FLYERあまり知られてない様だが、ゲームと士郎正宗の関係は今回が最初ではない。それ どころか、これまでプレステだけを考えても『ホーンドアウル』といったガン・シュ ーティングや『すらいムしよう!(スライムが主人公の異色作)』といった育成シュ ミレーション等、ジャンルの違う幾つかのゲーム・ソフトでキャラクター・デザイナ ーとして活躍している。そうそう。『アップルシード』のスーファミ・ソフトなんて のも確かあった筈だ。

「ゲームでは、僕は単なるお絵描きツールに過ぎませんので当然の事ですが、楽です 。ゲームとしての本質は、プログラマー(映画で言えば演出+助監督といったところ ?)の方達が負うのでその分、僕の出番はないワケです(『すらいムしよう!』発売 時のインタビューより)」

ただ今回の『攻殼機動隊』は、これまでの彼が携わったソフト群とは、そのスタン スが大きく違っている。これまでゲームの世界では、上記の発言の様にキャラクター ・デザイナーとして裏方に徹する事が多かった彼が、なんと今回は、企画の段階から 多くのアイデアを出しているという。そう。そして、今回のゲーム制作を担当したエ グザクトを指名したのも、もともと『ジャンピングフラッシュ』のファンだった、彼 自身からのアイデアだと聴いた。

エグザクト…。彼らの名が、ゲーム業界で話題になるキッカケとなったソフトは、 なんといっても『ジャンピングフラッシュ』だろう。最近、『がんばれ森川君2号』 を完成させたばかりのムームーが、キャラクター・デザインを担当したこのゲームは 、現在までに2も発売されており、プレステ発売初期の3Dシーティングのヒット・ シリーズである。そして、このソフトが、ヒットした最大の理由は、なんといっても ポリゴンを使った3D空間の表現にあり、当時のキャッチ・コピーに使われた「元祖 とびゲー」という名のとおり、3D空間を自由に飛ぶ事や落ちる事の楽しさを感じさ せてくれる新しい方法を提示した作品だった。そう。あの『ジャンピングフラッシュ 』を作ったチームが、『攻殼機動隊』をゲームの世界で再現してくれたのである。『 ジャンピングフラッシュ』のロビット(うさぎロボの主人公)が、フチコマになる。 そう考えただけでもゾクゾクする様な組合せがここに実現したのだ。

そして、今回のゲームでの主人公は、やはりなんといってもフチコマである。原作 のファンには人気が高かったにも関わらず、映画には登場する事の出来なかったAI 搭載のタンク・フチコマ。彼らは、もともと全体的にハードなトーンの原作にカワイ イ言動とそのルックスで、息抜き的な笑いを提供していた。今回のゲーム化に際して 、カワイイ絵柄も人気だった『ジャンピングフラッシュ』のチームを指名したという 事から考えても、彼の頭にゲームの主人公にするならフチコマと最初から決まってい たのではないだろうか。そして、これまでゲームの世界では裏方に徹していた彼が 、今回の作品で企画から参加した理由の一つに3Dのフチコマで遊びたいというアイ デアがあった筈だ。

ところでこのゲーム化には、疑問もある。一般的に時期だけを考えて見ると今回の ゲーム化は、かなり無謀な企画だったとも言えるのではないだろうか。確かに人気の ある作品ではあったが、原作のマンガが描かれたのは、89年。映画にしても公開され たのが95年である。話題性によるセールスだけをとって考えてみると、この原作をゲ ーム化するタイミングとしては(企画や制作の時間を考えても)随分と遅すぎる。こ の様に映画でヒットした作品をゲームにするなら、公開のほぼ同時か、少なくとも公 開後、数ケ月の間に発売されなくては話題になりにくい。まぁ、この様にして作られ たあくまでもゲームの出来に左右されない時期だけで売れてしまうキャラクター・グ ッズの一つとしてのゲームは、そのほとんどが、短命であり出来の悪いモノが多く、 そのイメージは決してよくないのも事実。だから、今回に関して言えば、この遅すぎ るタイミングでの発売は、逆に再び原作であるマンガや映画の人気を高める効果さえ もあったのではないだろうか。ただし、この様なパターンで成功する例は稀である。

この様にゲームと士郎の関係を辿ってみるとこの『攻殼機動隊』のゲームには、彼 のこだわりが強く感じられる。そして、今後、彼がどうゲーム業界と関わっていくに しても最初の代表作となるのは、この『攻殼機動隊』である。

TEXT : DAI SATO


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