バート・バカラック
“20世紀最高のヒットメーカー”といわれるバート・バカラックは、1928年5月12日、米国ミズーリー州カンサス・シティ生まれ。

歌手を目指していた母親の影響で、幼いころからピアノやドラムスなどを学び、一家がニューヨークへ移住したのを契機に、音楽に目覚め、デイジー・ガレスピーやチャーリー・パーカーなどのジャズ、そして近代クラシック音楽を代表するラヴェルなどに刺激され、音楽の道を志す。大学卒業後、ニューヨークのマンズ音学院、カリフォルニアのサンタ・バーバラ音楽アカデミーなどで学び、ピアニストとして数年間活動したあと、ニューヨークに戻り、作曲家としての活動をスタート。この作曲家としての下積み時代にマレーネ・ディートリッヒと出会い、彼女のツアー・バンドの指揮者をつとめ、さらに1956年ごろに知り合った作詞家のハル・デヴィッドとの出会いによって、二人は1970年代初頭までコンビを組んで作詞作曲を開始。このハル・デヴィッドと共作した1957年のマーティー・ロビンスの「The Story Of My Life」で、二人は初ヒットを飛ばし、その後はこの黄金コンビとしてヒット曲、名曲を連発。ディオンヌ・ワーウィックの1962年のヒット曲「Don't Make Me Over」をはじめ、「Walk On By」、「(They Long To Be)Close To You」、「What The World Needs Now Is Love」、「I Say A Little Prayer」など、後世に残る数々の名曲を発表。60年代から70年代にかけて“バカラック・サウンド”と呼ばれる独特のスタイルを編み出し、アメリカのポピュラー音楽界の頂点に立つ作曲家としての地位と名声を築き上げました。

 また、60年代からバカラックは、映画音楽の世界でも活躍し、「何かいいことないか子猫チャン」(1965年)、「007/カジノ・ロワイヤル」(1967年)、「失われた地平線」(1973年)などのサントラを担当。「明日に向かって撃て」(1969年)ではアカデミー作曲賞、歌曲賞を受賞。そのテーマ曲「雨にぬれても」(歌はB.J.トーマス)は、世界的な大ヒットを記録。ちなみに、バカラックは1981年にも「ミスター・アーサー」で再びアカデミー歌曲賞を受賞。これまでに編み出した数多くのヒット曲、名曲は、いまなお多くのアーティストに歌い継がれています。

20世紀末に巻き起こったバカラックの再ブームの引き金となったのは、1998年にリリースされたエルヴィス・コステロとの共作アルバム『Painted from Memory』。バカラックを敬愛するコステロが、憧れの本人と制作したこの共演アルバムは、全米でも大ヒットを記録し、グラミー賞も受賞しています。その後、2003年にはアイズレー・ブラザーズのロナルド・アイズレーとの顔合わせによる“ロン・アイズレー&バート・バカラック”名義の共演アルバム『アイズレー・ミーツ・バカラック:ヒア・アイ・アム』を発表。