7月22日発売 BVCP40061〜2 2枚組:¥3,780(税込)

完全生産限定盤●紙ジャケット仕様●未発表*収録
両面刷り折込ポスター付●解説・歌詞・対訳付

米盤(LSP-4238)をA式セミダブル・ジャケットにて再現

DISC 1 : VOLUNTEERS

1. ウィ・キャン・ビー・トゥゲザー 6. ウッドゥン・シップス
2. グッド・シェパード 7. エスキモー・ブルー・デイ
3. ザ・ファーム 88. ア・ソング・フォー・オール・シーズン
4. ヘイ・フレドリック 9. メドウランド
5. ターン・マイ・ライフ・ダウン 10. ヴォランティアーズ

ますます混迷するベトナム戦争が暗い影を落とし、全体を不穏な空気が包み込むアルバム。それがジェファーソン・エアプレインの6作目『ヴォランティアーズ』だ。1969年11月に発売されるや、アルバムは激しい論争を巻き起こす。アルバムに満ちる反戦への思いが原因だった。もともとのタイトルが『ヴォランティアーズ・オブ・アメリカ(Volunteers of America:ファシスト的アメリカの志願兵たち)』だったことも状況をさらに悪くする。この案はすぐさま所属レコード会社にボツにされた。しかし芸術性にすべてを賭けるこの熱い姿勢にこそ、エアプレインの誠実さが現れている。結成以来、彼らは己の信念を表明することを一度たりとも恐れず、非難などもろともせずに、独自の音楽に時事問題をテーマにした扇動的な詞を注入したのだ。

かすみ漂うサイケデリック、牧歌的なブルース、強烈なアシッド・ロック、そして気だるいカントリーが混在する音楽のるつぼ。『ヴォランティアーズ』は政治、社会、文化が揺れに揺れた60年代後半の動乱が生んだ芸術だ。間違いなく、ジェファーソン・エアプレインはBGMを提供するだけでは満足していなかった。彼らは聴き手に刺激を与え、情報を吹きこみ、激しく挑みかかるバンドだった。

本作の幅をさらに広げているのがスペシャル・ゲストたちの存在だ。グレイトフル・デッドのジェリー・ガルシア(「ザ・ファーム」でのペダル・スティール)、デヴィッド・クロスビー、スティーブン・スティルス、名セッション鍵盤奏者ニッキー・ホプキンス(ビートルズやストーンズのセッション他)に加えて、後のエアプレインのドラマー、ジョーイ・コヴィントンも参加している。
「ウッドゥン・シップス」はポール・カントナー、デヴィッド・クロスビー、スティーブン・スティルスの共作で、この後CSNの1969年発売の同名デビュー・アルバムにも収録され(「木の舟」)、広く知られることになる。名曲ぞろいの本作の中でも「ウィ・キャン・ビー・トゥゲザー」とアンセム的な熱いタイトル・ナンバーは、エアプレイン史に残る名曲としていまも聴き継がれている。

サウンド面で耳を引くのがヨーマ・コーコネンの斬新なリードギターだ。本作における最大の貢献者と呼ぶにふさわしい。ソニー・レガシーのプロデューサー、ボブ・アーウィンも絶賛する。「『ヴォランティアーズ』はヨーマが全体の中で欠かせない存在になったアルバムだ。獰猛な炎を思わせるギター・ワークが音楽と政治色をひとつにまとめる役を果たしている」
『ヴォランティアーズ』は発売後たちまちにゴールド・ディスクを獲得、ビルボードのアルバム・チャートの13位まで駆け上がった。本作はまた、ジェファーソン・エアプレインがその輝かしいキャリアの重要な1章を締めくくったアルバムでもある。創設メンバーのマーティ・バリンとスペンサー・ドライデンはこの後1年を待たずに脱退。バンドは新たな創造の未開地を切り拓いていくことになる。

DISC 1 : RECORDED LIVE AT THE WOODSTOCK MUSIC & ART FAIR, SUNDAY, AUGUST 17, 1969

11. イントロダクション 14. 恋して行こう *
12. 人生の裏側 15. ウォント・ユー・トライ〜サタデイ・アフタヌーン
13. あなただけを 16. エスキモー・ブルー・デイ

DISC 2 : RECORDED LIVE AT THE WOODSTOCK MUSIC & ART FAIR, SUNDAY, AUGUST 17, 1969

1. プラスティック・ファンタスティック・ラヴァー 5. サイケデリック・プーネイル *
2. ウッドゥン・シップス * 6. カム・バック・ベイビー *
3. アンクル・サム・ブルース 7. ホワイト・ラビット
4. ヴォランティアーズ 8. プーネイル・コーナーの家 *

ジェファーソン・エアプレインは話題の音楽イベントに関して、しろうとではなかった。批評家とファンが口を揃えて言うように、1967年のモンタレー・ポップ・フェスティヴァルでは彼らのステージが見所のひとつだった。そして1969年、エアプレインは史上最も有名な、悪名高き2つの野外フェスに出演する。ウッドストックとオルタモントだ。「私らはフェスティヴァルをプロデュースするのは初めてで、信用はゼロだった。だからアーティストへの出演交渉はかなり難航していたんだ」とウッドストックの共同プロデューサー、ジョエル・ローゼンマンは語る。「最初にブッキングできたのがジェファーソン・エアプレインでね、彼らのおかげで行き詰まりが解消できたようなものなんだ」

エアプレインはもともと8月16日、土曜の晩のトリをとる予定だったのだが、ジャニス・ジョップリンやザ・フーをはじめ他の多くの出演者らと同じく、果てしなく待たされる。ようやく出番が回ってきたのは翌17日の朝。だがジェファーソン・エアプレイン——グレイス・スリック(vo)、マーティ・バリン(vo)、ポール・カントナー(g)、ヨーマ・コーコネン(カウコネン)、(g)ジャック・キャサディ(b)、スペンサー・ドライデン(ds)。そしてゲストのニッキー・ホプキンス(key)——は堂々たるふるまいで至上のステージングを繰り広げ、マックス・ヤスガー所有の600エイカーの広大な牧場に集まった大群衆の熱い期待に応えた。セットリストはサイケデリック・ロックの傑作『シュールリアリスティック・ピロー』からの2大ヒット「あなただけを」と「ホワイト・ラビット」の他、さらに実験性が高く、聴く者の思考を拡大する強力なナンバーの数々だ。「(エアプレインの)連中は一晩中起きていて、ステージに上がったときにはもう太陽が昇っていた」と別の共同プロデューサー、マイケル・ラングは振り返る。「出たのはザ・フーの後だったんだ。普通に考えたら、かなりきつい。それなのに見事にザ・フーを打ちのめしたんだからすごいよ。本当にいいステージだったな。演るほうも観てるほうも、地元の大スターの凱旋ライヴという感じだった。グレイス(スリック)は「モーニング・マニアック・ミュージック(朝の狂乱の音楽)」なんて言ってたよ」。発売間近のニュー・アルバム『ヴォランティアーズ』からも「エスキモー・ブルー・デイ」と「ウッドゥン・シップス」が披露された。

ソニー・レガシーのプロデューサー、ボブ・アーウィンはきっぱりと言う。「ジェファーソン・エアプレインのステージはウッドストックでも一、二を争うほどすばらしかった。長さ、質ともにね。すべての要素がひとつに合わさったんだ。場所が完璧なら、時間も完璧、ステージも完璧だった」