【バンドにジェラシー】

エッタのせい、とだけ言うつもりはないけれど、今回のアルバムにはこの2年間がもたらした心境の変化が様々な形で現れている。
たとえばレコーディングのスタイル。
これまではプロデューサーであり、アレンジも担当する大切な音楽パートナー、ラーシュ・ハラピがひとりで多くのパートを演奏し、録音を重ねていくことが多かった。それが今回はまるでバンド合宿。

「スウェーデンのトローサ群島にある島で2週間、バンドのメンバー全員でいっしょに生活しながらレコーディングしたの。真夏の8月で、天気もすばらしくて、合間に海で泳いだりして・・。それはね、なんだか徒党を組んでみたい気分だったから。私、ずっとバンドの一メンバーとしてやっていくことにジェラシーを感じていたの。だって、ひとりだけで頑張らなくていいでしょ。だから今回はそれをやってみたかった。ひとつの部屋で、同じ空気を吸って、昼も夜もずっといっしょに過ごして、そんな風にやってみたの」

その雰囲気は表題曲、「TIME TO KILL」のビデオ・クリップによくあらわれている。スタジオの片隅に座るソフィー、それを取り囲むようにして(といって、ヴォーカルを囲む熱きセッションといった風情がまったくないのがソフィーらしいのだけど)バンドのメンバーたちが演奏している。いつものようにポーカー・フェイスで、でも少しだけ楽しそうにしているソフィーがそこにいる。

そんなスタジオ風景にカット・バックされるひとりの男性のアップが映し出される。日本的に言えば美男ではないけれど、とても印象的な表情の男性。

「彼はシャンティ・ローニというスウェーデンの俳優、最近、映画や演劇でよく見かけるようになっていて、気になる存在だったの。その彼の名前を候補者の中に見つけたときはびっくりしたわ」

ポーカー・フェイスで歌うソフィーの気持ちを代弁するように、シャンティが様々な感情を演じて見せてくれている。