音楽評論家、大鷹俊一のジミ・ヘンドリックス 短期連載コラム(第1回)が到着!
1968年10月16日発売、全米アルバム・チャート1位を獲得したザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの3枚目のアルバムにして、生前発表されたジミ最後のスタジオ・アルバム『エレクトリック・レディランド』が誕生から半世紀を迎えた。リマスタリングが施されたオリジナル・アルバム、未発表デモ、アウトテイク、ライヴ音源などを加えた3枚組CDに長編ドキュメンタリー、ハイレゾ音源を収録したBlu-ray1枚を加えた、計4枚組仕様の『Electric Ladyland - 50th Anniversary Deluxe Edition』(輸入盤)が本日発売された。
(https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=4756&cd=01DX000085902)
これまでにジミ・ヘンドリックスの日本盤CDのライナーノーツを数多く手掛け、著書『定本 ジミ・ヘンドリックス ―その生涯と作品―』(ミュージック・マガジン)を執筆した、音楽評論家、大鷹俊一氏による『エレクトリック・レディランド50周年記念盤』の魅力に迫る、短期連載コラム第一回:“エレクトリック・レディランド50周年記念盤とは?”が到着。
第1回 『エレクトリック・レディランド50周年記念盤』とは?
よく知られていることだが、ジミ・ヘンドリックスが生前作ったオリジナル・アルバムは、わずか3枚。『アー・ユー・エクスペリエンスト?』『アクシス:ボールド・アズ・ラヴ』、そして『エレクトリック・レディランド』で、どれも必聴、重要なアルバムばかりだが、中でも代表作とされるのがサード・アルバムの『エレクトリック・レディランド』だ。
「紫のけむり」「フォクシー・レディ」などのシングル・ヒット、圧倒的なライヴ・パフォーマンス、音楽史を変えるギター・プレイで時代の寵児となったジミが、故国アメリカに凱旋しツアーを続けながら、大好きなレコーディング・スタジオで思う存分アイデアを広げたり仲間と自由なセッションをくり広げ出来上がったとてつもないアルバムだ。
いまだに誰も越えることの出来ない鋭く、感受性豊かなギター・プレイがぎっしりと詰まり、さらに作者のボブ・ディランからリスペクトを受けまくる「見張塔からずっと」のカヴァーもありと多彩なアルバムは、当時は珍しい2枚組にも関わらず全米1位の大ヒット。ロック史を築いたものとして時代、世代を超越して聴かれてきた。
そんなアルバムも、1968年のリリースからもう50年。アニバーサリーを迎えるにあたって、天空からジミが“良くやった!”と叫びそうなアイテムの登場だ。
3枚組CD+Blu-ray1枚の計4枚組BOX『エレクトリック・レディランド50周年記念盤』は、ニュー・リマスターされたオリジナル盤のDisc1、未発表デモなど貴重なトラック収録のDisc2、アルバム発売の1カ月前にLA,ハリウッド・ボウルで行われたライヴのDisc3、そしてドキュメンタリーやハイレゾ、5.1サラウンドを詰め込んだBlu-rayで構成され、どれも聴きどころ満載だが、まず嬉しいのがパッケージのジャケットだ。
先日も素晴らしい来日公演を行ったポール・マッカートニーの元妻でカメラマンだった故リンダ・マッカートニーが撮ったニューヨーク、セントラルパークの<不思議の国のアリス>像で子供たちと戯れる一枚で、これこそジミが本来ジャケットにしたかったもの。昔はそんな意思は無視され、英国では裸の女性が居並ぶものとなってジミを激しく嘆かせた。そのオリジナル・アイデアが、なんと50年ぶりに復活となったわけだ。実際にジミと交流のあった人たちが口を揃えて、穏やかでジェントルな人だったというジミの実像からすると、どれがジャケットにふさわしいかは明らかだろう。
もちろん何よりも内容が気合いが入っていて素晴らしい。オリジナルのアナログ・テープからリマスタリングされた本体は、これまで以上にヘヴィ&スマート、かつアグレッシヴな音になっているが、とくにギターの伸びのあるトーンの豊かなニュアンスが胸に迫る。レコーディングそのものが当時ニューヨークで最新の機材を備えた新スタジオで録られただけにアナログならではの膨らみがありつつ、ジミの鋭いフレーズが浮かび上がる世界が再現され、音の真髄がさらに身近となっている。
またジャム・セッション的なアプローチが際立つアルバムだけに、デモやアウトテイクを集めたディスクも重要で、聴きごたえがあり、その時の感情や体調がストレートに反映されるライヴも、このハリウッド・ボウルは充実していて文句なし。そして、高音質のBlu-rayによる5.1CHサラウンドは、ジミとスタジオワークを共にしたエンジニアのエディ・クレイマーが、当時、二人が脳裏に浮かべていた音だと絶讃するほどで、確かに新しいフィールドを駆け巡るジミ・ヘンドリックスを体感出来るものとなっている。
50年目の再誕生、これは聞き逃せない。
大鷹俊一
大鷹俊一(おおたか としかず)
音楽評論家。北海道、小樽市生まれ。
ニューミュージック・マガジン社に勤務後、フリー。ブリティッシュ・ロック全般、パンク/ニュー・ウェイヴ以降の米英ロックを中心に各種媒体に書き続けている。
主な著作は『レコード・コレクター紳士録』(ミュージック・マガジン)、『定本 ジミ・ヘンドリックス ―その生涯と作品―』(ミュージック・マガジン)、『ブリティッシュ・ロックの名盤100』(リットー・ミュージックなど。また監修本多数。
また、未発表デモ、アウトテイクを収録した『エレクトリック・レディランド50周年記念盤』<CD-Disc2>から「1983...(A Merman I Should Turn to Be)[Demo]」、「Voodoo Chile (Demo)」、「My Friend (Demo)」、「At Last...The Beginning (Demo)」、「Long Hot Summer Night (Take 14)」、「Rainy Day,Dream Away(Demo)」の6曲の音源を収録した『At Last...The Beginning - The Making of Electric Ladyland: The Early Takes Sampler』の配信も本日よりiTunesにてスタート。
11月21日には、大鷹氏がライナーノーツを手がけた日本盤『エレクトリック・レディランド50周年記念盤』がいよいよ発売される。
誕生から半世紀を経て、再び世界中のロック・ファンが、この作品をもって圧倒的な体験(エクスペリエンス)をすることになる。
https://www.sonymusic.co.jp/artist/jimihendrix/info/499023
|商品情報|
アーティスト:The Jimi Hendrix Experience / ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス
タイトル:Electric Ladyland - 50th Anniversary Deluxe Edition / エレクトリック・レディランド 50周年記念盤
品番:SICP-5917~5920
価格:¥11,000+税
仕様:完全生産限定盤 / 直輸入パッケージ仕様 / 3CD+Blu-ray / 48豪華カラーブックレット
解説:大鷹俊一 英文解説:デヴィッド・フリック、ジョン・マクダーモット、エディ・クレイマー / 翻訳・歌詞・対訳付
発売日:2018年11月21日(海外:2018年11月9日)
収録曲
<CD-Disc1>Electric Ladyland
1. ...And the Gods Made Love
2. Have You Ever Been (To Electric Ladyland)
3. Crosstown Traffic
4. Voodoo Chile
5. Little Miss Strange
6. Long Hot Summer Night
7. Come On (Let the Good Times Roll)
8. Gypsy Eyes
9. Burning of the Midnight Lamp
10.Rainy Day, Dream Away
11.1983...(A Merman I Should Turn to Be)
12.Moon, Turn the Tides...Gently Gently Away
13.Still Raining, Still Dreaming
14.House Burning Down
15.All Along the Watchtower
16.Voodoo Child (Slight Return)
<CD-Disc2>At Last...The Beginning: The Making of Electric Ladyland: The Early Takes
1. 1983...(A Merman I Should Turn to Be)
2. Angel
3. Cherokee Mist
4. Hear My Train a Comin'
5. Voodoo Chile
6. Gypsy Eyes
7. Somewhere
8. Long Hot Summer Night (Demo 1)
9. Long Hot Summer Night (Demo 3)
10.Long Hot Summer Night (Demo 4)
11.Snowballs at My Window
12.My Friend
13.At Last...The Beginning
14.Angel Caterina
15.Little Miss Strange
16.Long Hot Summer Night (Take 1)
17.Long Hot Summer Night (Take 14)
18.Rainy Day,Dream Away
19.Rainy Day Shuffle
20.1983...(A Merman I Should Turn to Be)
<CD-Disc3>Jimi Hendrix Experience: Live At The Hollywood Bowl Sept. 14, 1968
1. Introduction
2. Are You Experienced?
3. Voodoo Child (Slight Return)
4. Red House
5. Foxey Lady
6. Fire
7. Hey Joe
8. Sunshine of Your Love
9. I Don't Live Today
10.Little Wing
11.Star Spangled Banner
12.Purple Haze
<Blu-ray>
・長編ドキュメンタリー 『At Last…The Beginning: The Making of Electric Ladyland』(日本語字幕付)
・アルバム『エレクトリック・レディランド』の●[Uncompressed LPCM Stereo 24b/96k]、●[Uncompressed LPCM 5.1 Surround 24b/96k]、●[DTS-HD Master Audio 5.1 Surround 24b/96k]を収録。
|関連リンク|
海外アーティストページ: http://www.jimihendrix.com/