アスワド
現在の メンバーはアンガス・“ドラミー・ゼブ”・ゲイ(ヴォーカル/ドラム)とトニー・“ガッド”・ロビンソン(ヴォーカル/ベース)の2人。アスワド(アラビア語の「黒」に由来する)は1974年、ジャマイカン・コミュニティーのある西ロンドンのラッドブローク・グローヴ地区で結成されたレゲエバンド。イギリス発信のレゲエ・ミュージックをヨーロッパに根付かせた先駆者として、バーニング・スピア、ボブ・マーリー、ピーター・トッシュやバニー・ウェイラーといったジャマイカン・アーティストとレコーディングやコンサートを共にする数少ないブリティッシュ・グループであった。1976年、アイランド・レーベルと契約を結び、デビュー・アルバム『アスワド』をリリース。当時、オリジナル・メンバーのドラミーはまだ10代だったが、ラスタファリズムの思想の下に、失業率が上がり混沌としていた当時のイギリスの社会構造に猛烈なアンチを唱えたハード・コアなルーツ・ロック・レゲエは、ザ・クラッシュや、スペシャルズといったパンクや2トーン・スカなどのシーンにも影響を与え、未来の見えない多くの若者たちから“代弁者”として厚い支持を受けていた。
80年代中盤にはイギリスが洗練された独自のレゲエ・ジャンルとして発展させたラヴァーズ・ロックの代表格としても語られるようになったアスワド。中でも“甘い声と、それにマッチした都会的なサウンド・プロダクション”を得意としたドラミーは、プロデューサーとしてマキシ・プリースト、ジャネット・ケイ(この2組とは武道館公演を行ったことも)、スマイリー・カルチャー、トレヴァー・ウォルターズやトレヴァー・ハートリーなどイギリスのトップ・レゲエ・ヒットに貢献。80年代後半にはダンスホール、ファンク、ヒップホップやR&Bなど様々な音楽スタイルをレゲエと融合させた、よりポップで聴きやすい新しいアスワド・ミュージックを確立させ、多くのリスナーを惹きつけることとなった。そして88年、ルーサー・イングラムやティナ・ターナーのカヴァー・ヒットで知られている「ドント・ターン・アラウンド」のレゲエ・ヴァージョンがUKチャートで1位を獲得、その勢いはヨーロッパを始め日本にも波及し、アスワドは一躍メジャー・シーンへとその活動の場を移すこととなる。
1994年にリリースされた『ライズ・アンド・シャイン』はグラミー賞“ベスト・レゲエ・アルバム・オブ・ザ・イヤー”にノミネートされ、全米レゲエ・チャートでは8位を記録。同アルバムからのシングル「シャイン」は世界中で600,000枚以上を売り上げる大ヒットを記録した。
2000年、結成25周年を記念してレコーディングされたライヴ・アルバム『25ライヴ』のリリース後、イギリス最大の音楽賞のひとつ、第5回MOBOアワードでは功労賞を受賞している。