視聴率60%を記録!世界的なパンデミックから不死鳥のように音楽の力をよみがえらせたウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート、本日デジタル配信スタート。
Photo: © Dieter Nagl
毎年1月1日に行なわれるウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート。2022年は当初フルキャパシティの観客を入れての公演が予定されていたが、直前になってオーストリア政府の規制により1000人に限定しての開催となった。ちょうど元日の午前11時15分から開催された地元オーストリアでは、TVの視聴率が何と60%を超え、これは2014年以来の高視聴率となった。オーストリア国内だけで116万人が見た計算となる。
ウィーンの地元紙『クーリエ』は、「芸術的に卓越した成果。今後語り継がれる記念碑的なコンサート。ダニエル・バレンボイムとウィーン・フィルはこのコンビならではの音楽を聴かせてくれた」と絶賛。『ウィーン新聞』紙は「この上なく贅沢な音の絵」、『ディ・ツァイト』紙は「ウィーン・フィルはワインのコルクの栓を軽やかに開けた」、『クローネン』紙は「ウィーン・フィルは人を魅了するサウンドを全開させた」と称賛の言葉を連ねている。
観客が半分になり、マスク着用とはいえ、客席には華やぎが戻り、定番の「美しく青きドナウ」「ラデツキー行進曲」などに加えて、ツィーラー没後100年メモリアル、ヨーゼフ・シュトラウス生誕195年など、2022年のさまざまなアニヴァーサリーなどテーマ性を織り込んだ多彩な作品で構成され、ニューイヤー・コンサート初登場曲も6曲含まれていた。2014年以来8年ぶりニューイヤー・コンサート3度目の登壇となるダニエル・バレンボイムは、ウィーン・フィルとは1965年以来半世紀以上の共演歴があり、気心の通じ合った表情豊かな演奏を繰り広げた。
また「美しく青きドナウ」の演奏の前に行われる「新年の挨拶」では、通例の「明けましておめでとう」に加えて、バレンボイムが約2分間にわたって英語でスピーチを行った。「このコンサートでは、数多くの音楽家が一つの『共同体』になっています。このようなことが現在の規範になるべきなのです」と、コロナによって人と人とが離れていくことへの警鐘を鳴らし、つながりを持ち続けることの重要性を訴えた。続く「ラデツキー行進曲」では客席が一丸となった拍手を巧みにコントロールして、華やかにコンサートを締めくくった。また同時に2023年のニューイヤー・コンサートの指揮者がフランツ・ウェルザー=メストであることも発表された(2013年以来10年ぶり)。
【アルバム情報】
■タイトル/アーティスト ニューイヤー・コンサート2022/ダニエル・バレンボイム&ウィーン・フィル
New Year’s Concert 2022 | Daniel Barenboim & Vienna Philharmonic
■品番・発売日・定価:
CD(2枚組):SICC-2236~37 2022年1月26日 ¥3,190(¥2,900+税)
ブルーレイ:SIXC‐59 2021年2月16日予定 ¥6,270(¥5,700円+税)
■デジタル配信:
2022年1月7日 通常配信+24bit96kHzハイレゾ
[CD収録曲] [ ]内は演奏時間
CD1 [51:06]
第1部
1.フェニックス行進曲 作品105★ (ヨーゼフ・シュトラウス) [2:14]
2.ワルツ「フェニックスの羽ばたき」 作品125 (ヨハン・シュトラウス2世) [7:25]
3.ポルカ・マズルカ「海の精セイレーン」 作品248★ (ヨーゼフ・シュトラウス) [3:40]
4.ギャロップ「小さな広告」 作品4 (ヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世) [2:38]
5.ワルツ「朝刊」 作品279 (ヨハン・シュトラウス2世) [10:57]
6.ポルカ・シュネル「ちょっとした記録」 作品128★ (エドゥアルト・シュトラウス) [2:29]
第2部
7.オペレッタ「こうもり」 序曲 (ヨハン・シュトラウス2世) [8:41]
8.音楽の冗談「シャンパン・ポルカ」 作品211 (ヨハン・シュトラウス2世) [2:36]
9.ワルツ「夜遊び」 作品466★ (カール・ミヒャエル・ツィーラー) [10:21]
CD2 [52:34]
1.ペルシャ行進曲 作品289 (ヨハン・シュトラウス2世) [2:26]
2.ワルツ「千一夜物語」 作品346 (ヨハン・シュトラウス2世) [8:39]
3.ポルカ・フランセーズ「プラハへご挨拶」 作品144 (エドゥアルト・シュトラウス) [3:30]
4.性格的小品「家の精霊」★ (ヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世) [4:40]
5.ポルカ・フランセーズ「ニンフのポルカ」 作品50★ (ヨーゼフ・シュトラウス) [3:58]
6.ワルツ「天体の音楽」 作品235 (ヨーゼフ・シュトラウス) [9:37]
アンコール
7. ポルカ・シュネル「狩り」 作品373(ヨハン・シュトラウス2世) [2:21]
8. 新年の挨拶 [3:00]
9. ワルツ「美しく青きドナウ」 作品314(ヨハン・シュトラウス2世) [10:26]
10. ラデツキー行進曲 作品228(ヨハン・シュトラウス1世) [3:53]
*日本ヨハン・シュトラウス協会刊の『ヨハン・シュトラウス2世作品目録』(2006)、『ヨーゼフ・シュトラウス作品目録』(2019)に従っています。
★ニューイヤー・コンサート初演奏の作品
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ダニエル・バレンボイム
[録音]2022年1月1日、ウィーン、ムジークフェラインザールでのライヴ・レコーディング
ダニエル・バレンボイム プロフィール
1942年11月15日、ブエノスアイレス生まれ。5歳のとき母親にピアノの手ほどきを受け、その後は父エンリケに師事。少年時代から音楽の才能を発揮し、7歳で最初の公開演奏会を開いてピアニストとしてデビュー。1952年、イスラエルに移住。2年後の1954年夏、ザルツブルクでイーゴリ・マルケヴィチの指揮法のマスタークラスに出席。この年ヴィルヘルム・フルトヴェングラーを訪ね、アドバイスを受ける。
1952年、ウィーンとローマでヨーロッパ・デビュー。1957年にはレオポルド・ストコフスキーの指揮で、ニューヨークにおいてオーケストラとの協奏曲デビューを果たす。ピアニストとしての名声を確固たるものとした後、1960年代半ばからイギリス室内管弦楽団とのモーツァルト作品(ピアノ協奏曲・交響曲・歌劇)の演奏で指揮者としての活動を開始し、1970年代からは、欧米各地のオーケストラに客演を開始。パリ管弦楽団(1975~89年)、シカゴ交響楽団(1991~2006年)の音楽監督を歴任。
オペラ指揮者としての活動は、1973年のエディンバラ音楽祭におけるモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」に始まる。1970年代はベルリン・ドイツ・オペラに客演し、1981年にはバイロイト音楽祭に「トリスタンとイゾルデ」でデビュー。1999年までほぼ毎年バイロイトに登場し、「ニーベルングの指環」全曲、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」、「トリスタンとイゾルデ」を指揮。1992年からはベルリン国立歌劇場音楽総監督に就任、現在に至る。さらにこの間、ミラノ・スカラ座の首席客演指揮者(2007~11年)および音楽監督(2012~17年)にも就いた。1999年には、友人でパレスチナ系アメリカ人学者のエドワード・サイードとともに、国家としては対立を続けているイスラエルとアラブ諸国の優秀な若手音楽家を集め、ゲーテの「西東詩集」から命名されたウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団を創設し、その指揮者を務めている。