WINK
= Josh Wink
かつて「Higher State of Conciousness」や「Are You Ready?」そして「Don't
Lough」等の大ヒットで、Hardfloor以降のアシッドハウス・リバイバルのスターとして活躍していた男。弱冠25歳で、世界中のテクノ/ハウス・ファンからの賞賛を手に入れた男。
96年の丸1年間、特に目立った活動(リリース)もなく、多くの日本のテクノファンたちからはその名前を忘れさられていたかもしれない。それどころか、若いリスナーたちの間では、その存在さえも知られていないという可能性さえもある。
これまで以上にないような現在のサイクルの早さの中で、たった1年でも活動を休止するということは、多大なリスクを伴う。既に確立されたロックなどと違って、まだ歴史の浅いテクノという分野では、音楽の本質以上に「勢い」というものが必要なのだ。例えば(古い話で恐縮だが)、ブルース・スプリングスティーンがしばしの間隔をおいて「Born
in the USA」をリリースしたこととは、勝手が違うのだ。こういった状況を前にして、彼は今になっていったいどんな作品を聞かせてくれるというのだろう?
ところがそういった危惧を、まさにあのDon't Laughの笑い声のごとく笑い飛ばすかのように、彼は実に新しいスタイルの音楽を届けてくれた。時代に取り残されるどころか、またもや先を行ってしまったのだ。
ここにはハウス以降の、様々な電子音楽の要素が盛り込まれている。ハウス、アシッド、ミニマル、ドラムンベース、ブレイクビート等、さらにはポップスにも通じるボーカルをフィーチャーした、落ち着いたナンバーさえもある。だがこのような言葉でジャンルを羅列したところで、このアルバムの良さは全く伝わらない。そして1曲1曲を取り上げてみても不十分だ。
アルバムを最初から最後まで通して聴いてみてこそ、その本当の素晴らしさに気付くことだろう。Winkのもたらす新しい世界に、是非触れてもらいたい。 |