去年はどんな1年でしたか?
去年から3枚目のアルバムができるまでの間は素晴らしい日々でしたよ。大いに楽しみました。また、自分を省みる時期でもありましたね。これまで自分が達成できたことや学んできたことを振り返ることができました。
中でも印象に残っていることは?
去年の…一番奇妙な経験は、蝋人形になった自分を観たことでしょうね。マダム・タッソー蝋人形館に足を踏み入れたら自分が立っていて、「うわぁ、何これ?」と思ってしまいましたよ。身体の輪郭まで忠実に再現してあるんですもの。ああいうのが展示されているのを見るのはなかなかの気分でしたね。でも下半身に関してはお手柔らかにしてくれたと思いますよ。実物の方が絶対大きいですからね!色んなところに旅することができたのも大きな経験でした。世界を見ることができて楽しんでいます。もう飛行機も怖くありません。特に中国は楽しかったですね。文化が全く違いますし、みなさん親切でしたよ。「チャイナズ・ゴット・タレント」に出演できたのも大きな経験のひとつです。
あなたは1年2ヶ月で1,400万枚のアルバムを売り上げ、特別なプレゼンテーションを受けましたね。その日について聞かせてください。
あれは身に余る経験でした。あんなにアルバムが売れるなんて夢にも思いませんでしたからね!でもプロフェッショナルな歌手としての自覚があまりない中、あれほどの短期間にあれだけ売るというのはね…あの頃はまだこの世界に慣れていませんでしたから、黙っていることが多かったです。私としては珍しいことですけれど。実感が沸くまでには時間がかかりましたが、少なくとも正しいことをしているという確信はありました。記念のディスクは今、“ポッシュ・ハウス”のピアノの傍に飾ってあります。 *買った家をこう呼んでいる
1年2ヶ月で1,400万枚というのは、アーティストによっては一生かかっても売れない枚数ですよね。
そういわれると何だか変な気がしますね。私の声が変わっているからかも知れません。ラッキーなのでしょうね。
あなたがたった2年のうちに成し遂げてきたことをすべて振り返ってみましょうか。
あまりに多すぎて数え切れません。これから始まるミュージカルもありますし、アルバムは3枚もレコーディングして、本も書いて、ピアーズ(・モーガン)とテレビの特番にも出ました。今度新しいドキュメンタリーもあります。あまりにもありすぎて、すべてを網羅することはできませんよ。
全体を分析してみれば、これだけのことを達成したというのはいい意味で怖い一方、すべてを受け容れるのは大変です。でも私はもう小さな怖がりの女の子ではありませんし、今まで成し遂げてきたすべての仕事や試練に頑張って取り組んできました。
2009年は大昔のような気がします。まったく違う時代のような。同時に、「ブリテンズ・ゴット・タレント」のステージに立ったのが昨日のことのようにも思われます。2009年は学び、適応し、“ベビー・ステップス(赤ちゃんの歩み)”で進んでいった年でした。このフレーズはきっと何百回も使っていると思いますけど、私がマザーケア(マタニティ&ベビー用品チェーン)で靴を買ったなんて思われていなかったのには驚きましたよ!
スターの座に上り詰めてからどんな有名人に会いましたか?
うわぁ…アンドリュー・ロイド・ウェバー、テリー・ウォーガン、ダニー・オズモンド、ピアーズ・モーガン、サイモン・コーウェル、スパンダー・バレエのトニー・ハドリー、レコーディング・スタジオではウェストライフに会って、ローマ教皇、チャールズ皇太子とカミラ夫人、マイケル・クロフォード…はすてきな人でしたね。ラッセル・ワトソンはインスピレーションを与えてくれます。テイク・ザットとロビー(・ウィリアムス)…本当にたくさんの人々と出会う機会がありました。どれも素晴らしい経験です。
50歳になったときはどんな気分でしたか。
それについては隠してしまいたいですね。自分が年取っていくなんて言いたくないですから。(笑)でもゴ・ジュッ・サイというのは新しい40歳のようなものですよ!勿論ひとつの節目ではありますよ。マイルストーンの誕生日ですから、その歳に辿り着けたことに、運命の星に感謝するんですよ!でも歳はあまり感じません。心は若いですもの!部屋の片隅で肩にショールを羽織ってじっとしているわけではありませんから、50になった実感は全くありませんね。
お誕生日のお祝いの言葉や送られてきたプレゼントの多さに驚きましたか?
私の誕生日を祝おうとしてくださる人の多さには圧倒されました。みなさん本当に優しくて、私を甘やかしてくれるんです。これほどの注目を浴びることにはいまだに慣れていませんし、全員に返事を書いて個人的にお礼を言うのは不可能ですから、この場をお借りして、みなさんの優しいお気持ちやカードにお礼を言いたいと思います。
50歳の誕生日パーティは楽しかったですか?
勿論楽しみましたよ!50歳の誕生日は素晴らしい日になりました。節目としての正式なパーティを開いてもらったんですよ。みんな飲んだり踊ったりして楽しんでくれました。パーソナル・アシスタントのジョアンが、サプライズで(ダンサー父子の)スタヴロス・フラットリーを呼んでくれていたんです。彼らとは「ブリテンズ・ゴット・タレント」のツアーで共演して以来会っていませんでしたから、再会できて本当に嬉しかったです。その時もとてもすてきで優しくしてくれましたが、今度はスコットランドまでダンスの仕事のついでに来てくれたんですよ。おかげで一層スペシャルなパーティになりました。私も踊って、と言いますか、旗みたいに引っ張り回されたという感じでしたね。踊りにかけては不器用ですから。最高の瞬間のひとつは、部屋の片隅の壁際に立って、家族や友人のみんなが楽しんだり、笑ったり、スコットランドのジグ(フォークダンス)を踊っているのを眺めていたときです。これこそ最高のひとときでしたよ。自分の大切な人々がひとつ屋根の下に集まってくれて、笑顔を見せたり踊ったりしているのを見ているのは、とにかく素晴らしい気分でした。
今年はどんなところに行きましたか?
今年はどんなところに行ったかですって?そうですね、中国にも行きましたし、ロサンゼルスにもまた行けましたし、ニューヨークにも行きました。それから幸運にも休暇でローマに行くことができました。それからアイルランドのノック(キリスト教巡礼地)に戻ったんです。ノックは私にとって個人的に大切な場所なので毎年行っています。私が大切にしている聖地なんですよ。他にもあまりにも多くのところに行き過ぎて、どこに行ったのか忘れてしまいましたよ!所詮は50歳なのかも知れませんね。
「チャイナズ・ゴット・タレント」に出演したのはどんな気分でしたか。
素晴らしい経験でしたけど、最初にスタジアムに足を踏み入れたときには、マネージャーのアンディに「これって一体?」と言ってしまいましたよ。そうしたら「小さいところから始めようかと思って」と言われました。小さいですって?6万人は入れるところが満員だったのに!全員を一人一人数えるのは当然難しいところでしたよ!ステージに上ったときにはライトしか見えませんでしたから、目の前だけを見て、オーディエンスの方は見ませんでした。そうやって意識を逸らしましたけど、6万人というのはすごいですよね。最初から最後まで楽しみました。将来コンサートをたくさんやるようになったときのためのリハーサルみたいなものです。その日が待ちきれませんよ。早く実現したいわ!
「チャイナズ・ゴット・タレント」に出演した日のことを振り返ってみてください。
午前中は本番の直前に大まかなリハーサルがありました。そこから準備していったのです。それが終わったら準備万端の気分で本番に臨めました。2曲は別々に歌いました。全てが時間オーバーになってしまったので長丁場になりましたよ。素晴らしい経験でした。ちょっとカオスだった時もありましたけど、笑い飛ばすしかありませんからね。
スタジアムで6万人以上の観衆を前に歌うのはどんな気分でしたか。
人数のことはあまり考えないで意識から消し去るのはいい秘訣ですね。人数を意識せず、最高のパフォーマンスを見せることを考えるんです。相手が60人であっても6万人であっても。
緊張しました?
しなかったと言いたいところですけど、勿論しましたよ…いい意味でですけどね。パフォーマンスに集中できました。
今年は、少しは休暇を取ったのでしょうか。
ええ、今年は休暇を取りましたよ。ローマとアイルランドでしばらく過ごしました。とても楽しくリラックスできました。幸運にもサンピエトロ広場を訪れることができました。ローマには見たいところややりたいことが多すぎて、ヴァチカン庭園には行けませんでした。1回行っただけでは美しさを堪能しきれませんしね。バシリカ(聖堂)はたくさん訪れて、色んな話を聞いて、ローマのことをたくさん学ぶことができました。神父さんにも案内してもらいましたし、ローマ教皇に謁見することもできました。みんな、ローマ教皇の祝福を受けるために広場に集まるのですよ。その時の様子はドキュメンタリー用に録画しました。本当にたくさんの人が来ていましたよ。なかなか貴重な経験でした。
この3枚目のアルバムについて最初に話が出たのはいつでしたか。
今年のもう少し早い時期に制作を始めるつもりでした。急かされたくはなかったですから。3枚目のアルバムの計画が始まったのは2月頃だったと思います。
最初にレコーディング・スタジオ入りしたのはいつでしたか。
レコーディング・スタジオにまた入ったのは3月上旬くらいですね。実験の期間を設けて、色んな曲を試して、どんな音になるのか、うまくいきそうかなど様子を見たのです。とても有意義で興味深い期間になりました。
スティーヴ・マックとまた一緒に組むのはどんな気分でしたか。
ええ、彼はいいですよ。彼と組むのは楽しいです。素晴らしい人ですし、とてもプロフェッショナルですからね。
曲選びについて聞かせてください。
今年は世界中から届いた手紙にインスピレーションを受けました。大半は会ったこともない人々ですが、最高にすてきな手紙を送ってくれたのです。嘆き、喪失感、結婚生活の終わりなど悲しい内容のものもあれば、ポジティヴなものもありました。そんなにパーソナルで込み入ったことをわざわざ書いてくれたことに感謝していますし、たくさんの手紙に感動しました。心の最も奥にある感情をさらけだしてくれるということには特に。3枚目のアルバムは、そういうエピソードや感情を反映したものにしたいと思いました。アルバムの制作自体、自分探しの旅のようなものでしたよ。感情という人生のジェットコースターに乗るようなものです。手紙の一つ一つに返事する時間があれば良かったのにと思います。ひとつ心を打たれたのは、20歳から90歳まであらゆる世代の人々が手紙をくれたことです。どの手紙も彼らの生活への感動的な洞察でした。このアルバムに収録されている曲には、彼らの悲しみ、喜び、そして壮大な勇気が反映されています。アルバムの雰囲気はとても内省的です。タイトル「誰かが私を見つめている(Someone To Watch Over Me)」は(ジョージ・)ガーシュウィンのとても古い曲からとっています。心に強く訴えてくる曲がありますし、とても感情的で思考を喚起するアルバムになっていると良いのですが。
聖歌や、宗教に基づいた曲を避けたのは意図的な動きだったのでしょうか。
いえ、宗教は今回もアルバムの一部になってはいますけど、あからさまではないだけですよ。以前のように聖歌やキャロルがあるわけではありませんが、宗教について触れたり考えたりする内容の曲は入っていますし、とても力強い曲だと思います。今回のアルバム、特に『狂気の世界(Mad World)』は、私たちの生き方や、私たちの生きている社会のあり方に疑問を投げかけています。この世界は本当に私たちが思っているような狂気の世界なのかと。
私たちは安全圏から抜け出して、もっと勇敢になって、望めば試練も受けて立つようにならなければなりません。もう少し挑戦的になって社会的な意識を持って。それが、物事を大人の目で見るということのような気がします。
デペッシュ・モードや『狂気の世界』をカヴァーすることになったいきさつを聞かせてください。
正直なところ、これまで歌ってきたものとも、ファンが聴き慣れているものとも違いました。でもサプライズの要素は、結局は私自身にありましたからね。サイモンも言うとおり私はとても予測不可能ですし、それについて謝罪するつもりもありません。次に何を期待していいか分からない、そういう予測不可能の状態が好きなのです。『狂気の世界』は非現実的な感じがしますが、内省的な内容でもあります。自分が慣れているものから離れると、新たな一面を人々に見せることができます。彼らの頭の中にある先入観をひっくり返すのですよ。実験するのはいいことですね。楽しいですし、みんなをハラハラさせ続けることができますから。
著名な音楽ジャーナリストが、スーザン・Bはエヴァ・キャシディが『虹の彼方に(Somewhere Over The Rainbow)』でやったことを『アンチェインド・メロディ』でやったと絶賛していました。これについてはどう思われますか。
そうですね、エヴァ・キャシディは間違いなくとても美しいシンガー、とてもソウルフルなシンガーだと思います。(彼女の)『虹の彼方に』は忘れられることがないと思いますから、彼女のような人と比べられるなんてとても嬉しいですし、謙虚な気持ちになれます。
このアルバムで特にお気に入りの曲はどれですか。
まあ、難しい質問ですよ。どの曲も共感できますからね。でも敢えて1つ挙げるとすれば『ディス・ウィル・ビー・ザ・イヤー』が好きですね。アレンジも完璧で、旋律も素晴らしいですし、映画のような雰囲気がある一方でかなり悲しくもあって、と全てを兼ね備えていますからね。それに私は悲しい曲に目がないんですよ。
ファンはあなたの音楽的決断をどう受け止めていますか。
8月にニューヨークに行ったときファンに会う機会があったので何曲か聴かせてみましたが、幸運にもフィードバックを得ることができました。好意的なフィードバックもありましたし、建設的な批判もありました。例えば『エンジョイ・ザ・サイレンス』を初めて聴いたとき、彼らは私がああいうスタイルの音楽をやることに慣れていませんでした。あれは完全に方向転換でしたからね。でもアーティストとしては、そのリスクを負うわけです。彼らは私の普段のスタイルに近いものの方を楽しんでくれましたが、音楽で実験し続けることや恐れずにそうすることについては応援と賛同の意を表してくれました。『エンジョイ・ザ・サイレンス』はすばらしい選択だったと思いますし、私も誇りを持っていますが、いささかリスキーではありましたね。特にアメリカのオーディエンスにとっては。徐々に受け容れてもらえればと思っています。興味深いアレンジの施された力強い曲です。若い世代にはアピールするかも知れませんね。彼らを私の音楽に取り込むこと、それがそもそもの私の願いでもありました。実験するのは好きですし、喜んでいただけるためにベストを尽くしますよ。
それぞれの曲について、あなたにとって何を意味するかを聞かせてください。
『ユー・ハフ・トゥ・ビー・ゼア』
これは神様がついてくださることを懇願する歌です。必要なときにいてくださるのかくださらないのか、という疑問を投げかけています。ABBAのベニーとビョルンが自分たちのミュージカル「クリスティーナ」に書いた曲で、とても示唆に富んだ、感情に訴えてくる曲です。
『アンチェインド・メロディ』
60年代にライチャス・ブラザースが歌って有名になった曲です。人間関係の破綻について歌っていますが、ラヴ・ソングです。このヴァージョンでは違ったアレンジが施されているのがとても気に入っています。多分曲名を見た人は「またか!」と思うでしょうけど、これは全く毛色が異なっていて、かなり驚くと思いますよ。
『エンジョイ・ザ・サイレンス』
全く新しいジャンルへの進出ですね。デペッシュ・モードは80年代に活躍したバンドです。私にとってはノーマルや、歌いなれてきたタイプの曲からの脱却ですね。若いオーディエンスにアピールできることを願っています。
『青春の光と影 (Both Sides Now)』
タイトル通りです。人生を振り返る内省的な曲です。自分の見方や、もう何にもそうは驚かされないということですね。私くらいの歳になると、驚かされるものなんてありますか?両方の側からものごとを見るようになったら、それは人生で様々な経験をしてきたことを意味します。何が起こってももうそんなにショックは受けなくなりますよね。そうでしょう?
『ライラック・ワイン』
『ライラック・ワイン』は、エルキー・ブルックスという女性が有名にした曲です。力強いバラードの名曲で大好きですが、ここではもう少し穏やかに歌っています。
『狂気の世界』
『狂気の世界』は社会的な主張の歌です。自分の目をカメラに見立てて、外の世界を観察しているような歌ですね。とても超現実的な曲です。
『オータム (Autumn Leaves)』
夏の終わり、何もかもが枯れて冬に向かっていく時期の曲です。愛する者を失うという内容です。この曲は、5年前に母が亡くなって独り残されたときのことや、その時感じたことを思い出します。とても悲しい、感傷的な歌です。誰かを恋しく思う歌ですが、その人が逝ってしまって、自分の世界に大きな穴が開いてしまうまでは、他のことにばかり気を取られてしまってそういう感情には気づかないものですよね。
『ディス・ウィル・ビー・ザ・イヤー』
この曲は、新年や、その時決意しても実際は守れない誓いを思い出します。いつも口だけで実際は完遂できないものですよね。過ぎ去った年を振り返りつつもとても楽観的な曲で、内面的な強さをくれます。今年は自分の本領や真価を発揮して、このアルバムを成功させる年にしたい、そんなパーソナルなメッセージを込めています。間違いなく楽観的な歌です。
『リターン』
いなくなってしまった人々について歌っています。祖国のために戦ってくれている兵士たちや、彼らの帰りを待っている家族がとても寂しく思う気持ちや、勇者たちが帰ってきて家族が全員揃うのを待ち焦がれる気持ちに思いを馳せたくなります。感情に訴えてくる曲ですが、内省的な曲でもあります。その人がいない生活というのは、自分の一部がいなくなっているようなものですからね。それから、詩的でドラマティックな歌でもあり、他にも色んな意味合いを持つ、とても心を打つ曲です。
『誰かが私を見つめている』
とてもブルージーでジャジーなタイプの曲です。(ジョージ・)ガーシュウィンの曲で、これもまたいつもの私のサウンドとは違います。
このアルバムではひとつひとつの曲が違ったサウンドですね。あなたの声もカメレオンのように変幻自在で。
歌にはバラエティを持たせようとしました。そうでないとみなさん飽きて聴かなくなってしまいますからね。ずっと単調な声で歌っていたらどうなるか想像できますか?何だこれは、なんて思われてしまいますよ!
自分を表現しなければなりません。曲の途中で眠りに落ちてしまってほしくはないですからね。『リターン』の一番上の音は…あれは大変でしたよ。
スタジオでのハイライトや面白いエピソードを聞かせてください。
面白いときといえば、間違いをしてしまったときは笑い飛ばすしかありませんよね。あまり真面目に考えすぎないことですよ!
どうしてレコーディングのプロセスがそんなに好きなのですか。
カプセルのようなものだから好きなのですよ。自分だけの世界で、誰にも手に入れることができませんからね。自分の中の感情があって、曲があって、歌詞があって、あとは自分がどう解釈していくかにかかっているのです。スタジオというカプセルの中では、その感情を怖がる必要はありません。好きなように表現すればいいのですよ。自分だけで、他の誰も自分を鑑定するわけではありませんから。誰も自分には近づけない状態というのは素晴らしいですよ。自分だけの小さな世界で過ごす時間を楽しんでいます。
スタジオのどういうところが特に好きですか。
プライバシーが守れるのが好きです。自分だけの世界、自分だけのクリエイティヴな世界にいられるところが。自分とプロデューサーだけですからね。彼は素晴らしいプロデューサーで、最高の自分を引き出してくれます。
新作のレコーディングで最も驚いた点は何ですか。
まだ曲を試している段階のときに、曲の流れがしっくり合ったことに一番驚きました。どういうことになるかあまり想像がついていませんでしたから。でも、合わせてみたら自然な流れがあったんです。
今の仕事を楽しんでいますか。
勿論です。でなければやりませんよ。世界一の仕事についている私はとてもラッキーだと思います。
世間の注目を浴びる生活をどうとらえていますか。
世間の注目を浴びる生活には慣れてきたので、前よりずっとリラックスできるようになりました。以前ほど怯えてはいません。最初はとても神経質になってしまうものですけど、楽になってきました。全部受け流せるようになってきました。
そういう状況に親しんできているということですか。
今は以前より親しんできていますが、当たり前だとは思っていません。より良いものを求めて努力することはとても大切なことだと思っています。それこそが私の仕事に必要なことですからね。そのプロセスや今の状況は心地よいものですけど、これからもずっとより良いものを目指して努力していきます。
今でも心配ごとはありますか。
そうですね、いつまで経っても自分に満足できないのではないかと心配にもなりますし、(アーティストとしての)寿命もいつも気になりますね。大概のアーティストはそう思うのでしょうけど。
セレブリティになると不安感はなくなるものなのでしょうか。それとも一層強くなるものなのでしょうか。
“セレブリティ”という言葉は、世間の注目を浴びている自分が、普通とは違う目で見られていることを意味します。私はそんなに特別ではありません。ただの人です。“セレブリティ”という言葉はレッテルに過ぎません。人生の中で物事が変化すると、新しい心配事が古い心配事に取って代わるのだと思います。
最も恐れていることは何ですか。
私が最も恐れているのが、世間が私に魅力を感じてくれなくなることです。この業界はかなり移ろいやすいですからね。新人が現れては消えていきます。アーティストとしての視点から考えると、物事を当たり前と思ってしまうのはあまりにたやすいことです。だからこそ私は常により良いものを求めて努力し、興味を引き続けるためにサプライズを続けるのです。これからもそうしていければと思っています。
今年はあなたの半生を描いたドキュメンタリーを撮影していますね。どういうものになりそうですか。
あまり種明かしはできませんけど、確実にもっと人間的な面が見られるはずです。私の間抜けな部分も見られると思いますよ!でもそれはほんの一部に過ぎません。
私の毎日を描いたものです。かなりありふれているとは思いますけど、面白いかも知れませんよ?
カメラに追いかけられるようになったのは不思議な気分でしたか。
特に、どこに行くにもマイクがついて回るというのはちょっと変な気分でしたね。特にお手洗いに行くときは。かなり恥ずかしいですよ!でも段々気にならなくなってきました。ただ、レンズを目の前に向けられると、うわあ、これは高画質で撮影されているのよね、なんて思ってしまいますよ!
気にならなくなってきたのはいつ頃からですか。
割と初めの方ですね。とても楽しい経験だったと言えます。
世間にはあなたのどんなところを知ってもらいたいですか。
衣装を着てステージで歌っているだけではない私を見てもらいたいですね。家にいる普通の人間と、すばらしい機会を与えられている私とのバランスを見てもらいたいと思います。私の家での過ごし方はそんなに変わっていないということを。
私の知っているスーザン・ボイルは機知に富み、馬鹿笑いしてしまいたくなるほど面白く、頭の切れる人ですが、そういう面が見られるということでしょうか。
見てもらえれば分かりますよ!
あなたはものまねの才能もありますが、その才能が発揮されているところも見られますか。
さぁ?見ていただかないと。ただ、それをやったらちょっと厄介なことになるかも知れませんね。まねすべきでない人をまねてしまいたくなるんですよ。サイモン・コーウェルとか!
フィルム・クルーについてもらうということがどうして重要だったのでしょうか。
私にはパフォーマー以外の顔もありますから、私という人間をバランス感覚を持って見てもらうためです。世間のイメージ以外の自分というのがありますから、本当の私や、私にはおかしなユーモアのセンスがあることを見てもらいたいと思います。マスコミが以前書きたてたように、私がメルトダウンしているということではありませんよ。これが本当のスーザンだということです。
プライバシーを望み、ガードの固い生活をしてきたあなたが、このように自分と自分の生活を人に見せるという大きな一歩を踏み出したきっかけは何だったのですか。
リスクが大きいのは分かっています。
これから人から違った目で見られることになると思いますか。
もっとポジティヴな見方をしてくれることを願っています。私を気に入ってもらえれば。
最近ニューヨークに行かれたそうですね。どんなことがありましたか。
ファンに会っておしゃべりすることができました。みんなでよく笑えましたよ。彼女たちはみな本当に特別な存在です。ようやく孤独を感じなくて済むようになったのですから。アメリカに行ったことのなかった、うちのハウスキーパーを連れて行きました。タイムズ・スクエアや自由の女神につれて行って、ちょっとした観光をしました。最初から最後まで楽しい時間でしたよ。一番心を動かされたのは、9/11テロ事件の起こった場所に行ったことです。10年前に起こったことを考えると、身の引き締まる思いがしました。
ニューヨークでは街角で写真撮影がありました。初対面の人々にも会えてとても楽しかったです。道の真ん中に立っていると車がクラクションを鳴らしながらこっちに向かってくるのが面白かったです。「リスクを取るのよ!」なんて考えながら立っていましたね。それもこれも芸術のために。
米コロンビア・レコーズ(ソニー・ミュージック)をサプライズ訪問もしましたよ!自分の音楽がかかっているのが聞こえましたが、それが静かになったときは、あーあ、私の音楽は気に入られていないのね…なんて思ってしまいました。ところがドアが開いて、私が部屋に入ると、みなさん本当に温かく迎えてくれたのですよ!名前を聞いたことのあるみなさんと会えて、顔と名前が一致したのは素晴らしい経験でした。
それから「アメリカズ・ゴット・タレント」の出演でロサンゼルスに行きましたね。スタジオを再び訪れたときはどんな気分でしたか。
すてきな想い出がたくさん蘇ってきました。特にピアーズ・モーガンが入ってきたときはね。もう私のことなんてすっかり忘れられているだろうなと思ったら、そうではなかったのですもの。彼の息子さんたちにも会いました。うちのハウスキーパーは狂喜乱舞していましたね。ピアーズに対面できたときはとても驚いていました。スタジオでまた歌うことができたのは本当にいい経験でした。懐かしい顔ぶれに会うことができたのもとても嬉しかったです。
「アメリカズ・ゴット・タレント」でのパフォーマンスの手応えはいかがでしたか。
『ユー・ハフ・トゥ・ビー・ゼア』を歌いましたが、それに集中するのに手一杯だったので、あの時の心境はあまり分析できません。でも終わってからとても嬉しい気持ちになりました。自分をいっぱい出せた、全てを出せた気がしたからです。世間的にはどう見られたのか分かりませんが、いい感想をいただきました。
あなたのパフォーマンスを見るために全米から飛行機で駆けつけたファンについてはどう思いましたか。
テイクの合間にスタジオの照明が点くと、オーディエンスの半分が赤いスカーフを巻いているのだけが見えました。それで、私の仲間が来ていると分かったのです。オーディエンスの中に見た顔があるというのはとても心強かったです。彼らが遠いところから私をサポートしに来てくれるというのは、私にとってとても大きな意味があります。今の仕事をしているのは彼らあってこそ。彼らのことは忘れません。大枚はたいて私を観に来てくれたなんてと感動しました。とても誠実なところを見せてくれるのです。
ニッキー・ミナージュとラップしたと報道されていますが、真相は?
嘘ばかり報道するのはやめてほしいわ。(笑)他にやることがあるでしょうにねえ!
ロサンゼルスをどう思いますか。
素晴らしい経験でした。エキサイティングな街です。ぜひそのマジックをご自分で経験してみてください!映画とテレビの本場で、素晴らしいところです。
空き時間には何をしていましたか。観光やショッピングでしょうか。
何とか少し観光することができたので、またハリウッドの看板を観に行きました。初めて行ったときと同じように力強さを感じましたよ。マンズ・(チャイニーズ・)シアターにはスター(の手形や足型)を見に行きました。ショッピングも少ししましたが、ブルーミングデールズ(百貨店)はちょっと高すぎて行けませんでしたね。コートのタグを見て「げっ」と思ってさっさと退散しましたよ!すてきなものが色々ありましたけど、見るだけよ、見るだけよと言い聞かせていました。
アメリカで一番行ってみたいところはどこですか。
ラスベガスにはぜひ行きたいと思っていました。1月に休暇で行くことになったので、とても楽しみにしています。すごく楽しいでしょうね。ショーもいくつか観に行くつもりです。ギャンブルをやるかどうかは分かりませんけど。すごく行きたいと思っているのは、テレビや映画、「CSI」(テレビドラマ)などでよく見ていたので、私も雰囲気を味わってみたいと思うからです。セリーヌ・ディオンと(シルク・ド・ソレイユの)「(ビートルズ・)ラヴ」がぜひ観たいですね。
フィラデルフィアにも行ってみたいです。私の家族はアイルランド系の血が濃いので、家系を辿れば親戚がいるはずなのですよ。すごく興味がありますね。テキサスに行くのもきっと楽しいと思います。
去年家を購入されて“ポッシュ・ハウス”(おしゃれな家)と名付けましたね。“ポッシュ・ハウス”の住み心地はいかがですか。
ポッシュ・ハウスはすてきなところですが、住んではいないのですよ。豪邸や大きな家に住むタイプの人間ではないですし、子供の頃から住んできた母の家で全く満足していますから。ポッシュ・ハウスは他人に楽しんでもらえるように、最大限に活用できるように考えています。母の家も少し改装しましたし、ここで十分です。同じくらいいいところですよ。ここでは近所のみなさんが気を配ってくれますし、彼らが近くにいてくれるのはすてきなことです。
あなたの半生を描いたミュージカルができると報道されていますが、それについてお聞かせください。
私の半生を描いたミュージカルで、脚本はマイケル・ハリソンが担当しました。エレイン・C・スミスが私を演じて、3月に始まる予定です。私の家族や、「ブリテンズ・ゴット・タレント」出演時の裏話を取り上げています。とても心を打つ、感動的な内容ですが、結構面白くもあるんですよ。泣いたり笑ったりできます。観に行く価値があると思います。エレインが私を演じる姿はまだ観ていませんが、そういうことになっています。他人がステージの上で自分を演じているのを観るのはきっと変な気分になるでしょうけど、心配はしていません。素晴らしい女優さんですし、しっかり演じてくれると確信しています。今明らかにするのはそのくらいですね。残りはビッグ・サプライズにしておきます。全くの新しいプロジェクトですから、とても楽しみにしています。新しい赤ちゃんが生まれるようなものですものね。どんな風になっていくか楽しみです。
休暇で行ってみたい国はどこですか。
スペインに行ってヴィラ(別荘)を借りてみたいですね。マルタにもぜひ行ってみたいです。ビーチにずっと座っているロブスターみたいに真っ赤に焼けてしまうので、リラックスする時間と、旅先のことを学ぶ時間を作りたいと思います。南アフリカも行ってみたいですね。サファリに行ってみたいです。動物がいるところでどうやって野宿するのかは分かりませんけど。(女優の)ジョアンナ・ラムリーがナイル川を旅する番組(恐らく
http://www.itv.com/lifestyle/peopleandplaces/joannalumley/)にもインスピレーションを受けました。ナイル川にも行って、現地の文化を見てみたいですね。
仕事がとても楽しいので、休暇を取るというのはそんなに重要なことではありませんけどね。もっとキャリアを伸ばしたいと思います。世界を旅する時間はたっぷりありますからね!
最後に、スーザン・ボイルの未来はどのような感じになりそうですか。
できればこの先何年も、音楽とサプライズに満ちた日々であってほしいですね!やっぱりみなさんにずっと興味を持っていただきたいと思いますからね。
Favourite Songs フェイヴァリット・ソング
1. |
I Dreamed a Dream 夢やぶれて(ミュージカル「レ・ミゼラブル」) |
2. |
Cry me a River クライ・ミー・ア・リヴァー(ジュリー・ロンドン) |
3. |
Puppy Love パピー・ラブ(ポール・アンカ) |
4. |
Whistle Down the Wind ウィッスル・ダウン・ザ・ウインド(汚れなき瞳)(同名ミュージカル) |
5. |
You'll See 愛をこえて(ユール・シー)(マドンナ) |
6. |
Memories メモリー(ミュージカル「キャッツ」) |
7. |
Don't Give Up ドント・ギブ・アップ(ピーター・ガブリエル feat.ケイト・ブッシュ) |
8. |
Bad Boys バッド・ボーイズ(ワム!) |
Favourite Books フェイヴァリット・ブック
1. |
Is it Me? Terry Wogan 『Is it Me? 』テリー・ウォーガン ※BBCの名物司会者の自伝 |
2. |
Heidi 『アルプスの少女ハイジ』ヨハンナ・シュピリ |
3. |
Of Mice & Men. John Steinbeck『二十日鼠と人間』ジョン・スタインベック |
4. |
To Kill a Mockingbird. Harper Lee 『アラバマ物語』 ハーパー・リー |
5. |
The Insider Piers Morgan 『インサイダー』ピアーズ・モーガン |
Favourite Albums フェイヴァリット・アルバム
1. |
Madonna - The Immaculate Collection マドンナ/ウルトラ・マドンナ 〜グレイテスト・ヒッツ |
2. |
Cats- Andrew Lloyd Webber キャッツ/ロイド・ウェバー |
3. |
The Plan - The Osmonds ザ・プラン/オズモンズ |
4. |
Sgt Pepper's Lonely Hearts Club- The Beatles サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド/ビートルズ |
5. |
I Dreamed a Dream - Susan Boyle 夢やぶれて/スーザン・ボイル |
Favourite Films フェイヴァリット・フィルム
1. |
Angels & Demons 天使と悪魔 |
2. |
Julie & Julia ジュリー & ジュリア
※メリル・ストリープ&エイミー・アダムス共演の新作映画。(日本公開11月28日) |
3. |
Ghost ゴースト〜ニューヨークの幻ゴースト |