シングル「ザ・サード・ミッション」には、セイーバーズの頃にはなかったメロディアスでメランコリックなベースラインが鳴っているが、ウェザオールとテニスウッドのふたりは自分たちの“音”を模索し続け、その試行錯誤をそのままパッケージにしたのがファースト・アルバム『ザ・フィフス・ミッション』だった。『ザ・フィフス・ミッション』に収録された全18曲には、セイバーズで築き上げたヒリヒリするようなブレイクビーツはもはや微塵もなく、そしてそれは固有のジャンルで括られるようなものでもなく、そこにはこの新しいプロジェクトがこれから発信してくであろう“音”の原型が、まだ充分に洗練されていないまま無造作に並べられていた。そしてトゥ・ローン・ソーズメンが自らの“音”を確実なものにするのは、「スウィミング・ノット・スキミング」と「ストックウェル・ステッパズ」においてだった。

アシッド・ハウス以降、インストゥルメンタルの音楽を以前にも増して親しむようになった人間は、その“音”を自らの想像力のなかで聴くものだ。トゥ・ローン・ソーズメンの“音”は、「スウィミング・ノット・スキミング」の“グライド・バイ・シューティング”と“ビム、ジャック・アンド・フローレンス”によって完成され、そして『ザ・フィフス・ミッション』に収録された“リコズ・ヘリー”のミュージック・トロピーク(ケヴィン・マッケイ)や16Bによるリミックスでその方向性をほのめかした。とくに“グライド・バイ・シューティング”のミニマルでディープなテック・ハウスはウェザオール言うところの“メランコリックだけど気分を高揚させる”もので、それは「ストックウェル・ステッパズ」の“スピン・デザイアー”で確実なものとなった。今ではトゥ・ローン・ソーズメンの代名詞とも言える、あの暗く沈んだメランコリーを歌い出すベースラインと、そして無機質でありながらグルーヴィーなリズム・トラックとの奇妙な出会いが、そこにはある。拙誌『エレ・キング』でインタヴューに応じてくれたウェザオールはそのヒントをニュー・オーダーやかつてのファクトリー系の音からの影響だと明かしてくれたが、それはセイバーズでの活動を終え、深海に潜り込んだウェザオールが、自らの拙さまでさらけ出しながら手中にした紛れもない自分たちの“音”だった。

 

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