バンコ

バンコ(バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソ)の歴史が始まったのは1969年。ヴィットリオとジャンニのノチェンツィ兄弟が当時爆発しつつあったプログレッシヴ・ロック・シーンに魅了され、インスピレーションを得たことがきっかけだった。1971年にはローマのカラカラ・ポップ・フェスティヴァルに参加し、そこで知り合ったフランチェスコ・ディ・ジャコモ(vo)を含む3人のメンバーを迎え入れ、バンコの初期陣営が完成した。 

バンコの『ファースト(Banco Del Mutuo Soccorso)』は1年後の1972年にリリースされた。「安息の鎮魂曲」、「魔術師の園」、「変身」といった不朽の名曲が収録されている。同年、2作目にして初のコンセプト・アルバム『ダーウィン(Darwin!)』をリリース。アルバムはダーウィンの進化論を中心に構想と作曲が行われた。1973年の『自由への扉(Io Sono Nato Libero)』までの初期3部作は、イタリアン・プログレッシヴ・ロック黄金時代有数の創造性と影響力を持つアルバム群と考えられている。1975年には英マンティコア・レコードから初の英語盤『イタリアの輝き~バンコ登場(Banco)』をリリースし、世界デビューを果たしている。 

世界的にプログレッシヴ・ロックが衰退した1980年代、バンコはポップ・フィールドに活動の場を移し、1983年にはシングル「モビー・ディック」が歴代最大のヒットとなるなど、苦悩の時代を乗り切っている。1991年には『ファースト』と『ダーウィン』を再レコーディングした『Da Qui Messere Si Domina La Valle』をリリースして復活の狼煙を上げ、以降現在までイタリアン・ロック界における不動の地位を確立している。2014年2月にフランチェスコ・ディ・ジャコモが自動車事故のため他界し、2015年7月にはリーダーのヴィットリオ・ノチェンツィが脳出血で倒れ、さらに同年10月にはロドルフォ・マルテーゼ(g)が病死するなどの不幸な出来事がバンドを襲っている。 

2017年には新たなメンバー構成による新生バンコとして活動を再開。メンバーはヴィットリオ・ノチェンツィ(kbd)、フィリッポ・マルケッジャーニ(g)、ニコラ・ディ・ジャー(g)、マルコ・カポジ(b)、ファビオ・モレスコ(ds)、トニー・ダレッシオ(vo)という6人編成となった。この新しいラインナップによる25年ぶりのアルバム『トランシベリアーナ~シベリア横断、人生の旅路』を2019年にリリースし、完全復活を果たしている。そしてこの作品よりも前から着手されていたプログレッシヴ・ロック・オペラ大作『オルランド~愛のかたち』がようやく完成し、2022年9月23日に世界同時発売される。