ボブ・ディラン 2014年4月1日 Zepp DiverCity第二夜ライヴレポート by菅野ヘッケル
2014.04.02
INFO
見逃すな、この奇跡。世界がうらやむ日本限定特別公演ZEPPツアー!
東京2日目4/1、ZEPP DiverCity。本日初日と比べて1曲差し替え!今日も絶好調。2012年の最新オリジナルアルバム『テンペスト』収録曲9曲のうち6曲も演奏。現役バリバリのスタンスです!しかし曲は進化しつづける、全く原曲のイメージをたたき壊し、新しいものを創造してるかのような・・・。
バンド全員グレーの揃いのスーツでビシっと決めステージは暗く、場末のバーで演奏してるジャズバンドかのような雰囲気でディランは怪しい奴らを仕切る、元締め的なマフィアのボスか???怪しい…怪しすぎる。。
最後にバンドのメンバーとともに並んでディランが会場を見まわす、決して礼をするわけではなく、ただただ睨み付けるかのような。いつもの「ドヤ顔」、最高でした。バンドの皆さんも一緒になって、ドヤ顔。で、さっとはける。ん~カッコいい!
写真があるといいのですが、今回もライヴ写真撮らせてくれないんですよ。。。残念。。
菅野ヘッケルさんからの第二夜ライヴレポートです!!
【ボブ・ディラン、2014年4月1日Zepp DiverCity2日目ライヴ・レポート】
すごいー! 初日の興奮と驚きを抑えて、2日目の今夜はすこし冷静になろうとしたが、そんなことはできなかった。
午後7時ジャストに場内の照明が落とされ、暗闇のステージにスチュ・キンボールがアコースティックギターで何かのリフを弾きながら登場。続いてほかのメンバーたちも所定の位置に着く。最後にボブが現れ、ステージ中央のマイクスタンドの前に立ち、「シングス・ハヴ・チェンジド」を歌い始める。ステージに薄暗い照明が点される。ボブはグレーっぽいオフホワイトのスーツに白いスペイン帽をかぶっている。もちろんズボンのサイドには黒いストライプが入っている。靴は昨夜とおなじ黒と白のコンビ。バンドメンバーは昨夜とおなじグレーのスーツ。ぼくの席の近くにいたファンが「かっこいいー!」と叫んだ。たしかにクールに決まっている。まるでシカゴからやってきたギャング団のようにも見える。もちろん親分はボブだ。昨夜は気づかなかったが、ドラムセットの前に1枚の鏡が置かれている。2年ほど前のツアーからステージ上に客席に向けて鏡が何枚も、多いときは7枚も、置かれるようになっている。一説には風水によるものと言われているが、真偽のほどは定かでない。これまた気づかなかったが、ピアノの近くにオスカー像のレプリカもやはり飾られていた。
2曲目は「シー・ビロングズ・トゥ・ミー」。ヘヴィーなビートに乗せてボブはアップシング(本来の音よりも1オクターブ高音)を取り入れて歌う。2002~3年頃、ほとんどの歌をアップシングで歌ったので一部のファンが非難の声を上げたものだが、今夜はちがう。じつに効果的な歌い方だ。それにしてもボブのヴォーカルはいい。長い休み明けのツアーでは、いつもかなり声の調子がいいのだが、今回は特別調子がいいようだ。低音も高音も、シャウトもささやきも、みごとなまでにコントロールされている。押しつぶれたヒキガエル声はどこかに飛んで行ってしまったのだろう。
「ビヨンド・ヒア・ライズ・ナッシン」で「愛しているよ、可愛い人/愛する人はおまえだけ」と言われたと思うと、つぎは「ホワット・グッド・アム・アイ」。優しいヴォーカルで「わたしにどんないいところがあるのだろうか?」と直接訊かれているような気分になる。もちろん、すべてを許してしまう。4曲目は昨夜とちがって「ウェイティング・フォー・ユー」が歌われた。2002年の映画『ヤー・ヤー・シスターズ』のサウンドトラックにしか入っていないので、知らないファンもいるかもしれない。2005年に2度ライヴで歌ったことがあったが、昨年10月からのヨーロッパツアーではほぼ毎日歌っていた。ボブのピアノ、チャーリーのギター、ドニーのスティールによる三重奏は優雅な宮廷ワルツのように聞こえた。「ブルーにこんがらがって」と「デュケーン・ホイッスル」ではボブとチャーリーが掛け合いでミニジャムのような要素を聞かせてくれた。前半を締めくくるのは「ペイ・イン・ブラッド」と「ラヴ・シック」。マイクスタンドに片手で寄りかかりながら、ボブが腰を落としてダンスを披露する。体調もよさそうだ。ボブのピアノ以外に各楽器のソロ演奏はほとんどないが「ラヴ・シック」ではチャーリーが短いソロを聞かせてくれた。「サンキュー。15分ぐらいしたら戻ってくる」とだけ言い残して前半が終わった。ちなみに昨夜は「サンキュー、15分ぐらいステージからいなくなるよ。きみたちも休憩してくれ」と言い残して去っていった。
休憩時間に小倉エージ氏と立ち話をした。初日を2階席で見たエージさんは、今夜は1階スタンディング席で見てるという。「昨夜よりも声がいいよ。ヴォーカルが聞き取れる。バンドのアンサンブルもいい。サウンドチェックで調整を変えたのかな?」と大満足で語ってくれた。たしかに「ホワット・グッド・アム・アイ」は、2階席で聞いていたぼくにも、まるでボブが部屋に来てすぐそばで歌ってくれているように、クリーアに届いた。ほんとうに、声もいいし、会場の音響も最高だ。
近くの席に座っていた浦沢直樹氏とも話をした。彼は「最新型のようなディラン」と結論づけ、最近見たポールやストーンズが過去の歌に頼っているのにくらべて、ボブはほとんど新作しか歌わない。今現在のボブが聞けたのがうれしい。これこそアーティストだ、と感想を聞かせてくれた。また、すこし前にテレビ番組の企画で佐野元春とニューヨークに行き、ヴィレッジの「カフェ・ホワッ?」やウッドストックの「ビッグ・ピンク」で撮影したことも教えてくれた。ビッグ・ピンクの地下室は現在も録音ができる状態に保たれていたそうだ。この模様は4月5日(土)夜10時にNHK-Eテレ「SWITCH」で放送される。見逃せない。
http://www4.nhk.or.jp/switch-int/x/2014-04-05/31/7150/
また、本日発売された週刊朝日に「ライク・ア・ボブ・ディラン対談:浦沢直樹、泉谷しげる」が掲載されている。この記事を読んだぼくは、ふたりとも真のディラン・ファンだなと再確認した。
やや長めの休憩が終わり、場内が暗くなるとスチュが弾くエレクトリックギターのリフが聞こえてきた。やがて全員がステージに戻りドニーのバンジョーが響く「ハイ・ウォーター」がはじまった。初日はそこまで気が回らなかったが、今夜はステージ背景を取り囲む黒い幕に、曲ごとに雲、雪、雨などを連想させる抽象的なさまざまな映像が投影ていることにも気づいた。もっとも想像をこえる薄暗いステージなのでバックの映像も目立つことはない。「運命のひとひねり」は多くのファンが知っている歌なのだろう、大きな歓声がわき起こった。前半もそうだったが曲間には拍手と歓声が渦巻くが、ボブが歌いだすと場内は静かになる。観客はひとことも聞き漏らしたくないとばかりに、ステージに注目する。ボブが日本が好きだというのも、こうした熱心なファンが大勢いるからだろう。アメリカでは、会場が大きいこともあるが、ただ騒ぎたいためにだけコンサートにくるような人もいる。繊細な「運命のひとひねり」に続いて、こんどは一転してヘヴィなピアノブルース「アーリー・ローマン・キング」だ。『追憶のハイウェイ61』の頃を思い出させるような若々しいヴォーカルで歌われる。本当に72歳なのだろうか? ところで「デトロイトが滅びた日……」と歌ったとき、皮肉にも先日のスーパーボウルで流れたクライスラーのCMを思い出した人もいたかもしれない。やはりボブは不思議な人だ。
2部4曲目は「フォゲットフル・ハート」。トニーのストリングベースとドニーのヴァイオリンが物悲しさを倍増させる。男の悲哀なのだろうか、去って行った女への想いが伝わってくる。ドアが開いているといいのに。一転して軽快な「スピリット・オン・ザ・ウォーター」に移る。ボブのリードピアノが全体をぐいぐい引っ張って行く。ここから後半を締めくくる『テンペスト』収録曲の3曲が続く。まず「スカーレット・タウン」。昨年秋のツアーではピアノを弾きながら歌っていたが、今年はステージ中央でヴォーカルに集中するように変った。この歌を聞けば、ボブが表現力豊かな最高ののヴォーカリストであることがわかるだろう。「スーン・アフター・ミッドナイト」ではチャーリーの低音を強調したギターソロを弾く。ロイ・オービソンの歌を思い出させるような甘い調べに酔いしれる。第2部最後は、はやくも日本ツアーのハイライトとの評判が立ち始めた「ロング・アンド・ウェイステッド・イヤーズ」。この曲でようやくステージの照明もやや明るくなり、ボブの表情もみえるようになった。コーラスもブリッジもない、Aメロだけが繰り返されるこの歌はヘヴィなロックに仕上がっている。マイクスタンドの前で、ボブは何度も膝を曲げて腰を落とし、「どうだ」と言わんばかりにポーズを決めまくる。若い! 歌が終わると照明が落とされ、全員ステージから消えた。昨年までは、ここで一度全員がステージに横一列に並んで、終わりの合図を送っていたが、日本ツアーからこれもなくなった。しばらくしてコンサートが終わったと気づく。観客がアンコールも求めて歓声を上げ、拍手を浴びせる。
アンコールはだれもが知っている「見張り塔からずっと」と「風に吹かれて」。「見張り塔からずっと」では、アコースティックギターで正確なリズムを刻んでいたスチュがめずらしく中央近くまで出てきて、バンドをあおりまくる。間奏ではボブのピアノとチャーリーのギターが繊細な駆け引きを繰り返した。最後の「風に吹かれて」は、ほかの歌手なら観客もいっしょに歌いだすような歌だが、ボブはちがう。ハーモニカを吹き、アップシングを混ぜながら、タイトなビートに乗せて、力強くことばを吐き出す。すべてが終わった。
ボブを中心にバンドメンバーが横一列に並ぶ。ボブは場内のあちこちに視線を送り、反応を確かめる。ひときわ大喝采を送り続けていた右手最前列の集団が気になったのか、何度もその集団に向かって歩き出しそうな動きも見せる。コンサートを終えたボブは、その日の観客が喜んだ表情を浮かべているのを確認した時、いちばんうれしそうに見える。今夜もドヤ顔のボブに、そんな表情を感じた。(菅野ヘッケル)
ボブ・ディラン日本公演4月1日Zepp DiverCityセット リスト
1.Things Have Changed シン グス・ハヴ・チェンジド
(『Wonder Boys"(OST)』 2001/『DYLAN(2007)』他)
2.She Belongs to Me シー・ ビロングズ・トゥ・ミー
(『ブリンギング・イット・ オール・バック・ホーム/Bringing It All Back Home』 1965)
3.Beyond Here Lies Nothin' ビヨンド・ヒア・ライズ・ ナッシング
(『トゥゲザー・ スルー・ライフ/Together Through Life』2009)
4.What Good Am I? ホワッ ト・グッド・アム・アイ?
(『オー・マーシー/Oh Mercy』1989)
5.Waiting for you
(『ヤァヤァ・シスターズの聖 なる秘密 Divine Secrets of the Ya-Ya Sisterhood)
6.Duquesne Whistle デューケ イン・ホイッスル
(『テンペスト/Tempest』 2012)
7.Pay in Blood ペイ・イン・ ブラッド
(『テンペスト/Tempest』 2012)
8.Tangled Up in Blue ブルー にこんがらがって
(『血の轍/Blood on the Tracks』1975)
9.Love Sick ラヴ・シック
(『タイム・アウト・オブ・ マインド/Time Out of Mind』 1997)
休憩(約20分)
10.High Water (For Charley Patton) ハイ・ウォーター (フォー・チャーリー・パッ トン) (『ラヴ・アンド・セフト/Love and Theft』2001)
11.Simple Twist of Fate 運命 のひとひねり
(『血の轍/Blood on the Tracks』1975)
12.Early Roman Kings アー リー・ローマン・キングズ
(『テンペスト/Tempest』 2012)
13.Forgetful Heart フォゲッ トフル・ハート
(『トゥゲザー・スルー・ラ イフ/Together Through Life』2009)
14.Spirit on the Water スピ リット・オン・ザ・ウォー ター
(『モダン・タイムス/Modern Times』2006)
15.Scarlet Town スカーレッ ト・タウン
(『テンペスト/Tempest』 2012)
16.Soon after Midnight スー ン・アフター・ミッドナイト
(『テンペスト/Tempest』 2012)
17.Long and Wasted Years ロ ング・アンド・ウェイステッ ド・イヤーズ
(『テンペスト/Tempest』 2012)
Encore:
18.All Along the Watchtower 見張塔からずっと
(『ジョン・ウェズリー・ ハーディング/John Wesley Harding』1967年)
19.Blowin in the wind/風に吹 かれて
(『フリーホイーリン・ボ ブ・ディラン)
ボブ・ディラン (Bob Dylan) :Vocal, Harmonica,Piano
トニー・ガーニエ (Tony Garnier) :Bass
スチュ・キンボール (Stu Kimball) :Guitar
ドニー・ヘロン (Donnie Herron) :Pedal Steel,Banjo, Violin, Mandolin
ジョージ・リセリ (George Recile) :Drums
チャーリー・セクストン (Charlie Sexton) :Lead Guitar
【ディラン祭り!】
■ボブ・ディラン・スペシャル・サイト:
https://www.sonymusic.co.jp/artist/BobDylan/
■来日期間限定ソニー・ミュージックLegacy Recordings JPの Facebookページが【ディラン祭!】一色に!:
https://www.facebook.com/legacyjp
来日期間中限定:追っかけレポートを、Facebookページで実施。セットリストやライヴ情報他、小ネタも含めて、様々なディラン情報をタイムリーにアップ予定。今後ボブ・ディランのレアなグッズのプレゼント・キャンペーンの実施も予定。
【ボブ・ディラン来日公演】
東京
3/31(月) Zepp DiverCity
4/1(火) Zepp DiverCity
4/3(木) Zepp DiverCity
4/4(金) Zepp DiverCity
4/5(土) Zepp DiverCity
4/7(月) Zepp DiverCity
4/8(火) Zepp DiverCity
4/9(水) Zepp DiverCity
4/10(木) Zepp DiverCity
札幌
4/13(日) Zepp Sapporo
4/14(月) Zepp Sapporo
名古屋
4/17(木) Zepp Nagoya
4/18(金) Zepp Nagoya
福岡
4/19(土) Zepp Fukuoka
大阪
4/21(月) Zepp Namba
4/22(火) Zepp Namba
4/23(水) Zepp Namba
■INFO:ウドー音楽事務所 03-3402-5999 udo.jp