RAINBOW 2000

1989 8.9 (SAT) Mt.FUJI

クラウズ1山のよく晴れた天気とは対象的に、富士は残念ながら良い天候に恵まれず、富士ロックフェスティバルの台風の激しさとまではいかないものの、深い濃霧と強風と時折降る強い雨の中での開催となった。

しかし、そんな悪天候を吹き飛ばす程のピースフルなパワーが富士山でのレインボーにはあった。良くない天候でも、(だからこそ?)思いきり楽しもう!というリラックスした空気の中での意気込みのようなオーラが、オーディエンスにもアーティスト達にも満ち溢れていたことを確信している。


今年のレインボー・グラウンドでの目玉であったTHE ORBのライブは、アルバムとは全然違ったバージョンを聞かせてくれる想像以上に素晴しいものだった。コズミック・グラウンドでのHARDFLOORのライブは、ヒット曲のブレイクをさらに思いっきり長くして、嫌がおうでも盛り上がる、ダンス・ミュージックの王道を行ったものだった。フューチャー・グラウンドでのSPACETIME CONTINUUMのライブ、それに引き継ぐMIX MASTER MORRISのプレイは、西海岸でのアンビエント・パーティを少しでも垣間見たような気にさせてくれるクオリティの高いものだった。


ここではすべてのアーティストに関してフォローすることは難しいので、印象に残ったプレイをざっと紹介しよう。


MAYURI19:30頃、富士山には既に5000人もの人が集まっていた。その頃LOUDがプロデュースしているコズミック・グラウンドでは、大阪のNAOKI KIHIRAのプレイをしていた。ちょうど、お得意のドラムン・ベース展開に変わった終盤、SQUAREPUSHERの"COOPER'S WORLD"で締めた。次は日本の女性のテクノDJでは最高峰だと思われるMAYURIのプレイ。"GHOST IN THE SHELL"(石野卓球)など、普段よりフロアライクな選曲でオーディエンスを湧かせていた。続くQ'HEYもお祭りらしく、URの"AMAZON"で始まり"STAR DANCER"で締めるという、ヒット・メドレーなプレイで盛り上げ、ここで一発花火が打ち上がったくらいの盛り上がり様を見せていた。

コズミックでのメインアクトはHARDFLOORだったが、そのへんはここにライブ・レポートがあるので参照して欲しい。

HARDFLOOR以降は、SHINKAWA、YOJI BIOMEHANICA、YO-Cなどのハッピー系のDJが勢揃い。彼等のアッパーなプレイは、こういうビッグ・パーティーには欠かせないものだ。そしてラストを飾るにもまさにふさわしい。特にSHINKAWAのプレイ時に、雨風が強くなった瞬間の盛り上がり様はまさに圧巻!の一言。ラストはYO-Cが飾るのだが、アンコールをかなり長時間プレイして、クラウドに十分な満足を与えてくれていた。


フューチャー・グラウンドは、最初はRHYTHM FREAKSからMOOCHY、KAJIなどのハードステップ系で、後半は、DUB SQUADのライブ、PHOTEKのDJ、SPACETIME CONTINUUMのLIVEとアンビエントの展開が作られていた。

SPACETIME CONTINUUMのライブでは、「KAIRO」「VERTIGO」など、繊細で美しい旋律のある楽曲を聞かせてくれた。アンビエントの巨匠、MIX MASTER MORRISはビートの激しいブレイクビーツもののアンビエントから、ビートのあまりないアンビエントまで様々な選曲をこなす。それでいてその選曲の展開のうまさはやはりアンビエント界で最高峰の一人と言われるだけはある。


レインボウ・グラウンドのメインアクトはやはり何といってもTHE ORBのライブだろう。THE ORBのライブはグラウンド中を包み込む荘厳な世界を作り上げ、"LITTLE FLUFFY CLOUD"の超ロングバージョンの美しさはその一瞬が永遠に続くかと思われる程であった。最後のGENE KELLY の"SINGIN' IN THE RAIN"(雨に歌えば)の、エフェクトかましつつのプレイは全くもって気が利いていた。グラウンド中にいたオーディエンス達はきっと「雨だけど、来てよかった!」と思った幸せな瞬間だったことだろう。


クラウズ 2今年は本当に日本の野外フェスティバルは富士ロックフェスティバルの二日目中止、ナチュラル・ハイの中止等、天候面その他の諸事情によって恵まれなかった感が強いのだが、それでも、これらのパーティに参加した人も、参加しないでレポートを読む人も、ネガティブな要素を拾うことではなく素晴しかった面を大切に、また来年のフェスティバルを楽しみにしてもらえるといいと思う。もちろんそこで学んだ経験と知識を来年に活かすことは、参加者にとってもオーガナイザーにとっても非常に重要なことだ。ゴミの持ち返りや携帯灰皿、自分の体を守るための防寒具の持参などは、やってみて初めて気がつくものだ。

お互いでそういったことに気を配りながらパーティを楽しんでいくことができれば、やっと生まれ始めた日本での野外フェスティバル・パーティのシーンも、序々に広がっていくことだろう。

TEXT : MAHO TAKEMORI

1997 8.9 (SAT) HAKUSAN

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