巨匠セルとクリーヴランド管弦楽団が到達した20世紀オーケストラ演奏の極点。~タワーレコード x "Sony Classical"究極のSA-CDハイブリッド・コレクション第2回発売 ブラームス:交響曲全集/ジョージ・セル
タワーレコード x "Sony Classical"究極のSA-CDハイブリッド・コレクション
ブラームス:交響曲全集/ジョージ・セル
Brahms: Complete Symphonies / George Szell
■品番:SICC10240~3 ■ハイブリッドディスク4枚組|SA‐CD層は2ch
■発売日: 2017年6月21日 ■定価: ¥8,400+税
■音匠レーベル使用
■完全生産限定盤。通常ジュエルケース4枚をスリップケースに封入。別冊解説書付き。音匠レーベル。
■レーベル: Sony Classical ■初発売:2017/6/21 ■日本独自企画 ・完全生産限定 ■世界初SA-CDハイブリッド化
[収録曲]
ブラームス
DISC1
1.交響曲 第1番 ハ短調 作品68
2.ハイドンの主題による変奏曲 作品56a
DISC2
3.交響曲 第2番 ニ長調 作品73
4.交響曲 第3番 ヘ長調 作品90
DISC3
5.交響曲 第4番 ホ短調 作品98
6.大学祝典序曲 作品80
7.悲劇的序曲 作品81
DISC4
8.交響曲 第1番 ハ短調 作品68 [特別収録]
クリーヴランド管弦楽団
指揮:ジョージ・セル
[録音]1966年10月7日(1)、1964年10月24日(2)、1967年1月6日(3)、1964年10月16日&17日(4)、1966年4月8日&9日(5)、1966年10月28日(6、7)、1957年3月1日&2日(8)、クリーヴランド、セヴェランス・ホール ADD/STEREO
[初出]
交響曲全集 D3S758(3枚組)
交響曲第3番&ハイドンの主題による変奏曲 MS-6685 (1965年)
ハイドンの主題による変奏曲、大学祝典序曲、悲劇的序曲 MS6955
[日本盤初出]
交響曲全集、ハイドンの主題による変奏曲、大学祝典序曲、悲劇的序曲 CBSソニー SONS30001~4(4枚組) (1968年8月)
交響曲第3番&ハイドンの主題による変奏曲 日本コロムビア OS467 (1965年)
交響曲第4番&大学祝典序曲 日本コロムビア OS985 (1968年4月)
交響曲第1番(1957年録音) 日本コロムビア BOM1022[モノラル盤](1958年)、WS6023[ステレオ盤](1964年)
[プロデューサー] ポール・マイヤース、トーマス・フロスト
[アナログ・トランスファー、リミックス、リマスタリング・エンジニア] アンドレアス・K・マイヤー(マイヤーメディアLLC)
[アートワーク]
タスキ表に全集のアメリカ初出盤ボックスの表1を使用
DISC1~3のプラケースにはCBSソニーの単売時のジャケット・デザインを使用
DISC4のプラケースにはアメリカEPIC初出盤のジャケット・デザインを使用
[ライナーノーツ]
・ジョージ・セル・スペシャル・インタビュー(1970年来日時の「レコード芸術」誌掲載分)
・クリーヴランド管弦楽団のメンバーは語る(1970年来日時の「レコード芸術」誌掲載分)
・ルイス・レイン・インタビュー(1970年来日時の「レコード芸術」誌掲載分)
・木幡一誠「セルのブラームス」
・村田武雄「ジョージ・セルの音楽性について」(1968年日本盤初出時の解説)
・ジョージ・セル&クリーヴランド管弦楽団によるブラームス作品演奏リスト
・曲目解説 その他を予定
巨匠セルとクリーヴランド管弦楽団が到達した20世紀オーケストラ演奏の極点。
■格調高く、ブラームスの古典性を浮き彫りに
ジョージ・セルとクリーヴランド管弦楽団が文字通り絶頂期にあった1964~67年に収録されたブラームスの交響曲全4曲と管弦楽曲3曲です。1964年に交響曲第3番とハイドン変奏曲が録音されたあと、1966/67年シーズンで残りの作品が一気に録音されました。セルならではの厳格で折り目正しい音楽観を反映し、全編にわたって格調の高さが保たれ、主観的感情がむき出しにならず、ブラームスの古典性が浮き彫りにされています。しかも細部の彫琢ぶりはすさまじく、あらゆるフレーズ、リズム、パート間のバランスが完璧に統御され、透明感のある響きと立体的・論理的な構築性を獲得しているさまはまさに壮観。それぞれの作品の性格も明快に描き分けられており、中でもセルの演奏に顕著な明晰なキャラクター付けとは縁遠い音楽のように思える第4番のふっくらとした憂愁に彩られた響きは、数多いこの曲の名盤の中でも格別の味わいといえるでしょう。セルらしいオーケストラ・パートの増強・改訂も19世紀生まれの指揮者ならではの「匠の技」であり、今や二度と再現することのできない20世紀オーケストラ演奏芸術の一つの極点がここにあります。
■セル&クリーヴランド管後期の音楽の深まりを刻印
録音データを見ると、1957年から1964年にかけて7年がかりベートーヴェンの交響曲全曲録音を完成させ、すぐさまこのブラームスの交響曲全集の制作が開始されたことがわかります。ベートーヴェン全集の最後となった第2番(1964年10月23日録音)が録音されたのと同じ月に、ブラームス全集の第1弾となる交響曲第3番とハイドン変奏曲が録音されているのはまさにそれを象徴しているといえるでしょう(交響曲第3番:10月16日&17日、ハイドン変奏曲:10月24日[ベートーヴェンの第2番の翌日])。それゆえに、最初はEPICレーベルで発売が開始されたベートーヴェン全集とは異なり、ブラームスは当初からコロンビア・レーベルでの発売でした。 1960年代中盤は、セルが1946年にクリーヴランド管に着任してからほぼ20年が経ち、指揮者とオーケストラとの間の結びつきがこれ以上ないほどにさらに強く深まっていった時期にあたります。ブラームス全集完成の後は、ハイドンのロンドン交響曲集の続編(第93番、第95番~第98番)、モーツァルト「ポストホルン・セレナード」、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、プロコフィエフ「キージェ中尉」とコダーイ「ハーリ・ヤーノシュ」のほか、コロンビアへの最後の録音となった1969年10月のブルックナーの交響曲第8番にいたるまで、このコンビの極めつけともいえる名盤が続々と録音されていることからも彼らの充実ぶりが見て取れます。この数年間はまた、ギレリスとのベートーヴェン「ピアノ協奏曲全集」(1968年5月)、オイストラフとのブラームスのヴァイオリン協奏曲や二重協奏曲(1969年5月)をエンジェル=EMIに録音するなど、コロンビアにおけるセル&クリーヴランド管の独占体制が終わりを告げ、時代の変化を予感させる時期でもありました(このコンビの最後の録音はエンジエル=EMIへの1970年4月のシューベルト「ザ・グレイト」とドヴォルザークの交響曲第8番でした)。
■全集として構想されたレコーディング・プラン
セルのブラームス全集で最初に発売された1964年録音の交響曲第3番とハイドン変奏曲でしたが、残りの交響曲3曲は交響曲第3番と合わせて1967年に3枚組LPの「交響曲全集」として一気に発売されました。一方ハイドン変奏曲は悲劇的・大学祝典の2曲の序曲と合わせて同じ1967年に発売されており、ハリネズミを連れて散歩するブラームスの有名なシルエットをあしらったそのLPの洒落たデザインは、1977年に「ジョージ・セル&クリーヴランドの芸術」(1,300円の廉価盤シリーズ)で交響曲全集と管弦楽曲が単独で再発売された時にジャケット・デザインに採用され、日本の音楽ファンには馴染みのものとなりました。日本では交響曲第3番とハイドン変奏曲、第4番と大学祝典序曲が日本コロムビアから発売され、それ以外の交響曲2曲と悲劇的序曲は、創立間もないCBSソニーから1968年8月にLP4枚組の「ブラームス:交響曲全集」(品番SONS30001~4)として発売されたのが最初で、世界に先駆ける形で交響曲以外の管弦楽曲も入れた形でのボックスセット化発売が実現しています。
日本初出盤の全集のジャケット
交響曲第3番&ハイドン変奏曲のアメリカ初出盤 (プラケース内に使用予定)
1977年の「セル/クリーヴランドの芸術1300」で再発された際のジャケット。
■アナログ完成期の鮮明な「360サウンド」
このブラームス全集では、「360サウンド」を標榜した、コロンビアのアナログ完成期のステレオ録音ならではの左右に大きく広がる鮮烈なサウンドがセルとクリーヴランドの豪快かつ緻密な演奏を見事に捉えきっています。収録場所は1929年に完成し、1931年に開館したクリーヴランド管の本拠地であるセヴェランス・ホール。1844席を擁する名ホールで、ギリシャ新古典様式の外観とアールデコを思わせる優美な内観で、「アメリカで最も美しいコンサートホール」と称されてきました。1958年にセルのイニシアチブで全面的な改修が行なわれ、セルが施行する各パートの明晰さとヨーロッパ的ともいうべき暖かみのある適度な残響感を備え、録音にも適した会場となりました。セル&クリーヴランド管のコロンビア/EPICへのレコーディングは全てここで行なわれているため、演奏者のみならず、プロデューサーのポール・マイヤースをはじめとするレコーディング・スタッフ双方が会場の音響特性を知り尽くした状況下で進められた理想的なセッションでした。
■特別収録=1957年録音の交響曲第1番
特別収録としてとして、全集とは別に1957年3月にステレオ録音され、当初EPICレーベルで発売された交響曲第1番をDISC4に収録しています。1957年はコロンビア・レーベルがステレオ録音を本格的に開始した年であり、EPICレーベルとはいえコロンビアのスタッフが収録に当たっており、コロンビアの最初期のステレオ録音として重要な意味合いを持っています。EPICレーベルが標榜したSTEREORAMAというキャッチフレーズで知られる最初期のステレオ録音ながら、すでにこの時点で確固たるものになっていたセル&クリーヴランド管の演奏の特質を余すところなく捉えています。また1958年に改修が行なわれる前のセヴェランス・ホールの音響を、1966年の再録音と比較することも可能です。
■セルのブラームス録音変遷
セルによるブラームス作品の最初の録音はアコースティック時代にベルリン国立歌劇場管を振った交響曲第2番(独パルロフォン、1925年、未復刻)と思われます。電気録音時代には、交響曲や管弦楽曲の録音は手掛けていませんが、シュナーベルと共演したピアノ協奏曲第1番(ロンドン・フィル、HMV、1938年)が高い評価を得ていました。 LP時代になってからは、モノラル初期にアムステルダム・コンセルトヘボウ管との交響曲第3番(1951年)をデッカに録音していますが、それ以外の交響曲・管弦楽曲は全てEPIC/コロンビアへの録音です。 またセルはブラームスのピアノ協奏曲の録音を複数残していることでも知られ、しかもその多くは名盤として現在に聴き継がれています。クリーヴランド管ではステレオで2組(フライシャー:1958、1962年、ゼルキン:1968、1966年)あるほか、第1番にはゼルキンとのモノラル録音(1952年)も残しています。他レーベルでは上述のSP時代のシュナーベル盤のほか、カーゾン、ロンドン響との第1番のステレオ録音(1962年、デッカ)がこれまた名盤として知られています。
■CD発売とリマスターについて
セルのブラームス全集が初めてCD化されたのはCD初期の1984年11月のことで、交響曲4曲と管弦楽曲3曲が収められた4枚組のボックスとして日本で発売されました(CBSソニー 00DC203~6)。CDという新しいメディアをクラシック・ファンに普及させるきっかけとなったブルーノ・ワルター/コロンビア響の録音のCD化に続くCBSソニーの重要なプロジェクトの一つであり、当時CBSソニーの初期CDは、アナログ録音のCD化の場合は、いずれも「NEW REMIX MASTER」と銘打たれていることからもわかるように、日本からの要請で、アメリカ本国でオリジナルのアナログ・マルチ・マスターから新たにステレオ用にリミックスが行なわれた上で、デジタル化された旨が明記されています。LPからCDへの転換期であったため、このCD用の「ニュー・リミックス・マスター」が翌年4月のLP再発シリーズのプレスにも使われました。その後何度か再発売されていますが、いずれも基本的にはこの初期の84年のデジタル・マスターを使用していました。
1984年発売の国内盤CD 海外で初めてCD化されたのはおそらく1980年代半ば~後半のGREAT PERFORMANCESのシリーズでの単売4枚(新聞の第1面を想起させる統一デザインで知られた同名のLPのシリーズのCD化)であると思われ、その後間もなくESSENTIAL CLASSICSのシリーズでオーマンディ指揮のハンガリー舞曲5曲を加え、カップリングを変えて3枚で再発売されています。これらはいずれも日本盤での発売用にデジタル・リマスターされたマスターを用いていると思われます。その後2006年にGREAT PERFORMANCESシリーズが全面的にリニューアルされた際に、交響曲第1番とハイドン変奏曲がDSDリマスターで再発売されています。 それゆえ今回は33年ぶりのニュー・リミックス&DSDリマスターということになります(交響曲第1番とハイドン変奏曲は11年ぶり)。リマスターを手掛けるのはアンドレアス・K・マイヤーです。
■セルのブラームスについての絶賛の数々
「ブラームスはセルの厳格で折り目正しい音楽観と、一面で相通じる作曲家である。主観的感情がむき出しにならず、古典的格調が保たれているのは、セルに一貫した演奏スタイルであるとともに、ブラームスの音楽的本領でもある。ベートーヴェンのシンフォニズムの直系ともいうべき第1交響曲はその意味でセルにとって組みとめやすい作品である。ロマン派的に流れた演奏の多いなかで、ブラームスの古典性を浮き彫りにした名演として忘れ難い。」(相澤昭八郎)(『レコード芸術別冊・クラシック・レコード・ブックVOL.1交響曲編』、1985年)
「絶対音楽としての交響曲の様式美を、純粋に追求したセルならではの、澄みわたった世界が広がる。クリーヴランド管の響きも透明で、木管のバランスなどは調和の極みにあるためほとんどオルガンに近い。また弦も控えめなヴィブラートですっきりした線を描いてゆく。ソナタ楽章の形式感が素晴らしく、とくに展開部で、音の構造的魅力を前面に引き出すことにより、聴き手の心を捉える手腕はセルならではのものだ。ウィーンの伝統を引き継ぎながら、純音楽的な洗練度を最高の域にまで導いた代表的名演の一つ」(西村朗) (『レコード芸術別冊・クラシック・レコード・ブックVOL.1交響曲編』、1985年)
「セルのブラームスほど堅固な古典的構築性とロマン的な情感の表出とが高いレヴェルで融合した演奏も稀だといえよう。このコンビならではの緻密で厳格なアンサンブルを土台に、ブラームスの交響曲の持つ極めて論理的な構成と、内面的な感情の細かい綾の表現とを、一体的なものとして表している。この演奏を聴くとブラームスの音楽の古典性とロマン性とが表裏一体のものであったことがよくわかる。」(寺西基之)(『レコード芸術別冊・クラシック名盤大全VOL.1交響曲編』、1998年)