nano-mugen compilation
文/高橋智樹 | 写真/TEPPEI,中河原理英

チャットモンチー07.16[sun] 13:15〜13:50


『NANO-MUGEN FES. 2006』2日間のトップバッターとして登場したのは、徳島発・キュートな天然オルタナ三銃士=チャットモンチー。横浜アリーナの巨大なステージの上に小柄な3人が登場すると、待ち切れないとばかりに沸き上がる大歓声! 記念すべきオープニング・ナンバーは、リリース間もない1stフルアルバム『耳鳴り』の幕開けを飾る曲“東京ハチミツオーケストラ”。ユーモラスさ漂うスローなAメロから一転、サビで聴かせるゴリッとしたギター・サウンドに「おっ」「えっ」と一瞬驚いたような空気が会場を走る。そしてシングルでお馴染みの青春煩悶ナンバー“ハナノユメ”でアリーナは一気にスイッチオン! 「アジアン・カンフー・ジェネレーションさんはレーベルの先輩なんで、『アジカン先輩』って呼ばせてもらってます。今日は呼んでくれてありがとうございます!」というMCに続いて“さよならGoodbye”“ウィークエンドのまぼろし”……と曲が重なるごとに、徐々に魔法がかかっていくようにステージに向けられる視線が熱くなっていく。「うちのお母さんが『ナノムゲン』が言えなくて、ずっと『ナノゲノム』て言ってて」というご愛嬌MCで一度クールダウンしつつ、最後はVo・橋本絵莉子のアカペラから“恋愛スピリッツ”。小さな身体から繰り出す渾身のアンサンブルがアリーナ全体に染みわたっていく。「だから貴方は私を手離せない」……3人のこんがらがった想いと切実な情熱が生んだ、どんな因数分解でも割り切れないロックが、横浜アリーナいっぱいに満ちていく。聴く者すべてのハートにちっちゃなトゲを刺していくような、甘くて痛くて切ないライブ空間……これから始まる2日間のはじまりにふさわしい、遠い「あの日」の胸騒ぎのような35分だった。
01.東京ハチミツオーケストラ
02.ハナノユメ
03.さよならGood bye
04.ウィークエンドのまぼろし
05.恋の煙
06.湯気
07.恋愛スピリッツ

髭[HiGE]07.17[mon] 13:15〜13:50


『NANO-MUGEN FES.』2日目、しょっぱなにステージに登場したのは、「ビートルズとオルタナの常温核融合」あるいは「皮肉と博愛のせめぎ合うロックンロール5人衆」こと髭(HiGE)。バンド名にちなんでのことか、パーカッション=佐藤康一が白装束&もっさり付け髭のアングラ感満載の扮装で現われた時にはまだ、爆笑する者/どうしていいかわからない者にぱっきり分かれている横浜アリーナ。でも、1曲目“白い薔薇が白い薔薇であるように”の爆音が鳴り響いた瞬間、もやもやと漂っていたアウェイ感を一気に払拭! 途端にそこは髭(HiGE)ワンダーランドと化した! 続いてはおとぼけポップ・ナンバー“ブラッディ・マリー、気をつけろ!”、そしてライ麦畑とベートーヴェンを直結するマジカル・ロックンロール・ツアー“髭は赤、ベートーヴェンは黒”。ミュージシャンが聴いても惚れ惚れするに違いないVo&G・須藤のハスキー・ヴォイス。2本のギター+ベース+ツイン・ドラムが生み出すサイケデリックかつダイナミックなアンサンブルを、時に彩るように、時に押し流すように歌う須藤のサングラス姿。そこに滲んでくる、ナチュラル・ボーンなロックの匂い……1日目のチャットモンチーとはまったく違う意味で「何かとんでもないことが始まろうとしている」という胸騒ぎを感じさせる、放射性物質としてのロック・ミュージック。終盤、「ダーティーな世界を見たいかぁぁぁぁい!?」という須藤の絶叫に続いてのナンバーはもちろん“ダーティーな世界(Put your head)”! ♪ダンス、ダンス、フーリガン!のフレーズ、そして最後の30秒で観せた、閃光のような爆音! 最後は“ギルティーは罪な奴”。すっかりヤラレた。ロックンロール・ギルティーはお前だよ!と言いたくなる、そんな30数分間だった。
01.白い薔薇が白い薔薇であるように
02.ブラッディ・マリー、気をつけろ!
03.髭は赤、ベートーヴェンは黒
04.王様はロバのいうとうり
05.ロックンロ−ルと五人の囚人
06.ダーティーな世界(Put your head)
07.ギルティーは罪な奴

SILVER SUN07.16[sun] 14:05〜14:45 | 07.17[mon] 14:05〜14:45



レンタルズと並んで「このバンドを招聘するロック・フェス主催者はアジカンしかいない!」とインディー・ファンのみならず多くのロック・ファンから賞賛&驚愕(?)の声が止まなかった、UKサーフ・ポップの代表選手=シルヴァー・サン。実に9年ぶりの来日! ということで、1日目のアクトの口火を切った曲は「なんと」というか「やはり」というか“Tokyo E Ikitai”。Vo&G・ジェームスがたどたどしく歌い上げる日本語の歌声に、会場から溢れる笑顔と歓声。楽曲は底抜けにポップながら、2本のギターが叩き出すサウンドはどこまでもエッジが利いててずしっと腹にクるし、リズムはいちいちタフに腰にクる。歓喜の上辺を舐めるようなポップではない、強者たちが鳴らす渾身のポップ。ちなみに、ジェームスは1日目は目の覚めるようなピンクのシャツ、2日目はシャツ/ネクタイ/ジーパンのペイントに至るまでシルヴァーでキメて「目で見て楽しむポップ」を実践してみせていた。選曲としては2日間とも、“Lies”“Pipsqueak”“Immediate”など最新アルバム『Disappear Here』が中心のもの。当初は2日間とも同じセットの予定だったのを、1日目のアクトを終えた感想からか、あるいは他の居並ぶ日本のバンドたちのアクトを観て銀色の魂に火がついたか、微妙にセットを変えていたのが面白い。2日目の終盤、コンピ盤でもお馴染みの“Bubblegum”、そして“Lava”“I’ll See You Around”でばしっと終わる……かと思いきや、「アジカン、ありがとう(英語で)」と感謝を述べた後、“Golden Skin”の絶品メロディーで自らのステージを締め括ったシルヴァー・サン。貫禄を身に付けた青臭さとでもいうべき、心弾む音楽がここにあった。

[07.16]
01.Golden Skin
02.Tokyo E Ikitai
03.Lies
04.Can't Get You Out Of My Head
05.Bubblegum
06.Scared
07.Immediate
08.Yellow Light
09.Pipsqueak
10.Lava
11.I'll See You Around

[07.17]
01.Last Day
02.Lies
03.Yellow Light
04.Pipsqueak
05.Immediate
06.Scared
07.Can't Get You Out Of My Head
08.Bubblegum
09.Lava
10.I'll See You Around
11.Golden Skin

MO'SOME TONEBENDER07.16[sun] 15:00〜15:40


チャットモンチー、シルヴァー・サンとあったまってきた横浜アリーナのステージに登場したのは、日本のロック・シーンに燦然と輝くぴっかぴかのスーサイド・ロックンロール=モーサム・トーンベンダー! 黒い長袖シャツの3人を迎える大歓声! 「モーサム・トーンベンダー、やるから」とぶっきらぼうな百々のひと声にもささくれたロックが漲っている。爆音セッション“SIDE B”に導かれて披露するのは、最新アルバムから“ロッキンルーラ”! 飾り気のない3ピースのサウンドがざく、ざく、とアリーナの空気を切り裂き、ダイレクトに鼓膜に飛び込んでくる。そして初期から続くアンセム“未来は今”、ロックンロールもダブもパンクも足しっ放しにしたような性急なリズムに乗せて「見極め続けてくんだ/黄金の瞬間を」と宣誓する“GREEN&GOLD”で一気にヒートアップ! ここで新曲を2曲披露。ソリッドなロックンロール・ナンバーと、アッパーな4つ打ちのポップ・ナンバー。モーサムの両極面をえぐり出したような2曲だ。続いては『NANO-MUGEN』コンピに収録されている“Have you ever seen the Stars?”。ジャキーンと鳴り響く印象的なギター・コードがミドル・テンポで駆け出していく。ロック・スターへの無垢な憧れを歌ったこの曲を、この日の僕らは「モーサムという新たなロック・スターを祝福するナンバー」として聴いていた。ように思う。最後はワンマンやイベントでもお馴染みの“凡人のロックンロール”! ロックが「危険なもの」ではなく、みんなを気持ちよく乗せるようになったこの時代に、なおも暴れ馬ロックンロールを夢想するモーサム。短いアクトの中にも、アリーナの観客はその真髄をしっかり見ることができたと思う。
01.SIDE B
02.ロッキンルーラ
03.未来は今
04.GREEN&GOLD
05.You are Rock'n Roll
06.WE'RE LUCKEY FRIEND
  [新曲・仮タイトル]
07.Have you ever seen the stars?
08.凡人のロックンロール

ストレイテナー07.17[mon] 15:00〜15:40


2日目の3アクト目、夕方に差し掛かろうとするアリーナを歓喜の渦に叩き込むのは……「日本ロック・シーンの孤独な戦士」から「ロック・シーン全体を導く南十字星」へと大躍進を遂げたストレイテナー! 場内の『NANO-MUGEN』ヒストリー映像でも流れていた通り、『NANO-MUGEN』の第2回から連続出場を続けている彼ら。ツアー真っ只中&全国各地のフェス巡りという過酷な夏の、まだほんの入口にあたるこのフェス。でも、本人たちは至って「楽しむ」モードで臨めたようだ。“The Novemberist”に続き、あたかもテナー自身を言い当てたような曲=“Melodic Storm”、そして鉄壁のアンセム“TRAVELING GARGOYLE”で沸点越えの大熱狂! アリーナのお客さんの渾身のジャンプに、カメラの焦点が定まらないほどの揺れが! この日のアクトはテナー史上でもかなりガシッとギアのはまったもので、3ピースとは思えない重戦車のような安定感すら感じさせるものだった。“REMINDER”“Dead Head Beat”“PLAY THE STAR GUITAR”ではアリーナを狂おしいほどの哀しみ色に染め、“DISCOGRAPHY”“KILLER TUNE”ではハードなディストーショナル・ダンス・サウンドを叩き出してみせる。ソリッドなギター・ロックはどこまで遠く世界の「その先」を描き出せるか、という果てなき旅のようなテナーのロックが、アリーナの多くの観客に1曲1曲ざっくり刺さっていく。ラスト・ナンバー“MAGIC WORDS”の間奏中、あまりの盛り上がりっぷりにナカヤマシンペイ、たまらずステージを飛び降り、客席の鉄柵に昇ってガッツポーズ! ついには客席へダイヴ! 文字通り『NANO-MUGEN』とともに大きな存在になってきたストレイテナーというバンドの、堂々たる「今」を100%アピールするステージだった。
01.The Novemberist
02.Melodic Storm
03.TRAVELING GARGOYLE
04.REMINDER
05.Dead Head Beat
06.PLAY THE STAR GUITAR
07.The Nowarist
08.DISCOGRAPHY
09.KILLER TUNE
  [Natural Born Killer Tune Mix]
10.Farewell Dear Deadman
11.MAGIC WORDS

THE YOUNG PUNX!07.16[sun] 15:55〜16:25 | 07.17[mon] 15:55〜16:25


2日間の出演アーティストの中で最も「観るまで何者だかわかんなかった」ユニットであり、同時に「でも観たらえらい楽しかった!」というロック・フェス・マジックを起こしていたユニットでもある彼ら。「DJと書いて『何でもあり』と読む」UK発バーストDJ×2=ザ・ヤング・パンクス! 「DJ」というより「観てる人を盛り上げるためのダンス・ネタをいかにプロデュースするか」というハンターのような貪欲な視線でアリーナを煽る煽る! のっけから“Wake up, Make up, Bring it up, Shake up”の中に一瞬“Loop and Loop”(インダストリアル・ソルトによる“ループ&ループ”のカヴァー)を織り交ぜ、会場の視線を根こそぎ持っていく。看護婦のコスプレをした女性サポートヴォーカル=ティファニーがくねくねとDJステージを歩き回り、ハウスやらドラムンベースやら一体になったビートがずしんずしんと迫ってきて、そこにサポート・ギタリストのメタル寸前の凄腕ギター・ソロが追い討ちをかける。こんな音楽、観たことない。と会場のほとんどの人が思ったに違いない。しかし、それらの反則技のすべてが「快感」の一点を目指して収束されていくのはさすが。レディオヘッドからファットボーイ・スリムまでが注目する、まさにグローバルな飛び道具。観ていて笑いが止まらない。「可笑しくて」でななく、楽しくて。“We Roll”の後、一旦ステージ裏に引っ込んだDJ=ハルはなんとスーパーマンの格好で再登場。ティファニーも真っ赤なホット・パンツ姿。曲はもちろん“Superman’s Brother”。最高だ。彼らは2日間ともびったり同じセットリスト。おそらく会心のセットで臨んだ、会心のアクトだったんだろう。アリーナ全体を巻き込んだステージ上の熱気がそれを感じさせた。
01.Big Ben(intro)
02.Wake up,Make up,
   Bring it up, Shake up
03.Young and Beautiful
04.It doesn't Stop
05.You've got to
06.We roll
07.Superman's Brother
08.Understand
09.Rockll!

ELLEGARDEN07.17[mon] 16:40〜17:20


1日目の横浜アリーナ、5アクト目を目の前にして会場には異様なまでの熱気が満ち始め、1Fフロアでは今回初の入場規制が……そう、昨年に引き続いてのアリーナ参戦、エルレガーデン! ストレイテナーとともに、アジカンと共闘関係を築いてきた彼ら。この1年ででっかくなったサウンドのスケールをいきなり見せつける、1曲目“Space Sonic”の最っ高に気持ちいい爆音! 待ち受けていたお客さんは歓喜の大ジャンプ! アリーナ大揺れ! “BBQ Riot Song”“Supernova”まで一気に畳み掛ける……細美、笑顔。演奏中の、ロック宿っちゃったみたいな鬼気迫る表情とは一転、MCになるとすげえ笑顔。「すげえ楽しい! 最後までよろしく!」。そして“虹”“Missing”で再び大揺れ&大合唱。光速で駆け巡る衝動そのものだったエルレのサウンドが、今や逞しさすら手に入れてアリーナをぐいぐいと未体験の快感領域へ持っていこうとしている。「今レコーディング中なんだけど、その合間にこのフェスに出演できて本当によかった」というMCの合間にも「楽しい!」を連発する細美。そして、“Surfrider Association”“Marry Me”の後、あれ? 聴いたことないイントロが、と思ったらそれもそのはず、ごく当たり前のように披露される新曲“Salamander”! とはいえ、一度聴いたらさっきの「あれ?」が嘘のように心臓直撃の、まさにど真ん中のアンセム! 最後、「あのさ、次の曲を、去年はちゃんと歌えなかったんだ。だから、今年はしっかり歌って締めたいと思います」というMCに導かれての曲は……そう、もちろん“Make A Wish”! イントロの時点で悲鳴のような大歓声がアリーナの天井を突き破らんばかりに上がる。そしてバンド/観客一体となって大合唱! 完全燃焼。最高。これこそエルレガーデンだ。
01.Space Sonic
02.BBQ Riot Song
03.Supernova
04.虹
05.Missing
06.Surfrider Association
07.Marry Me
08.Salamander
09.ジターバグ
10.Red Hot
11.Make A Wish

BEAT CRUSADERS07.17[mon] 16:40〜17:20


きました。「日本のロック界が誇る至上の飛び道具」または「アウェイと書いてホームと読むバンド」「というかどこでもホームに変えるバンド」、平均年齢33歳の燃えるお兄さんパワー・ポップ5人衆。その名はビート・クルセイダース! 他のフェスに比べても若年層が多いと思われる『NANO-MUGEN』でも「みなさま、おまん●たせいたしマシータ!」の挨拶は相変わらずです。“ISOLATION”“JAPANESE GIRL”とライヴ定番ナンバーで一気にアゲ倒します。「今日は呼んでくれてありがとう! でもおま●コールはやっちゃうよ(笑)」とVo・ヒダカトオル。「おま●コール」の前には主催者に仁義を切る。これも大人のマナー? というわけで、改めてまいりましょう。はい、おーま……失礼。ヒダカ「はい、次は女の子だけ!」カトウ「次はブスだけ!」ヒダカ「お前、それは失礼だろ!」。そしてカトウタロウを珠玉のビンタが襲います。「ビート・クルセイダース好きな奥様に捧げます」というMCに続いては“ANOTHER TIME/ANOTHER STORY”。さすが30代後半紳士、奥様方への気配りも忘れてません。“LOVE POTION #9”に続いては、ビークルを一気にお茶の間に送り出した出世魚ナンバー“HIT IN THE USA”! 底抜けポップ空間の向こう側から眩しいくらいのロックを引きずり出すバンド=ビート・クルセイダースの面目躍如! “TONIGHT, TONIGHT, TONIGHT”っつってもジェネシスの曲じゃありません。『BLEACH』のオープニングのピカピカの未発売新曲ですよ。最後2曲は「愛しい人よ、殺してやる」と怒濤のポップに1グラムの毒薬を流し込むような“LOVE DISCHORD”、そして“DAY AFTER DAY”でビークル大団円!
01.ISOLATIONS
02.JAPANESE GIRL
03.FEEL
04.ANOTHER TIME/ANOTHER STORY
05.LOVE POTION #9
06.HIT IN THE USA
07.TONIGHT,TONIGHT,TONIGHT
08.BANG!BANG!
09.SOLITAIRE
10.LOVE DISCHORD
11.DAY AFTER DAY

DREAM STATE07.16[sun] 17:35〜18:05


1日目のエルレガーデン終了後の熱気さめやらぬ中、ステージ向かって左側のアコースティック・ステージにスタンバイされたグランドピアノ。そして、その前に現われた1人の男。ドリーム・ステイトのヴォーカル=ニックだ。ジミー・イート・ワールドを生んだアリゾナから飛び出した、新世代ピアノ・エモ精鋭バンドのキーパーソンである彼の、ピアノ弾き語りスタイルでの演奏が始まった。アルバム『Something To Believe In』から6曲、クールなのにぎりぎりと切迫した空気を持った楽曲を、ピアノ1台できっちり表現してみせるニックの力量に改めて感心する。ここまで5バンドの熱演が続いたアリーナの清涼剤として、心地好いそよ風のようなサウンドに浸ろうか……と思っていた方は、バンド・スタイルさながらのアグレッシヴなプレイにさぞかし驚いたことだろう。“Don’t Walk”“Something To Believe In”“Friend”……ステージ両脇の大画面に映し出されるニックの真摯な表情。淡いブルーを基本としたシンプルな照明に浮かび上がるニックとピアノ。思わせぶりなステージ上のオブジェと相俟って、その姿は動く彫像とでもいうような存在感を持っていた。まだまだドリーム・ステイトというバンドを知らない人が多かったはずのアリーナで大健闘の充実アクト。終盤、「ノミニ、イコウヨ!」というニックのMCに、どよめきともつかない笑いが巻き起こったが、あれはニックなりの充実感と開放感を表したひと言だったんだろう、と思う。ことにする。そして、ラストの“Change”では弾き語りスタイルながら爽快な疾走感まで演出してみせたニック。30分があっという間に過ぎてしまった。
01.Don't Walk
02.Something to believe In
03.Friend
04.No Vacancy
05.Show me
06.Change

WAKING ASHLAND07.17[mon] 17:35〜18:05


2日目も半ばを過ぎたアコースティック・タイム、ステージに現われたのは、カリフォルニアが生んだエモい新星=ウェイキング・アッシュランド! 当初は4人組だったものの、昨年ベース&ドラムが脱退、現在はサポートを入れてライヴを行っている彼ら。今回はコアメンバー2人=ジョナサン(Vo&Piano)、ライアン(G)での来日。澄んだ滝のような清冽なアンサンブルを聴かせるバンド・セットでの演奏とは異なり、ピアノ&アコギのシンプルなアレンジによるさざ波のような静謐な調べがアリーナに染み渡っていく。確かに彼らの曲は「ポップ」ではあるものの、ここ数年のエモ新人の中でも抜群にストイックで端正なつくりの楽曲が多いのだが、それがアコースティック・セットになるとよりいっそう際立って見える。以前インタヴューで「音楽を通して究極的に追い求めているものは?」とジョナサンに訊いた時「うーん……TRUE LOVE」とこっちの顔を真っ向から見つめて答えていたのを思い出した。音楽がそれだけストイックな分、ジョナサン「ヨコハマー!」「アイシテマース!」と思う存分愛想を振り撒いていて、そのポップ感とのバランスがウェイキング・アッシュランドの音を生んでいるのかもしれない、と思った。“October Skies”“Tortoise And The Hare”に続き、ワルツのリズムで物憂げなメロディーを聴かせる“Shades Of Grey”でその静謐っぷりに磨きがかかる。最後は何と言っても彼らの代表曲中の代表曲“I Am For You”! この曲のアコースティックVer.は最新EP“テレスコープス”にも収録されているが、実際に横浜アリーナという場所で目の当たりにすると、ハコのスケールにまったく引けをとらない曲の強さとクオリティに驚く。静かに熱い30分のアクトだった。
01.October Skies
02.Tortoise and the Hare
03.Shades Of Grey
04.Edinger
05.Let Go
06.Julian
07.I Am for you

THE RENTALS07.16[sun] 18:20〜19:20 | 07.17[mon] 18:20〜19:20



今回の『NANO-MUGEN』に関して、洋楽ファンが「え、あの人ほんとに来るの!?」と爆笑苦笑微笑含めいろんな笑顔をもって待ち受けていたのが、元ウィーザーのマット・シャープ率いるザ・レンタルズ。去年のアッシュ/ドッグス・ダイ・イン・ホット・カーズetcといったラインナップとはがらりと変わった色合いを与えつつ、ゴッチの積年のロック・ラヴァーとしての情熱(怨念?)も感じさせる絶妙の人選だった。そして、それはまさにこの2日間のフェスの流れに不思議とがっちりハマって見えた。生弦の響きとアナログ・シンセの艶かしい絡み合いからスタート、メンバーが1人1人加わっていき、最後に「8時20分」の泣き顔眉毛を力いっぱいの笑顔に変えながら、ヤング・パンクス顔負けのテンションでステージ狭しと走り回るマットが……という流れは、2日間観ていたはずなのに2日間とも妙に楽しかった。何と言うか、いちいち全力なのだ。「ヨッコハッマー!!!!」というMC(というか絶叫)にしても、遊びにきた人に対して「喉乾いてない? お腹空いてない? ゲームでもする?」と常に気遣うご主人のようなサービス精神満点な感じが、音楽の隅々にまで漲っている。重なり合うムーグ・シンセサイザーの温かな音色、重なり合う七色のコーラス、そこに重なり合うアリーナの熱気。視界がパキーンと冴え渡ったような、それでいてどこか微睡みの中にいるような、心地好いドリーミーなポップ感。2日間ほぼ同じセットで、ウィーザーの“I Just Threw Out The Love Of My Dreams”、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのカヴァー曲“Walk On The Wild Side”なども披露しつつ、コンピ盤に収録した“Getting By”は温存。ということは……? という期待を持たせつつ、トリのアジカンにバトンタッチ。至福の60分間だった。

[07.16]
01.2046
02.Move On
03.We Have a Technical
04.Please Let That Be You
05.The Love I'm Searching For
06.Sweetness and Tenderness
07.Keep Sleeping
08.The Love Of My Dreams
09.Wating
10.She Says It's Alright
11.Walk On The wild Side
12.Friends Of P

[07.17]
01.2046
02.Move On
03.We Have a Technical
04.Please Let That Be You
05.Say Goodbye Forever
06.Sweetness and Tenderness
07.Keep Sleeping
08.The Love Of My Dreams
09.Wating
10.She Says It's Alright
11.Walk On The wild Side
12.Friends Of P

ASIAN KUNG-FU GENERATION07.16[sun] 19:40〜20:40 | 07.17[mon] 19:40〜20:40





「なんでバンドなのにフェスやってんのかっつったら……音楽が好きだからなんですよ」(1日目)。「すごくいいフェスティバルに成長してる気がする。去年は初めて横浜アリーナ使ったんで、いろいろトラブルあったんすけど、今年は……いいんじゃないっっすか?」(2日目)。以上のゴッチのMCに、「フェスのオーガナイザーとしてのアジカン」の想いが集約されていたと思う。ロックのダイナミズムに憧れ、ロックを通して1人1人と手を携えていく……そんな想いを丁寧に形にしてきたアジカンの、一見途方もない、だけど切実な情熱。その象徴としての『NANO-MUGEN FES.』。単に売れたいだけ、勝ちたいだけのバンドには、到底アジカンの真似はできっこない。それが、「ミュージシャンとしてのアジカン」の堂々たるアクトにもフィードバックされていた。
1日目のセットは、ついこの間終わったばかりの『count 4 my 8 beat』ツアー終盤戦に近い選曲。こんがらがった感情を因数分解するような複雑なリズムの“暗号のワルツ”に始まり“ワールドアパート”“ブラックアウト”“ロードムービー”と『ファンクラブ』期の曲で攻める。アンサンブルの1つ1つががっしりと決まっていく。最高だ。“十二進法の夕景”がこの日は終盤のテンションをほっくり受け止めるナンバーとして機能している。アンコールではなんとレンタルズが再びステージに全員集合! アジカン&レンタルズ編成で満を持して“Getting By”! 最後は“タイトロープ”で横浜アリーナに集まった人の心に消えないヴィブラートを残しながら、終了。2日目は曲順を大幅に変えてきたアジカン。何と言っても大歓声が起こったのは本編終盤で久しぶりに聴けたデビュー曲“未来の破片”! あれから3年。驚くほど状況は大きくなったものの、バンドの姿勢は依然として不器用なまでに誠実だ。集まった誰もが、フェスの開放感と一緒にそれを体感していたに違いない。アンコールではこの日もレンタルズと共演&大歓声! 最後は“アンダースタンド”、そしてこの日は最後に持ってきた“十二進法の夕景”。2日目の最後に聴いたこの曲は、これから先アリーナ・ツアーという大きなトライアルへ向かう自分たちの新たな決意表明のようにも見えた。まだまだ止まらない……それを確信させる充実のアクトを、2日間にわたって見せてくれたヘッドライナー=アジカンだった。

[07.16]
01.暗号のワルツ
02.ワールドアパート
03.ブラックアウト
04.ロードムービー
05.桜草
06.ブルートレイン
07.Re:Re:
08.センスレス
09.君という花
10.十二進法の夕景
11.サイレン
12.月光
----アンコール----
01.Getting By w/The Rentals
02.ループ&ループ
03.リライト
04.タイトロープ


[07.17]
01.センスレス
02.Re:Re:
03.リライト
04.ブルートレイン
05.ブラックアウト
06.ロードムービー
07.桜草
08.君という花
09.ワールドアパート
10.未来の破片
11.サイレン
12.月光
----アンコール----
01.Getting By w/The Rentals
02.ループ&ループ
03.アンダースタンド
04.十二進法の夕景