世界中で絶賛されている近未来SFコミックス「攻殻機動隊」のプレイステーション・ゲームのSound [Techno] Trax。
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コミック/アニメ・ファンに絶大な人気を誇る士郎正宗氏の「攻殻機動隊〜GHOST IN THE SHELL〜」(講談社週刊ヤングマガジン)がこの夏、ソニー・コンピューター・エンターテイメントより3Dアクション・シューティング・ゲームとしてPlayStationから誕生する。サウンド・トラックは石野卓球のディレクションにより、通常では考えられない世界各国のトップ・アーティストがレーベルの壁を越え、「コウカク」イメージをテクノナイズした新曲/書き下ろし楽曲を提供。中でも現在のテクノ・ムーブメントを創ったとされるデトロイト・テクノの神デリック・メイの楽曲は7年ぶりの新曲となり、全世界の音楽ファンが待ち望んだ傑作がここに誕生した。ゲームのサウンド・トラックとして、ベスト・オブ・コンピレーションとして、この夏最大の話題になることに間違いない。
現在でこそ、ケン・イシイ「エクストラ」のプロモーション・ヴィデオや、石野卓 球の「メモリーズ」音楽担当、そして「ワイプアウト」の成功などによって、アニメ やゲームと強い親和性を持つテクノ、というイメージが浸透しつつあるが、以前はま ったくそうではなかった。
いや、もう少し正確に言うなら、世界中のテクノ・ミュージシャンの間には、以前 からかなり数多くのアニメ/ゲーム・ファンがいた。なにしろ、特にヨーロッパでは 、アニメやゲームは、日本からやってきた新しいストリート・カルチャーととらわれ ている部分が大きく、例えば海外のクラブやパーティーのフライヤー(告知チラシ) には、意味不明の漢字と並んで、日本のマンガやアニメなどから勝手にサンプリング したイラストやアイコンが数多く使われていたのだ。しかし、彼らがいくらアピール しても、テクノが(特にここ日本では)一般層よりさらにディープで特殊なそういっ た世界で認知されることはなかったのだ。ところが、そういった世界の中でも新しい 世代の台頭によって、外の新しい動きと積極的に交流を持とうというヒトたちが現れ た。そのような流れの中で、森本晃司、大友克洋、渡辺信一郎、そして今回の士郎正宗や北久保弘之といったひとたちが、テクノ側からの静かなラヴ・コールに応えてき たのだ。
今回のプレイステーション版「攻殻機動隊」に参加したミュージシャンたちは、ほ とんどが「攻殻」のことを知っていて、国、レーベルを超えた通常ではあり得ない企 画であるにもかかわらず、まったくスムースに依頼が進んだらしい。クロード・ヤン グやマイク・ヴァン・ダイクなどは、彼らの付けた曲名を見ただけでもハードコアな ファンなのがよくわかる。
SF的なイメージがこういったエレクトロニックな音楽と結びついてしまうと、いか にもといった予定調和を生む危険性も無いわけではない。おそらくその辺もあって、 映画版の「攻殻」では、あえて古い大和言葉のイメージをモチーフにした曲を使った りしたのだろう。しかし、ことゲームという文脈に限って考えれば、同じ音楽を何十 回も繰り返し聴かなければならないという事実や、その繰り返しの中にも、さらにス テージをクリアして、どんどん次に進む意欲を駆り立てるような要素を持たなければ ならないということを考えると、このような繰り返し主体の音楽は素晴らしい整合性 を見せる。なにしろ、音楽としてのもともとの成り立ちそのものが、繰り返しとそれ に合わせたダンスを通してトランス状態へと導く、というテクノは、同様のトランス 効果を生むゲームと似ている。
実は、このサントラのディレクションを担当している石野卓球は、あまりアニメや ゲームへの興味を公にはしていないが、彼にしても、発言や原稿の端々に「ガンダム 」や昔の特撮モノへの偏愛を露にしている。ちょうど「攻殻」のビデオを観ていると きに依頼の電話がかかってきたというデリック・メイや、趣味はゲームだけだと言い 切るデイヴ・エンジェルをはじめ、単に音楽的な理由だけで選ばれたとは思えない人 選は、そこはかとない卓球の愛を感じるではないか。
このサントラに参加したアーティストの中で、おそらく最もこの仕事を喜んだマイ ク・ヴァン・ダイク(ハードコアなアニメ&ゲーム・オタク)は、東京ゲームショウ でのほんの15分ほどのライヴのために来日し、あまり音が出せず、事前の告知もない という困難な環境でステージを演ったのだが、それでもその熱意はその場にいあわせ た百人くらいの「攻殻」ファンには十分すぎるほど伝わったと感じた。
特殊な閉鎖性を持つように外側にいるヒトたちには見えてしまいがちなアニメ/ゲ ーム/テクノという文化は、どれも不思議と日本人好きのするものだった。そして、 それらは、多くのひとの思惑を超えて、世界的に日々ファンを獲得し続けている。こ のような理想的なカタチでこれらが融合することは今後もあまりないのかもしれない が、まだまだ未成熟で、多くの可能性を秘めていると思われるそれぞれがどういった 発展をしていくのかは、誰しもが興味のあるところではないだろうか。
TEXT : KEN=GO→