Interview with Manna
Kevin Bacon / Jonathan Quanby -17 March 1998 -

イギリスで今年のBrit Awardsなどを受賞したFinley Quayeのアルバム「Maverick A Strike」のプロデュースをおこない、一躍その名が世界に知られるようになったKevin BaconとJonathon Quarmbyの二人組、Manna。その他にも彼らはこれまでにAudio WebやLongpigs、そしてDavid Bowieまでの作品に関わってきている。

そのMannaが遂に3年振りのアルバム「5:1」を発表する。このアルバムはFinley Quaye、LongpigsのCrispin Hunt、Audio WebのSugar Merchantといったヴォーカリストが参加し、それらと見事にマッチしたMannaの最高に心地よいサウンドが魅力だ。

そこでSonyTechno PageではさっそくMannaのふたりに電話インタビューを行いました。二人の出会いから、そのアルバム「5:1」のこと、そして今後について、Kevin Baconがシェフィールドのスタジオで答えてくれました。


まずふたりがどのようにして知り合ったのか教えてもらえますか?

Kevin Bacon(以下K):最初にJonathonと知り合ったのは6年前。Ephraim Lewisのアルバム「Skin」を一緒にプロデュースすることになって、それで知り合ったんだ。それまで僕はThe Comsat Angelsというバンドでベースを弾いていて、Jonathonはセッション・プレーヤーとしていろんなアーチストと仕事をこなしてきていた。Ephraim、彼は残念ながら事故で亡くなってしまったんだけど、彼のアルバムの仕事を一緒にやっていく中でJonathonと何か一緒にやってみようって話になって、それで1995年にはMannaとしての初めてのアルバムを出すことになったんだ。それからプロデュースなどの仕事も一緒にやるようになった。

それまではふたりはどういった音楽をやってたんですか?

K:僕らはまったく異なる音楽背景をもっているんだ。僕は15才のときに初めてベースを手に入れて、バンドに入って19才でレコードデビューした。バンドでの活動の中でいろんな楽器を扱うようにもなったんだ。一方Jonathonの方は両親が合唱隊で歌ってて、彼の家にはピアノがあったので、彼自身はピアノを小さい頃から弾いていた。ちゃんと大学へ行って建築学を学んでいたんだけど、そこをドロップ・アウトしてミュージシャンとして活動するようになった。その頃僕はThe Comsat Angelsでのライブ中心の活動よりもスタジオ中心の活動に関心を持ちだし、バンドから離れようとしていた時期だったんだけど、ちょうどその頃バンドはアイランドに移籍をして、自分達のスタジオを手に入れた。そのスタジオを僕とJonathonが3年程前に買い取って機材をいろいろと導入して現在の活動の拠点にしているんだ。

Mannaとしては活動の初期から制作の環境的には恵まれていたわけですね。

K:そうだね。ただ活動といっても、僕らはこれまでプロデュース業が比率的には高くて、自分達の作品をつくるという意味ではそれ程こなれた感じでどんどん進めていけるわけではないね。やはり他のアーチストをプロデュースする時、僕らは常にコンソールの中にいる存在で、自分達の作品となると、よりプライベートなものになるわけだから、どうして時間がかかってしまう。

それでもFinley Quayeのアルバムを聴くと、あなた方の今回のアルバムとの共通点みたいなものを感じ取れるのですが、それに関してはどう考えますか?

K:Finleyは本当に才能を持ったヴォーカリストだ。普通のプロデュースの過程だと、プロデュースするアーチストのそれぞれのパートを短い時間でレコーディングしていき、それで欠けている部分を僕らふたりで埋めて、そしてミックスしていくような作業になりがちだし、それには僕らも慣れているんだけど、Finleyのアルバムの大部分はバックトラックのほぼ全てを僕とJonathonのふたりだけで作り上げた。だから僕らは「Maverick A Strike」で彼と一緒にやれたのをすごく嬉しく思っているし...実はこの「Maverick A Strike」の中の素材には、僕らの今回のアルバムのために作っておいたものも多く使われているんだ。

Finleyの大ヒットした「Even After All」のアコースティック・ヴァージョンを聴くと、彼がギター一本でレゲエ風に歌っていますけど、あなた方が手掛けたアルバム・テイクはもっとスムースで、独特の浮遊感みたいなものを感じ取れますね。

K:Finleyはレゲエ・ファンだしイギリスにはもちろん多くのレゲエ・ファンがいるんだけど、この曲に関していえば僕らを色をより強く出したといえるだろうね。まったくのレゲエにすることもできたけど、それだと本当に多くの支持を得ることは今のイギリスでは難しい。これは彼のデビュー・アルバムからのファースト・カットだったから、より多くの人達が彼に興味を持ち、そしてそのレコードを買ってくれることが大切なんだ。

なるほど、しかし逆にあなた方の今回のアルバム「5:1」ではダブ的なサウンドも各所に聴かれますね。やはりあなた方自身の音楽にとってレゲエの影響は少なからずあるということなんでしょうか?

K:僕自身は80年代をずっとロックバンドで過ごしてきた人間だし、70年代後半から80年代前半のロンドンではパンクやロックをやる人間にとってレゲエ/ダブというのは避けて通れないようなものだった。そのころ既に多くのロックファンに信頼を寄せられていたジョン・ピールも、この時期には本当に多くのダブをラジオで流していたんだ。だからその影響が僕らのサウンドにまったく影響がないとは言わないけれど、より強く僕らに影響を与えたと思うのはヒップ・ホップだね。ある意味パンクよりも強いインパクトを持っていたとも言えると思う。ヒップ・ホップは楽器も買えないようなやつらがターンテーブルとマイク一本だけではじめた音楽だろう?それはその頃のパンク・フォロワー的なバンド達よりよっぽどポジティヴに音楽に向かい合っている。この姿勢に僕らは影響を受けたと思うね。直接的、音楽的ではなく、アティテュード的ににね。

では話を今回のアルバム「5:1」の方に移したいと思いますが、このアルバムで参加しているヴォーカリストについて教えてもらえますか?

K:まず話に出たFinley。彼の歌ってくれた曲は、最初リズムとキーだけができたところで、彼がそれに合わせてメロディーを歌った。2テイクだけ録って、それでそのあとまた僕らで彼の歌ったメロディーに合わせて曲を完成させたんだ。 次にLongpigsのCrispin Hunt。Longpigsも僕らがプロデュースをしてて、以前から一緒に何かやりたいという話をしてたから今回参加してもらった。あとはシングルカットのHogging A Dubでも歌ってくれているAudiowebのMartin Merchant。やはりAudiowebも僕らがプロデュースをしていて彼らとは親しくしていた。あと2トラックで歌ってくれているGillyはバーミンガムの生まれでずっと前から知り合いだったんだけど、Trickyのサウンドに影響を受けたやつなんだ。既にMCAと契約しているんだけどまだブレイク前って感じで、彼の声が僕らもすごく気に入っていたし、彼をより多くの人に知ってもらいたいということもあって、今回参加してもらった。

確かに彼はイイ声ですよねぇ。

K:そう、イイやつなんだけど、ヘヴィーなやつなんだ(笑)。別に彼がギャングスターってわけじゃないんだけど、僕が知っているバーミンガムのやつはみんなコいんだよなぁ(笑)。

じゃあ、今後コラボレートしたいアーチストとかはいます?

K:すごく幸運なことだと思うんだけど、コラボレートしたいアーチストの何人かには今回の「5:1」に参加してもらっているし、他にコラボレートしたいと思っていたアーチストとも、例えばSpearheadのMichael Frantiとは先週サンフランシスコで会って、彼の今後の作品で一緒に何かやろうって話をしてきたところなんだ。あと、多分Luscious Jacksonとも一緒に仕事をすることになると思うよ。

Beastie BoysがやってるGrand Royalのですね。

K:そう、Beastie BoysがやってるGrand Royalのアーチストだから興味あるんだけどね(笑)。

じゃあ、Beastie Boysとやる方がイイんじゃないです?(笑)

K:もちろん機会があれば是非だけどね。 あと、奇妙かと思われるかもしれないけどHuman LeagueのPhilip Oakeyとも一緒に何か作りたいと思ってるんだ。実は彼、うちの隣に住んでて、たまに話しはするんだけど一緒に外で会ったりしたことはなくて。けど、彼はまたきっとソロで優れた作品を作れると思うから...。

話は今回の「5:1」に戻るんですが、このアルバムがレコーディングされたのはいつ頃なんですか?

K:1年半前からレコーディングを始めた。いや、もっとかかってるなぁ(笑)。このアルバムのために25曲はレコーディングしてるよ。

25曲!?

K:最初のうちはリズムトラックをいくつか作ってて、ちょうどその頃聴いたGoldieの"Timeless"がすごく良かったんでドラムン・ベースのものとかをつくってたんだけど、つくっているうちに、今回のアルバムの内容には合わないと判断してそれらは落とした。 あと、今年の末までには僕らが手掛けるサウンドトラック・アルバムが出るんだけど、そのサウンドトラック用の曲も既にレコーディングが終わっていて、その中にはこの2年くらいの間につくって未発表だったものを手直ししたものも含まれてるよ。これはこれからミックスダウンや版権のクリアとかをやんなきゃいけないんだけど、早ければ8月か9月にも出せるかもしれないな。

今、今回のアルバムの為に25曲ものトラックを用意したと言ってましたが、ファースト・アルバムの時もそんな多くの曲の中から選んだんですか?

K:いや(笑)。ファースト・アルバムの時に収録されなかったのは1曲だけだね。その時はまだアポロと契約する前で、デモとしてつくりためたものをまとめてRenaat(Vandepapeliere)のところへ送ったら、彼がそれを気に入ってくれて、それでそれらの曲をアルバムにしたんだけど、1曲が入りきれなかったんだ。

デモを送ったのはR & Sだけだったんですか?というのもシェフィールドといえばWarpがありますよね。

K:もちろんWarpにも送ったよ。ただRenaatが先にコンタクトしてきたんだ。WarpはRob(Mitchell)はじめみんなよく知ってるから、Warpとも何かやりたいとはすごく思ってるよ。特にJimi Tenorは好きなアーチストで、彼とは是非コラボレーションしたいなぁ。

さて、もう時間の方もなくなってきちゃったんですが、今後ライブの予定なんかは?

K:是非やりたいと考えているよ。ただ、今回のアルバムの曲もプレイしたいし、そのためにはFinley、Crispin、Martinらヴォーカリストを入れてやんなきゃいけないんだけど...

そりゃ難しいですよね。

K:そう。だけど、どうにかスケジュールを調整して必ずやりたいとは思っているんだ。

わかりました。では最後にもうすぐ日本でも発売される「5:1」のことも含めて、日本のみんなへメッセージをお願いします。

K:メッセージ?難しいなぁ...。ふぅーっ...。そうだなぁ...。このアルバムに限ったことではなくて、僕達のすべての作品に言えることなんだけど、あくまで楽しんでもらいたい。あまりシリアスにそれを考え込んで聴いてもらうよりも、純粋に楽しんでもらえるとうれしいね。僕らもそう願って作品をリリースしているから。

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