・・・・B−リアル・・・

【SKULL & BONESはプロレスから生まれた??】

Q:サイプレス・ヒルにはこれまでにもロック的な感覚があったし、ロック・オーディエンスにも受け入れられていたわけですが、今回の大胆なロック寄りの方向性の導入には、周囲の状況なんかも関係していたりはしますか?

B-リアル:周囲の状況はそれほど関係していない。たまたまこうなったって、そういう感じかな。直接的なきっかけというのは、プロレスのWCWのためにやったサウンドトラック。あれ用の曲を、ラッパーのデファーライと一緒にやってみないかと依頼されたことに由来している。俺はプロレスを凄くよく見ているんだ。WCWにWWF、ECW、オルタメイト・ファイト(究極の対決)っていうようなやつ。見てて面白いだろう? で気づいたのが、プロレスラーって登場する時のテーマにヒップホップとロックを融合した音楽を使ってるやつが、いっぱいいるってこと。だからその依頼を受けた時には、俺たちもプロレス的な音楽、ヒップホップにロックをくっ付けたのをやるんだって思ったわけさ。で、そういう作業に取り掛かったわけだが、セン・ドッグっていうのはSX10というバンドですでにそっち方面の経験は積んでいた。もちろん彼はそのアイディアに凄く乗り気だったし、1曲やってみて、けっこう良かったから、じゃ、もっとやってみようか、どうなるか様子を見てみようぜって、そんな感じで進んでいった。

Q:プロレスがきっかけだったんですね。

B:そうそう。あ、でも、それまでにも俺たちは'93年には『ジャッジメント・ナイト』をやったから、まったく初めてってわけではない。経験はあった。セン・ドッグはバイオハザードとやったことがあったし、俺もレヴェリーってバンドや、2〜3他の人間とやってみたことがあった。つまり経験はあったが、サイプレス・ヒルとしてまとまった形にしたのはこれが初めて。あの1曲をやってからは、もっとこういうのやってみようぜ!って凄くエキサイトした。セン・ドッグはサイド・プロジェクトのSX10での経験をいろいろと持ち込んできてくれたし──SX10はラップ・メタルとファンクをいっしょくたにしたようなバンドさ──そのヴァイブを持ち込んでくれた。サイプレスに合うような形に変えて。ヘヴィだが、サイプレスらしさは失われていない。初めて聴いた時に「わあ、これってサイプレスだ!」とは思っても、「え、これって誰なんだい?」とは思わないはずさ。俺たちだってことがすぐに判る。ただそこにはまったく新しいヴァイブが存在しているんだ。

Q:ライヴ・コンサートにおいては、どんな形態でパフォーマンスをしますか?ミュージシャンを揃えたりはしますか?

B:ああ、すでにバンドも出来ている。ボボがドラムス、ダウンセットのロヘリオ・ロザノがリード・ギター、それに新入りのトミー──まだ新しすぎて苗字まで覚えてないや──がベースをプレイする。ヒップホップをやると同時にハードコア・ロックもやる。

Q:2部構成のステージになるのですか?

B:いや、混ぜこぜの状態で。いっしょくたにプレイする。物凄くクレイジーなショウになるぜ。かなりビースティ・ボーイズのショウなんかに近いんじゃないかな。彼らは古い曲に関してはオーソドックスにラップして、新しい曲に関しては生演奏をやったりしている。俺たちもそういうのに近い形態でやるが、もちろん俺たち独自のスタイルでさ。

Q:あなた自身も、何か楽器をプレイしますか?

B:パーカッションならちょっとできるけど、ラップをやってる時には同時にパーカッションを叩くわけにはいかないから、けっこう限定されている。

Q:ところで、フィッシュやデイヴ・マシューズ・バンドのようにグレイトフル・デッド的な在り方を受け継いでいるヒッピー系のロック・バンドのことは、どんなふうに感じていますか?

B:おもしろいのは──音楽スタイルはまったく違っている。だが、類似性を感じるのに、音楽スタイルがまったく同じである必要は、まるでないことなんだ。凄くダークで密室的な雰囲気。それってサイプレス・ヒルの音楽にも通じている部分さ。彼らの音楽はそんなに聴き込んだことはないが、デイヴ・マシューズのビデオとかを観ていると、彼らがやろうとしているクレイジーな雰囲気からは感じるものがある。だが、そういう意味では、音楽的にはまったく違っているのに類似性をもっと感じさせるバンドは、俺に言わせればブラック・サバスとレッド・ツェッペリンの2バンドなんだ。彼らにはダークな部分がある。全曲がそうだというわけじゃないが、流れているヴァイブにはそういうところがあるし、ダークな曲もある。

Q:ヒッピー・ムーヴメントに関しては、関心がありますか?

B:うんうん。そいういう観点から言えばデ・ラ・ソウルが一番さ。俺たちはそれほどヒッピーなバンドではないかもしれないが、サイケディリックなヴァイブを持っているという点では、彼らと共通している。サイプレス・ヒルも間違いなくその延長線上にある。ただラヴ&ピースっていうのとは違っているかも。だって俺たちはヒッピーだったことはないし、そういう音楽がすごく好きだったとしても、そういう音楽の時代に生きてきたわけではない。ヒッピーの時代にはケアフリーだった(注意しなくても良かった)けど、今の俺たちの時代にはケアフルで(注意して)なきゃならない。完璧なヒッピーにはなりきれないんだ。とはいえ、ヒッピーの時代の要素であるサイケデリックなヴァイブを捉えることは、俺たちにだってできるさ。だから俺たちは、みんなからよくヒッピー呼ばわりされるんだと思うな。サイケデリックなイメージを彷彿とさせるから。視覚的にはヒッピーみたいなイメージを用いたことは一度もないし、なろうとも思ったことはない。常にハードコアな服装だし、ギャングスタのスタイルさ。

Q:デ・ラ・ソウルの他には、どんなバンドがその延長線上にありますか?

B:PMドーン。だが、デ・ラ・ソウルはダントツに凄く、凄くいいバンドだった。PMドーンのことは、あんまり好きじゃない。ほかにもデ・ラ・ソウルを真似ようとしたグループはいっぱいいたし、同じことをやってみようとしているやつらもいっぱいいた。ディガブル・プラネッツはヒッピーではなかったが、ジャズっぽくて、クールやキャッツをやろうとしていた。みんなが何かを捜し求めていたが、結局は自分自身であることさ。好きなものがあったとしても、自己流に解釈すること。確かに昔のヴァイブを取り戻そうとしてるやつらは多いし、ヒッピー時代に戻ろうとしてるやつらも多い。俺たちのことも、今のようにタフではなかった時代のヒッピー時代に戻ろうとしていると言われるかもしれない。確かに今の時代には、昔しに比べて厄介なことがいっぱいあるからね。政治面での問題を除けばの話だが。それに関しては、今の俺たちよりずっと大変だったことだろう。でも、ストリートのメンタリティ、ドラッグ・ディーラー、ストリート・ギャングとの関わりあいを考えるにつけ、'90年代は'60年代よりも困難な時代なんだと思うな。'60年代にはベトナム戦争があり、デモがあり、政治面での問題があり、人々は思想と戦っていた。'90年代には人々はみな、自分自身と戦っている。凄く自己中心的ではあるな。ま、比較することなんてできないんだが。

Q:サイプレスはどういったオーディエンスを対象にしていると考えていますか?

B:少しずついろんなタイプだね。幼いキッズ、幼い頃からの俺たちのファンで今では俺たちくらいの歳になったファン、もっと歳上のやつらも少しはいる。俺たちのコンサートでは、いろんなタイプのファンたちがいるのを目にしてきた。ファンの中核はおそらく……16歳くらいから21歳かな。それに21歳から40歳って感じ。かなり歳上のファンたちもいてくれて、俺たちのことを好きだったり、俺たちの主張を支持してくれてたりするのには驚くよ。俺たちには、いろんな理由でファンがついてくれている。異なった年齢に、異なった文化。いいことさ。

Q:ファンに共通しているのは?

B:各々の集団が少しずつ違っているんだ。彼らには異なる理由があって、サイプレスのことが好きなんだ。あんまり考えたことがないからよく判らないが、ただひとつ言えるのは、サイプレスの音楽を好きになるのに、どこに住んでいようが、どれだけ金をもっていようがいまいが、関係ないってこと。みんなが、何らかの形で共感できるのがサイプレスなんだ。広範囲を網羅。みんなに向かって発信している。

Q:今後のサイプレス・ヒルは、どうい方向へと向かっていくのですか?

B:どうだろう? 音楽の導かれるままに従うって感じかな。頭の中で考えることはできても、音楽がそれに伴わないことにはうまくはいなかないものだから。それ次第ってところかな。

Skull and Bones
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