アンピール
“EMPIRE”(エンパイア)という言葉を想起させるバンド名“EMPYR”。シンプルだけど、パワフルなバンド名。そこには、メンバーそれぞれがすでに属していたバンドとは別の新たなプロジェクトで、“新たな「国」をうち建て、ポジティブな創造や平和的な革命を興したい”という強い願いと士気が込められている―。



フランスの2大ロック勢力であるKYOとPLEYMO。その2バンドと、Watcha、そしてVegastarのメンバーからなるEMPYRのメンバー5人は、各々のバンドでの活動も成功し充実していたが、幾度となく互いに顔を合わせる度に、何かを感じ始めていた。最初は、なんとなく一緒に音楽ができたらという気持ちだったが、次第に抑えられない衝動へと変わっていった。当初5人の都合が合うときにやっていた“サイド・プロジェクト”は、“あまりにも一緒にプレイするのが楽しくなって、メイン・プロジェクトになった”と5人は語っている。



複数のバンドのメンバーによって結成されたプロジェクトではあるが、EMPYRが創り出す音楽は、フランケンシュタインのようなツギハギだらけの音楽では決してない。それどころか驚くべきオリジナリティを持った全く新たなサウンドを創りあげたのだ。

「僕らがこのプロジェクトをやろうと思った理由は、新たなスタートが欲しかったから」と語るEMPYR。彼らは約2年前に、フランスのブリタニー海岸にあるハウス・スタジオに入った。そこは外との世界とは遮断され、水平線を常に臨むことができる場所。「ちょっとしたホリデーのはずが、いつの間にか新たなバンドが誕生したのさ」と当時を振り返り、微笑みながら彼らは語る。「ただ音楽を一緒にやりたい」という彼らの欲望はさらに強いものとなり「これまでに誰も到達したことがないような新たな音楽を創り出したい」と思うほどになった。「僕らが一緒にやることによってどんな音楽が生まれるのか、始めたときは全く分らなかった。でもやってゆくうちに自分たちが求めていた方向が見えてきたんだ。」

彼らが音楽的に追求したかったこと―それは今流行っている音楽から意図的に離れ、ロックの原点に戻ること。ギターとヴォーカルから曲のアイデアは生まれ、それをコンピュータに取り込み、それぞれが担当の分野で実験を行い、曲は進化を遂げた。



彼らは最初から英語で歌うことを決めていた。自分たちの音楽を世界に通用するものだと考えたいたからだ。「当初EMPYRが音楽的にどうなるのかは誰にもわからなかった」とメンバーは語っているが、しかしメンバーが共通して影響を受けてきたバンド―Smashing PumpkinsやRadiohead、 The Deftones、Biffy Clyro等の音楽が、彼らの音をあるテリトリーへと導いていった。当初彼らの音楽はメタルの方向性が強いものだったが、次第にメランコリックでメロディアスな音のほうへと方向を変えていった。「僕らの音楽はかなりユニークな音楽だと思っているよ。メンバーそれぞれがもともと持っていたアイデアはあったけれど、一緒に音楽を始めてみると、自然とこのバンドにしか出来ない音になっていたんだ。」



レコーディングは2007年夏に行われた。プロデュースにはFailureの元メンバーであり、Black Rebel Motorcycle Club、Pete Yorn、A Perfect Circle等を手掛けてきたKen Andrewsを起用。“アメリカン・ロック・サウンドと、僕らのもつヨーロッパ的でメランコリックな雰囲気を、彼は絶妙なバランスで結びつけてくれたよ。”レコーディング期間中彼らが暮らしていたアパートは、偶然にもNirvanaが「Nevermind」のレコーディング中に暮らしていたという一室だった。



EMPYRがこのアルバム制作で目指したものは“タイムレスな音”。

ツイン・ギターにベース、ドラム、そしてヴォーカルが重なる5人のフォーメイションは、グランジ、エレクトロ、ポップ、さらにはフォークの要素までも取り入れ、彼ら独自のスタイルでそれらのミュージック・ジャンルを再構築している。

またライヴ活動に関しても非常に積極的で、アルバム発売と同時に世界を視野に入れたライヴ活動を行いたいと考えている。