パーヴォ・ヤルヴィ、N響と諏訪内晶子という最高のパートナーを得て、ついに武満徹を振る~「20世紀傑作選②武満徹:管弦楽曲集」2020年2月5日発売。
20世紀傑作選②
武満徹:管弦楽曲集
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)NHK交響楽団
諏訪内晶子(ヴァイオリン)
Toru Takemitsu: Orchestral Works | Paavo Järvi & NHK Symphony Orchestra
ジャケット写真:操上和美
■品番 ハイブリッドディスク:SICC19045 ■発売日: 2020年2月5日
■定価: 定価¥3,200+税 ■特記事項: ハイブリッドディスク
■収録予定曲
武満徹 Toru Takemitsu (1930-1996)
1 弦楽のためのレクイエム(1957) 8:41
Requiem for Strings
2 ノスタルジアーーアンドレイ・タルコフスキーの追憶にーー(1987) 9:53
Nostalgia—In Memory of Andrei Takovskij
3 ハウ・スロー・ザ・ウィンド(1991) 13:32
How slow the Wind
4 遠い呼び声の彼方へ!(1980) 12:14
Far Calls. Coming, Far!
5 ア・ウェイ・ア・ローンII(1981) 15:21
A Way a Lone II
諏訪内晶子(ヴァイオリン)[2、4]
Akiko Suwanai, violin
NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
Paavo Järvi, conductor
[録音]2017年2月22日&23日、横浜みなとみらいホールにおける「N響横浜スペシャル」でのライヴ・レコーディング(1)
2016年9月14日&15日、サントリーホールでの 第1841回 定期公演 Bプログラムのライヴ・レコーディング(3、5)
2018年2月21日&22日、サントリーホールにおけるNHK交響楽団第1881回定期公演(Bプログラム)でのライヴ・レコーディング(2、4)(DSDレコーディング)
写真:NHK交響楽団
パーヴォ・ヤルヴィ、ついに武満徹を振る
武満の音楽の理解を助けてくれたのは、私が大好きなフランス音楽の演奏経験だった。いわゆる印象主義の作曲家の作品だ。だから武満の音楽語法は、自分にとって遠いものではなかった。そして、感覚に訴えかけてくるサウンドもそうだ。特に後期の作品のサウンドは、耳の感覚に溶け込んでくるかのようだ。こうした音楽は分析的で形式ばることも多いが、武満の音楽は、感覚的で色彩感が横溢している。それゆえ、私は彼の音楽に惹かれるのだ。
NHK交響楽団(以下N響)は武満作品の演奏経験が豊富で、私も彼らが武満の音楽に対して共感を抱いていることが一瞬にしてわかった。N響は武満の音楽への親和性を持っているーー「ア・ウェイ・ア・ローンII」のように、彼らが初めて弾く作品であっても。武満の音楽語法に同調する感覚。それはおそらく自分たちと同じ国の作曲家であること、そしてこれまでその音楽語法を学んできたからでもあるだろう。N響で武満の音楽を演奏すると、なぜかそういう感覚がある。それはパリ管弦楽団とフランス音楽を演奏したときと似ている。オーケストラの個々の奏者の深い部分で、自国の作曲家に対する直感的な理解があって、それまで弾いたことがない作品であっても、手になじむのだ。ーーパーヴォ・ヤルヴィ(ライナーノーツより)
■パーヴォ・ヤルヴィがNHK交響楽団の首席指揮者になって以来、実現を鶴首していたアルバムの登場です。ヤルヴィにとって武満徹作品集であるばかりでなく、初の日本人作曲家のレコーディングでもあります。
■2015年9月にN響首席指揮者に就任して以来、N響の持つドイツ音楽演奏の伝統と高い機能性を生かせるレパートリーを中心に幅広い作品を取り上げてきました。その中で異彩を放っているのが武満徹の作品で、当アルバムは2016~18年にかけて3つのプログラムで演奏された5曲の作品を1枚にコンパイルしたものです。初期の「弦楽のためのレクイエム」を除き、1980~90年代の作品で構成されています。エストニアで生まれ、殊に自国のアルヴォ・ペルトやスヴェン・トゥールなどの同時代の作曲家の作品を積極的に取り上げ、「現代音楽は怖くない」ことを世界各地で証明しているヤルヴィが、その独自の感性で捉えた武満徹感が披露されているのがこのアルバム随一の聴きどころの一つです。なお「弦楽のためのレクイエム」は、この演奏の直後に実施されたこのコンビによる初のヨーロッパ・ツアーでも取り上げられた演目、「ハウ・スロー・ザ・ウィンド」は2020年2月~3月に予定されている2度目のヨーロッパ・ツアーで取り上げられることになっている演目です。
■そのうち2曲はヴァイオリン独奏のための協奏曲的作品で、ソロをつとめるのはヤルヴィとの共演歴も長い諏訪内晶子です。諏訪内とN響は、2001年にシャルル・デュトワの指揮で「遠い呼び声の彼方へ!」を英デッカに録音しており、今回は17年ぶりの再録音となります。
■武満徹作品の演奏史を彩ってきたN響ですが、当アルバムの5曲については、放送録音からのソフト化を除けば、セッション録音では過去に「弦楽のためのレクイエム」が2種(1961年岩城宏之指揮のキング盤、2001年のデュトワ指揮のデッカ盤)、「遠い呼び声の彼方へ!」(2001年の諏訪内晶子、デュトワ指揮のデッカ盤)があるのみ。N響による武満作品のフル・アルバムも、1984年、東京文化会館における「作曲家の個展」でのライヴ盤(日本のCBSソニーから発売)くらいしかなく、その意味でも今回のアルバムは大きな注目を集めること必至です。
『演奏に際して、ヤルヴィは武満の後期作品と近現代のフランス音楽の近さを指摘しつつも、決してフランス音楽風には演奏しない(例えば、それは彼のメシアンの録音などと比べるとはっきりするだろう)。そして楽譜や資料にあたるだけではなく、武満の愛娘である眞樹と対談をおこなったりすることで、武満徹の人物像に触れようとしたり、共演したヴァイオリニストの諏訪内晶子、そしてこれまで何度となく武満作品を演奏してきたNHK交響楽団のメンバーたちの意見を尊重したりしながら、作品への理解を深めていったという。とにかく徹底して「武満を武満として理解しよう」と努めているのは、ヤルヴィがいつもベートーヴェンやマーラーに対しておこなっていることと同じである。伝統から学びつつも、オーセンティシティ(正当性)に立ち戻ることで、結果としてこれまでとは異なる演奏に辿り着いているのだ。』(小室敬幸、ライナーノーツより)
Photo: Takaki Kumada