1. ねえってば、ジョージ 2. ビッグ・ホイール 3. 雲のてっぺんで 4. ティーンエイジで荒稼ぎ 5. デジタル・ゴースト 6. 連れてくればいいでしょ。 7. Mr. Bad Man 8. 悪態 |
9. 消えゆく少女 10. 秘密の魔法 11. 悪魔と神様 12. 甘い交わり 13. ファザーズ・サン 14. あなた好み 15. コード・レッド 16. ルースターパー・ブリッジ |
17. ビューティ・オブ・スピード 18. ほとんどバラ色 19. ベルベット革命 20. 太陽の狂気 21. 仲間のボーナス 22. スモーキー・ジョー 23. 貴方のドラゴン |
現代のシンガーソングライターの中でも、とびきり歯に衣着せぬ、クリエイティヴな一人であるトーリ・エイモスが、9作目となるスタジオアルバムとともに戻ってきました。仲間を連れて。 『アメリカ人形軍団』で耳にするのは、これまで私達が聴いたこともないトーリ・エイモス。そこでの彼女は、5人のまったく異なるキャラクターが合体した一人の女性を演じています。何世紀も続く父権社会によってあらゆる意味で分断されてしまった女性の本質が、本来の力を取り戻すべく集結。そうしてエイモスと4人の女性像によって描かれるのは、今日の女性たちに課された役割分担。テーマおよび音楽性が、過去のどの作品よりも広範囲にわたって描写されています。 エイモス自身、5人の女性たちが一気にその姿を現し始めた時は当惑したと言っています。従来のように、曲は彼女のベーセンドルファー・ピアノから、湧き上がるように生まれましたが、今回は何かが違っていたと語っています。「曲が姿を現した時、私にはほとんど完成した形で聞こえたの。普段は、一定の枠の中に収まっているもの。でも今回はその枠を超えていたことに気づいたから、私自身、興奮したわ」 枠を超えて、異なる声、異なるイデア。それらは今にもはっきりと完全な形でその姿を現わそうとしていました。その女性たちには独自の容姿があり、ファッションセンスがありながら、父権社会の足かせによって本来の自分を曝け出すことに制約を受けていた事(特に自分の役割)について、言うべき大切な何かがあったのです。 「牧師の娘として育ってきた私には、宗教における政治性が理解できる。だから今が、保守的キリスト教の時代だということもよくわかるようになってきたわ」と言うエイモス。「女性は母親か娼婦か、その二つに分けられる。白か黒か。ピアノを弾く人間としては黒と白の関係は熟知している。鍵盤の世界を外れたところでは、それは受け入れられないものなのよ」 ここでエイモスが目を向けたのは、女性という性が、そのすべての異なる側面も含めて、神聖とみなされていた時代。「ギリシアの女神たちへと時代を遡ってみたの。そしてデモを聴き返しながら、その曲から浮かび上がってくる人物像と曲を結び付けていったのよ」
レコーディングは英国コーンウォールのマーシャン・エンジニアリング・スタジオで行われました。エイモスにとってですら、自分に忠実にという点で、彼女たちからは学ぶことが多かったと言います。「何年間も私にはイメージがつきまとっていて、それは必ずしも本当の私と同じではなかったわ。それまでにいくつかの選択はしてきた。かといって、その選択がストーリーの全容だとは限らないの。4人の女性たちは身をもって私に示してくれたんだと思う。本当の自分にまだ私は行き着いていなかった、と。今はこの赤髪と同じくらい、リアルな自分になれたんだと思うの」 過去のアルバムの多くで、彼女はひとつのテーマを掲げてきました。「その時々に一つのパーソナリティを掘り下げてきたのよ」と彼女は言う。「だからすべてのレコードをとってみれば、私がそういった女性の個性や特性をずっと探求し続けてきたことになるの。音楽という叙述の形式で。それらをすべて一つにすることで、完全な一人の女性が出来上がる、というわけよ」 それぞれの女性たちにはブログが開設され、その姿とともに性格もより明確になっていく予定です(http://www.toriamos.com/)。「写真や曲を通じて、彼女のことをもっと知るはずよ。そしてさらに先が書かれていく必要があるわ」とエイモスは言う。「彼女たちの関係はさらに入り組んでくるわ。マルチメディアプロジェクトの即興性がとても気に入っているの。大勢のオーディエンスの目の前でのインプロヴィゼーション。そのことで5人の女性たちは個々が冒険し、発展していけるのよ。単に人物描写をするだけのメディアに閉じ込めておくのではなく。こうすることで、彼女たち自身、みんなの見ている目の前で学び、成長していける、というわけ」 又、彼女たちの姿は、5月からスタートし12月まで続くというエイモスのツアーを通じて、より明確になっていくでしょう。毎晩、ピップ、クライド、イザベル、もしくはサンタがオープニングをつとめ、トーリへとステージをつなぐ。「彼女たちには当然、それぞれの衣装もあるし、一人ひとりが独立した女性なのよ。だからその日のサウンドチェックをやってみるまで、誰がステージに立つことになるのか、わからないわ。その時、世界で起こっていることによって決まってくるんでしょうね」。女性たちの寛容さに甘え、トーリは自身のキャリアを代表する楽曲はもちろんのこと、その晩、必ずしもその場にいない女性たちの楽曲も演奏するといいます。「トーリにはカバーもできるのよ。彼女はカバーをやることで知られているの」と冗談めかしながらトーリが言及するのは、2001年に発表され、好評を博したカバー集『ストレンジ・リトル・ガールズ』のこと。その時も楽曲ごとに違うキャラクターに扮した写真が載せられていたことを、ファンは覚えているはずです。今となっては『アメリカ人形軍団』を予知するアルバムだったのかもしれません。 私達全員の中にいるであろうピップ、クライド、イザベル、サンタ、そして、当然ながらトーリ。エイモスは彼女たち全員を呼び出し、本来彼女たち自身のものである当然の権利を行使し、主張させているのです。エイモスが男性を好きではないのかというとそんなことはなく(その証拠に彼女は結婚している)、抑圧しようとする者に警鐘を鳴らしているのです。 「この世の中は父権的な体制によって築き上げられてきたわ。私はそんな奴らを探し出してやるのよ」。しかし、警鐘に耳を貸すべきは彼らだけではない。「アメリカの女性たち自身、気づかねばならないわ。私が火を持って戸口に立っていることを。彼女たちはそのことを知るべきよ。彼女たちの娘もその犠牲の矢面に立つのかもしれないことを。全員が全員そうだとは言わないけれど。私達女性をコントロールして、自分のイデオロギーを押し付けようとしている連中に対して、私達自身が疑問を抱かない限り、それは自らすすんで口輪をかけられるような行為であって、それは許されるべきことではないから」 |