ウータン・クラン

● RZA→別名:ボビー・デジタル。野獣揃いのウータン・クランの指揮をするウルトラ・スーパーなリーダー。普通の人間とは住んでる次元が違う、最もイルる男。宇宙的。目が尋常じゃない。プロデューサーとしての手腕はモチロンのこと、MCとしてもハンパない切れ味の超絶クレイジー・フロウを見せる。無類のカンフー映画好きで、ウータンの基本的コンセプトは全てこのヒトの頭の中から始まっている。ウータンのデビュー以前に、トミー・ボーイからプリンス・ラキーム名義でシングル“OOH,I LOVE YOU RAKEEM”(1991年)をリリース。そこには既にウータンの文字が…。自らが音楽を担当した映画『ゴースト・ドッグ』での怪演も忘れ難い。ソロ・アルバム:『BOBBY DIGITAL IN STEREO』(1998年)、『DIGITAL BULLET』(2001年)/他に、RZAがセレクトしたウータンのベスト盤や、全面的に音楽制作に携わったジム・ジャームッシュ監督作品のサントラ盤『ゴースト・ドッグ』(1999年)もあり。また、フルートクワン、トゥ・ポエティック(R.I.P.)、プリンス・ポールと組んだグループ、グレイヴディガズでも2枚のアルバムを発表している。



●GZA/ジーニアス→ウータン随一の知性派で、ひとつひとつの言葉の重みはダントツ。シブいという言葉がこれほど似合うラッパーは、いない。イブシ銀な魅力。ウータン以前にコールド・チリンからアルバムをリリースしたが、速攻で契約を切られた。彼は今もその悔しさを忘れていない。2度目のウータン来日公演でDJも務めていたプロデューサー、アラー・マセマティックスと深い関係を持つ。RZAの従兄弟。ソロ・アルバム:『LIQUID SWORDS』(1995年)/『BENEATH THE SURFACE』(1999年)がある。



●メソッド・マン→別名:ジョニー・ブレイズ。天性の超絶ヴァイブを体全体から放ち続ける“ビッグ・ベイビー”。その正直さ、天真爛漫さ、何も恐れず自分の思うがままに行動する態度は、正にデカい子供。TVゲーム好き。“オレのルーツだから”と言い、メンバーの中で今も唯一スタテンに住んでいる男。AGから聞いた話だと、幼少時はドモリ性でいつもヒトの後ろに隠れてるような引っ込み思案な少年だったという。そんなヤツを変えたのはヒップホップ&大量のガンジャなのか?ちなみに、メソッドとはガンジャのことらしい。シルベスター・スタローン主演作『コップランド』に強盗役でチョイ出演。レッドマンとは公私共に仲が良い。ソロ・アルバム:『TICAL』(1994年)/『TICAL 2000:JUDGEMENT DAY』(1998年)/他にレッドマンとの共演アルバム『BLACKOUT』(1999年)、同じくレッドマンとの初主演映画にもなった「HOW HIGH」(2001年)がある。



●オール・ダーティ・バスタード→別名:オサイラス。天性のキ印具合に加え、ナンでも来いの超ヘヴィーなドラッグ&アルコール・ユーザーなもんで、ヒップホップ界でも最も手の付けられないブットビ男になってしまった。伝説は数知れず。裁判沙汰も数知れず。だが、そのブットビ具合がMCという立場で爆裂した時のスサマジイ破壊力は、背筋が凍るほどだ。オンナ大好きで、そのリリックのトンでもないスケベさには目が点になる。現在ドラッグのリハビリ中な為、活動休止。RZAの従兄弟。ベクトルの向きは違うものの、ブットビ具合はいい勝負か?ソロ・アルバム:『RETURN TO THE 36 CHAMBERS:THE DIRTY VERSION』(1995年)/『NIGGA PLEASE』(1999年)がある。



●レイクウォン→別名:シェフ、レックス・ダイアモンド。そのイウォーク族(『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』より)に酷似したユニークなルックスからは想像もつかないようなカッコいいラッピンを武器に、ウータンにスパイシーな味付けをする料理人。実際にも料理がウマいらしく、得意なのは豆を使った料理だとか。とにかく高価なモンが大好きなようで、現在のお気に入りはグッチ。取材の時もグッチのジャケットを着て来てました。仲間思いのあたたかいヒト。マフィア映画ファンで、一番好きなのは『スカーフェイス』。ソロ・アルバム:『ONLY BUILT 4 CUBAN LINX』(1995年)/『IMMOBILARITY』(1999年)がある。今年(2002年)新作発表予定。



●ゴーストフェイス・キラー→別名:アイアン・マン、トニー・スタークス。レイクウォンと並ぶウータン最高のストーリー・テラー。そのソウルフルな表現力の深さで泣かせる名曲多数あり。鋭くビートに切り込んで来る時のスリリングさも凄い。アル・グリーン、デルフォニックス、モーメンツなどなど、70年代ソウルが好きらしく、そうした感覚はソロ・アルバムで見事に開花している。最新作からのカット”CHERCHEZ LAGHOST”がロングヒットとなっている。最近、モス・デフともコラボレイト。ソロ・アルバム:『IRONMAN』(1996年)/『SUPREME CLIENTELE』(1999年)がある。まもなく、最新作を発表。



●インスペクター・デック→別名レベル・INS、フィフス・ブラザー。インスペクター(=警視、検査官)の名の通り、常に冷静沈着。ライム・スタイルは最もオーソドックスだが、通の間での人気は高く、それはギャングスターやピート・ロックのアルバムにフィーチャーされてたことでも証明済みだろう。プロデューサーとしても活躍中。ソロ・アルバム:『UNCONTROLLED SUBSTANCE』(1999年)がある。



●U-ゴッド→別名:ゴールデン・アームス。他のメンツと比べると地味な感じは否めないが、その野太い声質で繰り出す押しの強い個性的な味系フロウは根強い人気を誇る。憎めないタイプ。

ソロ・アルバム:『GOLDEN ARMS』(1999年)がある。



●マスター・キラー→別名:ハイ・チーフ。グループの中では、一番目立たない存在。ウータンの謎がこれだけ解明されてきた現在も、このヒトのことだけは全くの謎。どうしてウータンにいるのか、それすらちょっと疑問だが。ソロ・アルバム:2001年に待望のソロ作に期待。



●カパドンナ→別名:カプチーノ。ウータンのセカンドまでは準メンバー的存在だったが、今回からおそらく正式メンバーの仲間入りを果たす。特別光る何かがあるってワケじゃないが、中々に味わい深い声とフロウは持っているし、ドンドンカッコ良くなってきてるのは確か。今後の増々の成長に期待大。ソロ・アルバム:『THE PILLAGE』(1998年)、『THE YIN AND YANG』(2001年)がある。



HIP HOP史上最強の軍団”ウータン・クラン”が成功するまで



WU-TANG CLANはニューヨークのスタテン・アイランド出身。スタテン・アイランドと言えば、ゴミ処理場や刑務所などの施設が集められたマンハッタンのイメージとは、かけ離れたフェリーでしか行き来できないゲットーな島である。そんなある種、見放された島でWU-TANG CLANは生まれた。



メンバーは司令塔RZA(レザ)*(RZAとODB、GZAは従兄弟の関係である)。を筆頭にGZA(ジニアス)、METHOD MAN(メソッド・マン)、RAEKWON(レイクウォン)、OL’DIRTY BUSTARD(オール・ダーティ・バスタード)、GHOST FACE KILLAH(ゴースト・フェイス・キラー)INSPECTAH DECK(インスペクター・デック)、MASTA KILLA(マスター・キラー)、U-GOD(U・ゴッド)、前作から正式にメンバーに加わったとされるCAPPADONNA(カパドナ)。ウータンとは、武闘のことで少林寺拳法の流派の一つと言われており、その昔少林寺と対抗した武闘派がウータンである。すなわち、ウータンとはカンフーの精神性やアイディア、ストーリー性を取り入れた革命的なヒップホップ集団なのである。



93年に発表された”PROTECT YA NECK”は商業的に走っていたミュージックシーンの行き詰まりに喝を与えた作品であり、瞬く間にウータンはヒップホップ界のヒーローとなる。→ラウド・レーベルと契約する。



94年にデビュー・アルバム「ENTER THE WU-TANG」を待望リリース。ハードコアでありながら、パーティーなノリを忘れない作品は各方面で大絶賛され、今や90年代のミュージックシーン史に残る最高傑作と評価される。



96年、全世界で600万枚以上のセールスとなった2nd アルバム「WU-TANG FOREVER」(2枚組)を発表。翌97年、レイジ・アゲイント・ザ・マシーンのツアーに同行。HIP HOPとROCKの最強グループのヘッドラインで話題となる。00年、NASやバスタ・ライムズ、アイザック・ヘイズなどなど豪華な外部アーティストが勢揃いした3rd アルバム「THE W」を発表。



なによりもウータンの凄さというのは、常に時代の先を行くRZAの独特なプロダクション・センス、それに加えたメンバー全員の強力な個性(キャラ立ち)とMCスキル…どれを取り上げてみてもこれほどまでに完成したグループは、これから先も出て来ないだろう。



ウータン・クランのアルバム、メンバー個々のアルバムなど”RZA”のプロデュース・ワークは、外部のアーティストからも暑い支持を受けており、ヒップホップだけに限らず、多岐に渡る。これまでにもサイプレス・ヒル、ノートリアス・BIG、ビッグ・パニッシャー、ビョーク、トリッキー、ドッグ・イート、ドッグにバウンティー・キラーなどを手がけて話題を呼んでいる。



今回の作品「WU-TANG FLAG IRON」についてRZAは、「すでに[THE W]をレコーデイング時にもう一枚のアルバムを完成させるのに十分な曲数が出来ていたんだ。でも、LAで録った曲は明るい日差しの中でのことだったので、冬の気分を感じさせるものにするために、数曲録り直しをしなきゃいけない。」と語る。