ジェイド・アンダーソン

 1981年ロンドン生まれのジェイド・アンダーソン。ロック・グループ、イエスのリーダーであるジョン・アンダーソンの娘として、幼い頃から音楽に囲まれて育った彼女が、ソング・ライティングに興味を持つのはごく自然の流れだった。「パパからはロックンロール的な面を受け継いでいるんだけど、私はママがかけていたソウル・ミュージックの方がずっとホッとするの」と話すジェイド。だが、自分で作る音楽に関しては、「自分の心が正しいと思ったことを歌にするわ。私たちは理由があって色々な経験を与えられるのよ。私は、痛みにも喜びにもそれぞれに意味があると思うの。それを音楽というパッケージに詰めて、世の中に送り出すために自分が作られたんだって信じているの」と語る。



 ジェイドが「自分の音楽」と言うとき、それは文字通りの意味を持っている。16歳のとき、何千人もの競争相手の中から選ばれてガール・グループに参加したのだが「あっという間に飛び出してしまったわ。その当時無一文だったのにね!だって私には自然に思えなかったの」彼女は振り返る。「あれを辞めてから自信と作曲能力がぐっと増したし、自分のことをただのポップ・シンガーじゃなくてアーティストとして考えるようになったのよ」と本人が話すように、彼女は10代半ばにして「自分の音楽」を目指した。それと共に、ジェイドは優しく美しく誠実な独自のボーカルスタイルを開発していった。「私が書くようなタイプの歌詞は、ちゃんと言葉を理解してもらうためにシンプルで自然に歌わなくちゃならないのよ。ゴスペルだって歌い上げるバラードだって歌えるけど、それでは私じゃないもの」



 自分の能力を最大限に引き出すため、ジェイドは音楽パートナー(エッグなる名前で知られるアンダーグラウンドのソングライター兼プロデューサー)と組んで、デモ作りをスタート。ささやかにスタートして長く苦闘することになるだろうと覚悟していた。だから、メジャー・レーベルの争奪戦が勃発したときにいちばん驚いたのはジェイド自身だったらしい。「契約さえしてもらえたらって祈っていたっていうのにね!ソニーはものすごくたくさんの創作上の自由を与えてくれたわ」とジェイドは言う。彼女は有名プロデューサーを避け、エッグとともに彼のロンドンの地下スタジオで『Dive Deeper』を制作した。



 アルバムはフレッシュで楽しく、内側からあふれてくる輝きに満ち、現代的にもクラシックのようにも聞こえる。「ビートには今の時代ならではのものがあるけど、心の底から語っているなら、それは時を超えるのよ」とジェイドは言う。彼女は自分の歌詞が典型的なポップの新人たちのそれに比べるとはるかに詩心に満ちて知的だということには無頓着だ。「メロディはすごくキャッチーだから、みんな立ち上がって踊りたいと思うんじゃないかしら。だけど、最終的には私のメッセージが伝わってくれれば、と思うわ」



 来春発売予定のデビュー・アルバムのタイトルは「Dive Deeper」。「海を人生に例えてるの。人生を掘り下げよう、という意味よ。浅瀬に留まってウロウロしている人が多いと思うから」と話すジェイド。ぜひ、この驚異的な若きアーティストに耳を傾けてほしい。ジェイド・アンダーソンは深く潜るほど最終的には高く上り詰めていくのだ、という結論に至ることは間違いないだろう。