本日6月8日は82歳のバースデー!全国6都市をまわったジャパン・ツアー最終日のライヴ・レポート

PHOTO:土居政則/Masanori Doi
洗練を極めたサウンドとソウルフルな歌声で “AORの帝王” と称されるボズ・スキャッグス。
1970年代後半、US本国ではAdult Contemporaryと呼ばれていた音楽ジャンルが、日本ではAOR(Adult Oriented Rockの略)という和製英語となり、「洗練された、都会的でオシャレな音楽」として独自の進化を遂げ、現在に至るまで親しまれてきた。その起源に関しては諸説あるが、1976年に発表されたボズ・スキャッグスのアルバム『シルク・ディグリーズ』が大きな影響を与えていることに異を唱える音楽ファンはいないだろう。
【全国6都市をまわったジャパン・ツアーが無事終了!】
1978年の初来日からおよそ半世紀。5月22日からスタートしたジャパン・ツアー『ONE FOR THE ROAD』は、全国6都市(全8公演)では、『シルク・ディグリーズ』を中心に往年のヒット曲から、ボズが愛してやまないブルースやロックンロールのカバー曲までたっぷりと披露してくれた。80歳を超えてもまったく年齢を感じさせない凛とした佇まいで、艶やかな歌声を聴かせてくれたボズに対して、来場したファンから絶賛の声が相次いだ。(※ボズは1944年6月8日生まれ。本日6月8日で満82歳を迎える。)
ここでは、6月5日(金)の最終公演(東京・Kanadevia Hall)の模様を、これまでにボズ・スキャッグスをはじめ多くのAOR作品の再発に携わってきた音楽ライター:金澤寿和さんによるレポートをお届けします。
-----------------
2年ぶりの来日。AOR名盤にして原点とも謳われる代表作『シルク・ディグリーズ』50周年。そして自身が日本公演終了直後に82歳を迎える(6月8日が誕生日)。そんな多くの話題を呼んだボズ・スキャッグス『ONE FOR THE ROAD』ツアーの最終日を観た。
ほぼ定刻通りにライトダウンし、名手ウィリー・ウィークス(b)をはじめとするバンド・メンバー6人がそろって登場。主力は前回公演と同じ顔ぶれながら、ギターはジョン・ヘリントン、ドラムがジェイムソン・ロスにスイッチしている。ただしヘリントンはスティーリー・ダン及びドナルド・フェイゲンのツアーやアルバムに参加し、ボズとはデュークス・オブ・セプテンバー(ボズ、D・フェイゲン、マイケル・マクドナルドのライヴ・プロジェクト)でも一緒にプレイした関係。ジェイムソンはスナーキー・パピーに関わる若手である。
そして最後に笑みを湛えたボズが登場。彼がギターを抱えるや否やカウントが掛かり、『シルク・ディグリーズ』所収、「なんて言えばいいんだろう(What Can I Say)」でリラックスした幕開けとなった。2曲目で早くも人気曲「ジョジョ」が飛び出し、イントロだけでヤンヤの喝采。頭上ではミラーボールが回り、思わずあの時代に引き戻される。そう、オーディエンスの多くはシニア層の紳士淑女。それを分かっているのか、アレンジはオリジナルにほぼ忠実だ。でも今回驚いたのがバック・コーラス。演奏陣3人の兼任なのだが、前回より明らかに滑らかさが増している。しかも誰かがファルセットでハモっているのか、女性がいるような空耳も。コーラス新顔はジェイムソンだけだが、ヴォーカルにも定評がある人なので貢献度は高そうだ。

PHOTO:土居政則/Masanori Doi
バンドの招集は、『RHYTHM REVIEW』と銘打たれた昨年のUSツアー以来半年ぶり。でもこのジャパン・ツアーも、東京初日から各地を回って8公演目。だからボズの歌もバンドの演奏も、興が乗ってきたのがよく分かる。しかしそこで一転、ボズがギターを持ち替え、近年の彼が傾倒するブルース・カヴァーから、ボビー・ブランド「ザ・フィーリング・イズ・ゴーン」をプレイ。身を乗り出す男性ファンがいる一方で、日本では少し好みが割れそうだ。ここでフィーチャーされたのはエリック・クリスタルのサックス。彼は今のバンドのキー・パーソン的存在で、サックスのみならずキーボード、ギター、そして鍵盤ハーモニカとマルチ・プレイヤーぶりを発揮、名脇役として活躍した。
ボズがアコースティック・ギターを抱えると、ステージはコク深いバラード「スロー・ダンサー」、そして激シブなリズム&ブルース回帰作『カム・オン・ホーム』(97年)の「ダウン・ザ・ドレイン」へと進む。ここでようやくヘリントンにソロ・パートが与えられ、彼のジャズ寄りの知的プレイが味わえた。再び『シルク・ディグリーズ』から2曲、特に名曲「ハーバー・ライツ」では、エレピのイントロ、“Son of Tokyo Rose”と歌い出す場面、1コーラス終了後、そして後半サンバに変わっての各ソロと、その都度熱いリアクションが返ってくる。ここが中盤のハイライト。
続いて『ディグ』(01年)からブルース・ロック「コール・ザット・ラヴ」。その流れでブルージーなナンバーを続け、そのまま大定番「ローン・ミー・ア・ダイム」へとなだれ込む。ボズ自身、ここぞ!とばかりにエモいギター・ソロを弾き倒し、自身のルーツと思い入れの深さをアピール。メンバーのアドリブの後ろでレゲエのビートを挟んだのが新鮮だった。そして万雷の拍手が降り注ぐ中、ドラムが軽快な16ビートを刻み始め、お馴染み「ロウダウン」をサラリと。続けてドライヴ感溢れる「ブレイクダウン・デッド・アヘッド」が歌われ、ここで一旦幕となる。

PHOTO:土居政則/Masanori Doi
ピアノでシットリ始まったアンコールは、まず「ウィアー・オール・アローン」で。ギターを持たず、マイク・スタンドで丁寧に歌い上げるボズは、実は日本でしか見ることができない。更にツアー・タイトルの引用元と思しき「リド・シャッフル」で、アリーナ席はほぼ総立ちに。再びステージを降り3度目の登場で、珍しく「チャック・ベリーの曲をやるよ」と曲紹介。テナーを抱えたエリックが大御所の十八番ダック・ウォークをキメて大いに盛り上げる。そして最後は「もう1曲だけ演るよ」と、『シルク・ディグリーズ』から7曲目となる「ジョージア」を。前回も同作から数曲歌ったので、今ツアーが特別だったワケではないが、USツアーに比べ、女性ファンやAOR好きが集まる日本の客層を意識したのは確か。彼は日本に於ける自身のポジション、何を期待されているかをシッカリ認識し、これに応えるセットを用意してくれた。アンコールで少しはにかみながら「東京へ戻って来られて嬉しかった。ありがとう」と語ったのは、本心からだったに違いない。
年齢を重ねただけに、多少キーが下がっていたりはするのだろうが、そもそもこの歳でココまでシルキーに歌えること自体が、もはやミラクル。スレンダーな立ち姿、スマートな振る舞いを含め、今もダンディなボズがそこにいた。“コレが最後か!?”と言われつつ、まだまだ今後に期待させてくれるパフォーマンスだった。
(文:金澤寿和 https://lightmellow.livedoor.biz/)
BOZ SCAGGS - ONE FOR THE ROAD
6月5日(金)セットリスト(東京・Kanadevia Hall)
1. What Can I Say*
2. Jojo**
3. The Feeling Is Gone (Bobby “Blue” Bland cover)
4. Slow Dancer
5. Down The Drain
6. It's Over*
7. Harbor Lights*
8. Call That Love
9. Thanks to You
10. Radiator 110
11. Somebody Loan Me a Dime (Fenton Robinson cover)
12. Lowdown*
13. Breakdown Dead Ahead**
―アンコール―
14. We're All Alone*
15. Lido Shuffle*
―アンコール2―
16. You Never Can Tell (Chuck Berry cover)
17. Georgia*
*1,6,7,12,14,15,17:アルバム『シルク・ディグリーズ』に収録
**2,13:アルバム『ミドル・マン』に収録
〈メンバー〉
Boz Scaggs – Vocals/Guitar
Willie Weeks - Bass
Jon Herington - Guitar
Jamison Ross - Drums/Vocals
Michael Logan Sr - Keys/Vocals
Eric Crystal - Sax/Keys
Branlie Mejias - Percussion/Vocals
〈公演日程〉
BOZ SCAGGS - ONE FOR THE ROAD
【東京】 2026/5/22(金)SGCホール有明
【仙台】 5/24(日)東北大学百周年記念会館 川内萩ホール
【名古屋】 5/26(火)岡谷鋼機名古屋公会堂
【福岡】 5/28(木)福岡サンパレス ホテル&ホール
【広島】 5/30(土)広島上野学園ホール
【大阪】 6/1(月)グランキューブ大阪
【東京】 6/4(木)、5(金)Kanadevia Hall (TOKYO DOME CITY HALL)
●企画・招聘・制作:ウドー音楽事務所
https://udo.jp/concert/BozScaggs26
写真は5月22日撮影(写真:土居政則/Masanori Doi)
-----------------


【リリース50周年!名盤『シルク・ディグリーズ』と『ミドル・マン』、好評発売中】
ボズ・スキャッグスの来日公演を記念して、『シルク・ディグリーズ』(1976年作品)と、同じくAORシーンを代表する傑作と名高い『ミドル・マン』(1980年作品)が、〈日本独自企画〉のSA-CDハイブリッド盤/7インチ紙ジャケ仕様で5月27日に発売された。これらの商品には、2023年にリマスタリングされた最新マスター音源を採用(SA-CD層は24bit/192kHz)。滑らかで自然な空気感をまとったサウンドは、AOR名盤に新たな発見と感動をもたらすだろう。(※本商品は通常のCDプレーヤーでも再生可能。)
◆これらの商品の詳細:
https://www.110107.com/BOZ_AOR50/
◆関連記事note:シティポップ・リスナーが押さえておきたいAORの名曲/名盤
https://note.com/smjintermusic/n/n712621541d8c
-----------------
【WEBサイトなどリンク】
・otonano特設ページ(日本語):https://www.110107.com/BOZ_AOR50/
・公式ページ(英語):https://bozscaggs.com/
・ソニーミュージック公式(日本語):https://www.sonymusic.co.jp/artist/BozScaggs/
・ウドー音楽事務所:https://www.udo.jp/shows/BozScaggs26