山下和仁

生きながらにして伝説となる人がいる。89枚のアルバムを発表していることからもわかるように広大なレパートリーを有する山下和仁。ウィーン・ムジークフェライン大ホール、サンクトペテルブルグ・フィルハルモニア大ホール。イタリア・テアトロオリンピコ、テアトロレッジョ(オペラハウス)、ニューヨーク・リンカーンセンター、シカゴ・シンフォニーセンター・オーケストラホールなどでソロリサイタルしたほか、セルビアやスペイン、ポルトガル、ポーランド、スウェーデン、メキシコ、ベネズエラなどの世界各地で行われるジャンルの混交した大規模フェスティバルにも、クラシック・ギターの雄として、毎年のように招待されている。近年はロシアや南米での活動も増えており、2014年にブラジルツアーで熱狂的に迎えられた山下和仁は、翌年メキシコ・サルティーヨ国際ギターフェスティバルでも招待演奏、そのまま4年連続でペルーをおよびボリビアを訪問し、各地でフォルクロアも含めた音楽調査を行ったほか、スクレ大聖堂やクスコの世界遺産サクサイワマン遺跡および太陽神殿でも特別リサイタルを開催。

1961年長崎市に生まれ、父、山下亨に8歳よりギターを学ぶ。また作曲家の小船幸次郎に師事。15歳で全国コンクール(現:東京国際ギターコンクール)優勝、16歳でラミレス、アレッサンドリア、パリの世界三大国際ギターコンクールに、いずれも史上最年少優勝という快挙を成し遂げた。1980年発表の自身の編曲による〈展覧会の絵〉が大反響を得、以後〈火の鳥〉〈シェエラザート〉〈新世界より〉などオーケストラ用大曲をギター用に次々アレンジ、さらに「バッハ:無伴奏ヴァイオリン、チェロ、フルート、リュート組曲BWV995-1013(5CDs)」を全て編曲。かたわら「ソル:ギター曲全集(16CDs)」「ヴィラ=ロボス: 5つの前奏曲と12の練習曲」、「C=テデスコ: ゴヤによる24のカプリチョス、プラテーロとわたし(いずれも世界初録音)、3つのギター協奏曲」など、ギター本来のレパートリーも名演の誉れ高い。ソロ活動の他、L.スラトキン、R.フリューベック・デ・ブルゴスなどの世界的指揮者やオーケストラとも数々共演。また、ジャズ・ギタリストのラリー・コリエル、フルートのJ.ゴールウェイ、コントラバスのゲリー・カー、東京クヮルテットなどと共演。ヨーロッパ、南北アメリカ、アジア各地での公演も数多く、1984年トロント国際ギターフェスティヴァルでセンセーションを招いて以来、名声は国際的にもすでに不動。2004年に自身の子供たちと「山下和仁ファミリーカルテット・クインテット」を結成、長女(紅弓)、次女(愛陽)とのギターデュオでも世界各地で公演。

演奏活動の傍ら、雅楽および古楽の調査・研究をかさね、その範囲は国内のみならず、はるか大仏開眼式の昔にさかのぼる隣国・遠国のルーツをたどって、韓国・カンボジア・ヴェトナムにも及ぶ。2016年は20年に一度の春日大社「式年造替」でも演奏。国内外の同時代の作曲家、特にアジアの作曲家たちの新作委嘱初演にも意欲的で、献呈された作品は60曲を越えている。自身の作曲活動もあり2019年モスクワ公演でも披露。また新プロジェクトとしてCreative meeting with maestro Kazuhito Yamashitaをサンクト・ペテルブルグでスタート、2021名古屋しらかわホールでも開催。CD『黎明期の日本ギター曲集』で平成11年度文化庁芸術祭大賞を受賞。長崎大学工学部を経て経済学部卒業。

山下和仁オフィシャルウェブサイト: https://kazuhitoyamashita.com