祝・サントリー音楽賞受賞!ベートーヴェン生誕250年記念リリースされるシリーズ第3作は、大作「ハンマークラヴィーア」を含む後期の個性派ソナタ、12月16日発売
祝・サントリー音楽賞受賞!
しなやかな身ぶりで、鋼のように構築されていく音楽のアーキテクト。
ベートーヴェン生誕250年記念リリースされるシリーズ第3作は
大作「ハンマークラヴィーア」を含む後期の個性派ソナタ。
ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ集③
ハンマークラヴィーア&告別
河村 尚子
Beethoven Piano Sonatas Vol. 3:
Hammerklavier & Les Adieux | Hisako Kawamura
■品番 ハイブリッドディスク:SICC 19052 ■発売日: 2020年12月16日
■定価: ¥3,000+税 ハイブリッドディスク(SA-CD層は2ch)
■配信:通常配信のほかDSD、ハイレゾ24bit96kHz ■レーベル: RCA Red Seal
■収録曲
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
Ludwig van Beethoven (1770-1827)
ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 作品81a 「告別」 15:57
Piano Sonata No. 26 in E-flat Major, Op. 81a “Les Adieux”
Sonate Es-dur ・ en mi bémol majeur
1 I. 告別 アダージョーーアレグロ 6:47
Das Lebewohl (Les Adieux) ・ The Farewell
Adagio - Allegro
2 II. 不在 アンダンテ・エスプレッシーヴォ 歩くような律動で、でも十分に表情をつけて 3:12
Abwesenheit (L’Absence) ・ The Absence
Andante espressivo. In gehender Bewegung, doch mit Ausdruck
3 III. 再会 ヴィヴァチッシマメンテ 最高に生き生きとしたテンポ感で 5:57
Das Wiedersehn (Le Retour) ・ The Return
Vivacissimamente. Im lebhaftesten Zeitmaße – Poco Andante - Tempo I
ピアノ・ソナタ 第27番 ホ短調 作品90 13:33
Piano Sonata No. 27 in E Minor, Op. 90
Sonate e-moll ・ en mi mineur
4 I. 速く、そして終始感情と表情とをもって 5:32
Mit Lebhaftigkeit und durchaus mit Empfindung und Ausdruck
5 II. 速すぎないように、そしてじゅうぶん歌うように演奏すること 8:00
Nicht zu geschwind und sehr singbar vorgetragen
ピアノ・ソナタ 第29番 変ロ長調 作品106 「ハンマークラヴィーア」 42:56
Piano Sonata No. 29 in B-flat Major, Op. 106 “Hammerklavier”
Sonate B-dur “Große Sonate für das Hammerklavier” ・ en si bémol majeur “Hammerklavier”
6 I. アレグロ 10:58
Allegro
7 II. スケルツォ:アッサイ・ヴィヴァーチェーープレストーープレスティッシモーーテンポ・プリモ 2:25
Scherzo: Assai vivace – Presto – Prestissimo - Tempo I
8 III. アダージョ・ソステヌート アッパッショナート・エ・コン・モルト・センティメント 16:42
Adagio sostenuto. Appassionato e con molto sentimento
9 IV. ラルゴーーアレグロ・リゾルート 12:40
Largo - Allegro risoluto
Total Playing Time 72:28
河村尚子 (ピアノ) [ベーゼンドルファー280VC]
Hisako Kawamura, piano / Bösendorfer 280VC
[録音] 2020年7月19~21日、ブレーメン、ブレーメン放送ゼンデザール
[プロデューサー] フィリップ・ネーデル(ベルリンb-sharpミュージック&メディア・ソリューションズ)
[エンジニア] ミヒャエル・ブラマン
[調律] ゲルト・フィンケンシュタイン
■河村尚子が2年がかりで取り組んだ「ベートーヴェン・プロジェクト」での実り多い成果を刻み込んだ3枚目にして完結編となるアルバムです。河村のベートーヴェンは「新しいベートーヴェン像が目の前で確立されているような感懐を覚える決定的演奏」と絶賛されており、この作曲家に積み重ねられてきた伝説のヴェールを剥ぎ取り脱神話化を図るかのような河村のアプローチが全く新しい解釈として高く評価されています。
■32曲のソナタ中最大の規模と複雑さで知られる第29番「ハンマークラヴィーア」のほか、後期の入り口にあって独特の深みが魅力的な第27番、それに各楽章に「告別」「不在」「再会」という表題が付された第26番の3曲。あらゆる音符がしなやかに息づき、気品ある歌心が聴く者の心を捉えます。サントリー音楽賞やCDショップ大賞を受賞するなど、評価を急速に高めつつある河村ならではの密度の濃い演奏は、ベートーヴェン・イヤーのトリを飾る大きな話題になること必至です。
■この録音に寄せて
2020年は我々世界中の人間にとって様々な意味で忘れ難き年となることだろう。COVID-19。ひどい時には自宅待機を強いられ、他人と会うことすら出来なかった。あっという間に経済が循環しなくなり、スポーツや芸術を始め、あらゆるイベントを中止せざるを得ない状況となってしまった。4年に一度行われる世界的なスポーツの祭典であるオリンピックまでもが開催されなかったのだ。 その期間中、ホールに聴き手がいなくても成立するCD録音やオンライン公開のための録画が音楽家の限られた活動の場所となった。今、みなさんが手にとっておられるこのCDもそのようにして制作された一枚である。録音セッション自体は1年前から予定されていたものの、ドイツで自宅待機が徐々に緩和された7月中旬に、もともと放送局のホールであったブレーメンのゼンデザールで3日間に渡って録音が行われた。
新型コロナウィルスの影響のせいか、これまでの2枚のベートーヴェンの録音の時に常宿としていたホールのすぐ側のホテルが閉館してしまっていた。幸いにも代わりの宿泊施設が見つかり、毎朝晩、自転車で15 分の道のりを通った。ちょうど大変気持ちの良い季節だったので、心身のリフレッシュともなった。
今回の録音も、2008年の「夜想(ノットゥルノ)~ショパンの世界」の時から一貫してお世話になっている録音チームーーピアノ技術師やトーンエンジニアが変わった時もあったがーーが担当してくれた。ベルリンのb-sharp社のトーンマイスターのフィリップ・ネーデル、トーンエンジニアのミヒャエル・ブラマン、そしてピアノ技術師のゲルト・フィンケンシュタインに3日間ずっと演奏を聴いてもらうことになった。彼らは皆ドイツ人。性格が異なるにしても、良い結果を出したい気持ちは皆一緒だ。3日間背筋を伸ばして椅子に座り、音楽を聴いて、ただコーヒーを啜るだけではない。私の演奏を聴いては、これまでの経験とそれぞれの趣向を生かした意見や疑問をビシバシ私に投げかけてくる。これも12年間一緒にCDを作り上げてきた過程で根付いた信頼と愛情のおかげだが、12年前の未熟な私では、このドイツ人勢の「攻撃」に対応できなかったことも確かだ。それぞれの意見を尊重し合い、最終的には演奏者の私自身が納得いく形を作ったつもりではあるが、みなさんに聴いて頂いているこのCDは、私一人の音楽的解釈だけではこのような結果に至らなかったということをご理解いただきたい。CDのカバーには演奏者である私一人しか写っていないが、縁の下の力持ちが多々潜んでいるということなのである。そのようにして人間は社会で人々に揉まれ、引き伸ばされ、形成されて、変化していくのだ。こうした過程を経て、現時点の私があるのだ、ということにあらためて感じ入り、私に力を貸してくださったすべての方々に感謝するばかりである。
2020年10月、バンベルクにて
河村尚子