ピープル、ヘル&エンジェルス People, Hell & Angels

ピープル、ヘル&エンジェルス People, Hell & Angels

1942年11月27日に生まれ、1970年9月18日に非業の死をとげたジミ・ヘンドリックスは、その晩年に念願の自己のスタジオ「エレクトリック・レディランド・スタジオ」を設立。時間を見つけては多くの録音を行っていた。彼が残した素材から、これまでに「ファースト・レイズ・オブ・ザ・ニュー・ライジング・サン」「サウス・サターン・デルタ」(1997年)、「ヴァリーズ・オブ・ネプチューン」(2010年)という3枚の「ニュー・アルバム」が発売されてきたが、さらなるすばらしいジミヘンの「新作アルバム」が発表となる!

12の未発表スタジオ録音から成るジミ・ヘンドリックスの新作『ピープル、ヘル&エンジェルズ(People, Hell & Angels)』。オリジナル・エクスペリエンスとは別に躍動していた伝説のギタリストの姿をはっきりと映し出す特別なアルバムだ。1968年以降、ジミ・ヘンドリックスは何かに急かされるように、旧友や新編成を従えて新たな素材の開発に意欲的に取り組んでいた。エクスペリエンスをロック界最大の興行収益を叩き出すアーティストとして確立するとともに、彼らのアルバムを2枚同時に全米売上チャートのトップ10内へと押し上げた巨大な聴衆の目の届かないところで、ジミは密やかに自身の音楽的声明作りに勤しんでいた。

12の録音はそれぞれ独自のサウンドとスタイルを有しており、さまざまな要素が組み入れられている——管、鍵盤、パーカッション、セカンドギターなど、いずれもジミが自身の新たな音楽に加えたいと思っていたものだ。史上屈指の輝きを見せるギターワークを収めた本作『ピープル、ヘル&エンジェルス』は、ソングライター、ミュージシャン、プロデューサーとしてのジミ・ヘンドリックスの成長ぶりを感動的なほど色鮮やかに見せてくれる。

収録曲

  • アース・ブルース / Earth Blues

    1971年に『レインボー・ブリッジ』の1曲として初めて世に出たヴァージョンとはまるで違う。1969年12月19日に収められたこのマスターテイクが擁するのは、ヘンドリックス、コックス、マイルズの3人のみ。贅肉をそぎ落としたファンク、原初の姿がここに。

  • サムホエア / Somewhere

    新たに発見されたこの至宝は1968年3月の録音で、ドラムがバディ・マイルズ、ベースがスティーブン・スティルス。これまで耳にできたどのヴァージョンともまったく異なる。

  • ヒア・マイ・トレインAカミン / Hear My Train A Comin'

    後に革新作『バンド・オブ・ジプシーズ』を吹き込む強力リズム・セクション、ビリー・コックス&バディ・マイルズとの初レコーディング・セッションで録られた卓越したテイク。ジミと同じく、コックスとマイルズもブルースを深く愛し、「 新種 ニュータイプ のブルース」の創出に燃えるジミの情熱をよく理解していた。豊かな遺産に新たに加わったこの名ヴァージョンの中核を成すのが、ジミの鬼気迫るリードプレイだ。

  • ブリーディング・ハート / Bleeding Heart

    長らくジミのお気に入りだったエルモア・ジェイムズによる傑作。ロイヤル・アルバート・ホールでエクスペリエンスと演った翌週、ジミはニューヨークにおける一連のスタジオ・セッションでこの曲にあらためて取り組んだ。これは1969年5月、「ヒア・マイ・トレニンAカミン」と同じセッションで録られたもの。どんなアレンジとテンポで演りたいのか、ジミの中に迷いは微塵もなかったに違いない。開始前、ジミはコックスとマイルズに通常のアレンジとはまったく違うビートで行きたいと指示している。その直後に飛び出したのが、過去の試みとは似ても似つかないこの驚愕の解釈だった。

  • レット・ミー・ムーヴ・ユー / Let Me Move You

    1969年3月、ジミが連絡を取ったのが旧友のサックス奏者ロニー・ヤングブラッドだった。1966年夏、チャス・チャンドラーに見いだされる前、彼は無名のスタジオ・ミュージシャンとしてヤングブラッドの録音に臨み、「ソウル・フード(Soul Food)」などの強力なリズム&ブルース・シングルを産んでいた。ジミとヤングブラッドによるリックの応酬が刻まれた、前代未聞の超高速ロック&ソウル・クラシックだ。

  • イザベラ / Izabella

    ウッドストックの興奮冷めやらぬ1969年8月、ジミは新バンド、ジプシー・サン&レインボウズをエンジニアのエディ・クレイマーと共にヒット・ファクトリーに召集している。「イザベラ」はウッドストックで初披露された新曲のひとつで、ジミはスタジオ版として早く仕上げたいとの情熱に駆られていた。この新ヴァージョンは1970年にリプリーズから発売されたバンド・オブ・ジプシーズのシングル用マスターとは著しく異なり、伝説の「チトリン・サーキット」時代の盟友ラリー・リーをリズムギターに擁している。

  • イージー・ブルース / Easy Blues

    廃盤になって久しい1981年作『ナイン・トゥ・ザ・ユニヴァース』に一部だけ収録されて短期間出回った、奔放なる美しきインスト・ナンバー。今回お届けするものにはその2倍近くの尺があり、ジミ、ラリー・リー、ビリー・コックス、ミッチ・ミッチェルが繰り広げる壮絶なインタープレイが楽しめる。

  • クラッシュ・ランディング / Crash Landing

    ジミ亡き後、セッション・ミュージシャンがオーバーダブを加えたことで物議を醸した1975年のアルバムのタイトル曲としてなじみがあるだろうが、この1969年4月のオリジナル録音は今回が初出となる。ビリー・コックスとチェリー・ピープルのドラマー、ロッキー・アイザックを従えて吹き込まれた、当時のジミの彼女デヴォン・ウィルソンに対する薄衣に包まれた警告の歌だ。

  • インサイド・アウト / Inside Out

    ジミはリズムパターンの可能性に深く魅せられており、その思いは最終的に「イージー・ライダー」として形を成すことになる。ここではミッチ・ミッチェルを従え、ジミがベースおよびギターの全パートを録っている。レスリー・スピーカーで増幅された劇的なリードプレイは圧巻。

  • ヘイ・ジプシー・ボーイ / Hey Gypsy Boy

    荘厳なる「ヘイ・ベイビー(ニュー・ライジング・サン)」の源は、この1969年3月の録音に遡る。1975年に『ミッドナイト・ライトニング』の一部として短期間だけ出回った死後にオーバーダブを加えられたものとは異なる、バディ・マイルズを従えてのオリジナル録音がこれだ。

  • モジョ・マン / Mojo Man

    ゲットー・ファイターズとして知られるヴォーカル・デュオ、アルバートとアーサーのアレン兄弟にジミはたびたび力を貸していた。彼らとは、エクスペリエンスで名を成す遙か前、ハーレム時代からの仲だった。今回初登場となるこのマスターは、アレン兄弟がアラバマ州マッスル・ショールズの高名なるフェイム・スタジオで録り、エレクトリック・レディ・スタジオのジミに託したもの。ジミは彼らの録音を当時のR&Bの枠を越え、ロックとリズム&ブルースの混合へと昇華させる術を心得ていた。ジミを有名にした異種配合の妙が聞ける。

  • ヴィラノヴァ・ジャンクション・ブルース / Villanova Junction Blues

    ウッドストックでの名演以前、1969年5月にジミはこのスタジオ版をビリー・コックスとバディ・マイルズを従え、本作収録の「ヒア・マイ・トラインAカミン」と「ブリーディング・ハート」を産んだのと同じセッションで残していた。ついに完成を見ることはなかったが、この曲はジミが形にしたいと願って止まなかった創意豊かな発想の一例としてそびえ立っている。

  • イージー・ライダー/MLKジャム(キャプテン・ココナッツ) / Ezy Ryder/MLK Jam [Captain Coconut]