アデル/Adele
アデル(本名:アデル・ローリー・ブルー・アドキンス、1988年5月5日生)は21世紀のメインストリーム・ポップ・シーンを代表するイギリス出身の世界的女性シンガーソングライター。幼少時に、エタ・ジェイムスやエラ・フィッツジェラルドらの偉大なR&B/ジャズ・シンガー達の影響を受けたアデルは、2008年のデビュー・アルバム『19』でブレイク以来、自らの人生・恋愛経験を綴った楽曲を、ある時は力強く、またある時は繊細なメゾソプラノ・ボイスによる表現力豊かなブルーアイド・ソウル・スタイルの歌唱で世界中を魅了し続けている。
ロンドン生まれのアデルは、幼少の頃母子家庭で育ったが小さい頃から歌に興味を持ち、ティーンエージャーの頃は近くの公園でギターを弾きながら友人に歌を聞かせる少女だった。2006年にエイミー・ワインハウス他数々のアーティスト達を輩出していることで有名なロンドンのブリット・スクール・パフォーミング・アーツ学校を卒業後間もなく、Myspace.comに友人がポストした学校のプロジェクトのために録音したデモ音源がXLレコードのCEOリチャード・ラッセルの耳に止まり、その年にXLと契約。BBCTVの人気番組『Later…With Jools Holland』への出演時のパフォーマンスなどが評判を呼び、2008年にはブリット・アウォードの評論家が今後ブレイクを期待される新人に与えられるクリティックス・チョイス賞受賞で注目を集める。これを足がかりにリリースしたデビュー・アルバム『19』は全英ナンバーワンとなりその年のマーキュリー賞(イギリスでその年の最優秀アルバムに与えられる賞)にもノミネートされ、シングル「Chasing Pavement」は全英2位に昇る大ヒットとなり、アデルは一躍注目の新人シンガーソングライターとしての地位を確立。またこの年、アデルは全米への配給のためにコロンビアと契約、全米をターゲットとした「An Evening With Adele」ツアーを決行した。2009年の第51回グラミー賞では主要4部門のうち、全米でも21位のヒットになった「Chasing Pavement」がレコード・オブ・ジ・イヤー、ソング・オブ・ジ・イヤーに、そしてアデル自身は最優秀新人部門にノミネートされ、見事最優秀新人賞を受賞。後のアメリカでの大きな成功のベースを築いた。
2011年、21歳になったアデルは私生活で別れた恋人との経験に題材を得て、全米ツアー中にバスの運転手に聞かされたアメリカ南部の音楽に啓発された、ファーストに比べるとやや陰を帯びたルーツ・ミュージック風の楽曲が満載されたアルバム『21』をリリース。伝説のプロデューサー、リック・ルービンとイギリスで数々のアーティストを手掛けたポール・エプワースをメイン・プロデューサー・チームに迎えたこのアルバムは、英米では半年に亘って1位を独走し両国での女性アーティストによる史上最長1位記録を更新した他、30カ国で1位を記録する大ヒットに。恋人との別れに対して決然として自分の尊厳を高らかに歌うアップテンポの「Rolling In The Deep」、そんな別れた恋人との経験を慈しむようなバラード「Someone Like You」、そして別れた恋人との愛憎相半ばする心境を情感たっぷりに歌う「Set The Fire To The Rain」と立て続けに英米をはじめ世界中でチャートの1位を飾る大ヒットを連発した。そして当然のごとく、『21』は米グラミー賞、英ブリット・アウォードでそれぞれ最優秀アルバム賞を獲得し、アデルのキャリアでピークとなる最高の商業的成功を収めると同時に音楽メディアからの高い評価も集めた、文字通り21世紀を代表するポップの名盤となった。
これ以上の成功が可能かと思われたアデルだったが、2015年にリリースしたサード・アルバム『25』は、前作のポール・エプワースに加え、90年代以降のポップ・シーンを代表するマックス・マーティン、ワンパブリックのライアン・テダー、ヴァンパイア・ウィークエンドでの仕事で有名なアリエル・レクトシェイド、2000年代以降の有数のポップ・サウンドメイカーであるグレッグ・カースティン、そしてオルタナ・ロック系のデンジャー・マウスなどなど、様々なプロデューサーを起用し、従来と異なるエレクトロ系のサウンドも導入して新境地を開いた作品。そして再び英米を含む32カ国でナンバーワンを記録したこのアルバムから出た大ヒット「Hello」は、従来のアデルの楽曲スタイルを踏襲する、過去に関係した人々に対するメッセージを切々と訴えるパワー・バラードだった。このアルバムで再び米グラミー賞、英ブリット・アウォードでの最優秀アルバム賞を受賞したアデルが、2017年第59回グラミー賞の受賞スピーチで「本当にこの賞を受賞すべきなのはビヨンセの『Lemonade』です」と涙ながらに語った様子を覚えているファンも多いだろう。ここまでの成功を勝ち得ながらあくまで同世代の卓越したアーティストへのリスペクトを失わないアデルのアーティストとしての素晴らしさを垣間見た一瞬だった。
2018年以降制作に取り組んでいた、2020年リリース予定がコロナ禍で延びていた4作目のアルバム『30』もついに2021年末に全世界同時リリースと共に全米6週間、全英5週間の1位を記録するなど大ヒット中。前作『25』リリースの直後、2012年に愛息アンジェロ君を授かったパートナーと結婚するも、一年と経たずに離婚してシングルマザーとなったアデルが、その悲しみと孤独感、後悔など自らの感情を露わに表現しながら、これからの自分とアンジェロ君の未来を模索するような楽曲でいっぱいのニューアルバムは各方面からの高い評価を得ている。アデルの救いと愛を求めてアルバムを作り続ける人生の旅はこれからも続くことだろう。
ディスコグラフィ(カッコ内は原盤レーベル、- 以降は英米のチャート実績)
1,アルバム
2008年
『19』(XL/Columbia) - US 4位(3xプラチナ)、UK 1位(1週、8xプラチナ)
2009年
『iTunes Live From SoHo』(EP) (XL) – US 105位
2011年
『21』(XL/Columbia)- US 1位(24週、14xプラチナ)、UK 1位(23週、17xプラチナ)
『iTunes Festival: London 2011』(EP) (XL) – US 50位、UK 74位
2015年
『25』(XL/Columbia)- US 1位(10週、11xプラチナ)、UK 1位(13週、12xプラチナ)
2,シングル
2007年
「Hometown Glory」- UK 19位(プラチナ)
2008年
「Chasing Pavements」- US 21位(プラチナ)、UK 2位(プラチナ)
「Cold Shoulder」- UK 18位
「Make You Feel My Love」- (USゴールド)、UK 4位(3xプラチナ)
2010年
「Rolling In The Deep」- US 1位(7週、8xプラチナ)、UK 2位(3xプラチナ)
2011年
「Someone Like You」- US 1位(5週、5xプラチナ)、UK 1位(5週、5xプラチナ)
「Set Fire To The Rain」- US 1位(2週、4xプラチナ)、UK 11位(2xプラチナ)
「Rumour Has It」- US 16位(2xプラチナ)、UK 85位(シルバー)
「Turning Tables」- US 63位(ゴールド)、UK 62位(ゴールド)
2012年
「Skyfall」- US 8位(プラチナ)、UK 2位(2xプラチナ)
「I Can’t Make You Love Me」- UK 37位
「One And Only」- UK 99位(シルバー)
2015年
「Hello」- US 1位(10週、7xプラチナ)、UK 1位(3週、4xプラチナ)
「Remedy」- US 87位(UKシルバー)
「Million Years Ago」- UK 64位
「All I Ask」- US 77位、UK 41位(ゴールド)
2016年
「When We Were Young」- US 14位(プラチナ)、UK 9位(2xプラチナ)
「Send My Love (To Your New Lover)」- US 8位(プラチナ)、UK 5位(2xプラチナ)
「Water Under The Bridge」- US 26位(ゴールド)、UK 39位(プラチナ)
* USでは、アルバム・シングル共にゴールド=50万枚、プラチナ=100万枚(2x=200万枚)の売上によりRIAA(アメリカレコード協会)が認定。UKでは、アルバムはゴールド=10万枚、プラチナ=30万枚、シングルはシルバー=20万枚、ゴールド=40万枚、プラチナ=60万枚の売上によりBPI(英国レコード産業協会)が認定。いずれも2021年8月現在。