「ライオット・アクト」に伴うオフィシャル・インタビュー一挙公開!!
2002年9月9日、パール・ジャムの拠点シアトルにて収録されたアルバム「ライオット・アクト」に伴うオフィシャル・インタビューを全て公開!

 ●エディ・ヴェダー(インタビュアー:新谷洋子氏)
 ●マイク・マクレディ&ストーン・ゴッサード(インタビュアー:新谷洋子氏)
 ●ジェフ・アメン&マット・キャメロン(インタビュアー:新谷洋子氏)
 ●エディ・ヴェダー(インタビュアー:染野芳輝氏)
 ●マイク・マクレディ&ストーン・ゴッサード(インタビュアー:染野芳輝氏)
 ●ジェフ・アメン&マット・キャメロン(インタビュアー:染野芳輝氏)



エディ・ヴェダー(インタビュアー:染野芳輝氏)

染野:レコーディングにモティヴェーションが向かっていく段階についてお聞きしたいのと、それからそれはいつ頃だったんですか?
エディ:一番難しいのは起きることなんだ。スタジオに行くのは簡単さ。ベッドから出るのが大変だね。レコーディングはバンドのメンバーやアダム・カスパーやアシスタント等人も場所もとてもいい雰囲気が出来ていたから行くのが楽しみなんだ。毎日会うのを楽しみにしていたんだ。宿題がちゃんとできていると楽しみだけど、やっていなかったり、準備不足だったりすると気が重くなるだろう。でも、準備不足でスタジオに行っても何かポジティヴなことが起きるとわかっているし、物事がはかどることもわかっているからね。クリスマスと一緒で、プレゼントを全部そろえたら皆にあげるのが楽しみでならないけど、プレゼントを全然買ってなくて、どんどんクリスマスが近づいてくるとクリスマスが嫌になるのと一緒で、曲もできあがっているとレコーディングをするのが楽しみでならない。まだ出来上がってなかったり、遅れていたりすると、そこまで楽しみではないんだ。ちょうど半々だったかな。半分は曲が出来上がっていたけど、残りはとりあえずスタジオに入って何が起こるかみてみようって感じだったね。

染野:確かにI am mineは去年披露されていたし、ということは何曲かはすでにあったんですよね。
エディ:そうだね。あの曲はちょうど1年ぐらい前に書いた曲で、あの曲は確かデンマークでの事件(ロスキルド)の後に書いた初めての曲だったんだ。

染野:一番気になっていたのは9月のテロ事件だったんですけど、どう受け止められていたかを知りたいのですが。
エディ:あれは難しい事件だった。言葉にするのは難しいね。個人的には、特に最近悲嘆しているというよりは….人々はすでに十分に悲しんだし、愛する人や友達を亡くした人々や家族に与えた影響に対しても遺憾の意を表したし、バンドとしてもロスキルドでの惨劇を経験して、その亡くなられた人達の家族や友達への影響などを目の当たりにしていたので、人生が変わってしまうんだよね。と同時に、僕は歌詞に反映させたくてエネルギーを注いだのは「何故こんなことが起きてしまったか」なんだ。僕は宗教的な違いや主導者への忠誠心のせいだけでなく、外政や欲や商業だと思うんだ。

染野:冷戦が終わったといわれながら、南北問題が健在しているというのは同じような理由だと思うのですが、それに関してはどう思われますか?
エディ:僕を含めてなんだけど、今はアメリカ人として自己を省みる時だと思うんだ。そして消費者としての自己もね。世界の人口のたった20%が世界中の資源の80%を消費していることの認識とかね。アメリカには偽りの「自由」意識があると思うんだ。コカ・コーラは12種類から選べるから、選挙で大統領候補は2人しかいなくても気にせずに安心しているんだ。物事に関するプライオリティがおかしいんだよね。9月11日以降、人々が自己の見直しや、将来の子供達の事を考えると期待したんだけど、実際はそうはならなかったので、残念に思う。

染野:ブッシュはイラクを攻撃しようとしているし。
エディ:まさにそうなんだ。我々アメリカ人は戦争というのが日常に起こるものだと思うようになるのか?そして我々の軍隊が無差別に爆弾を落としているのを横目に普通に生活を続けられるのだろうか。それが世界のコミュニティの一員として、最善の参加の仕方なのか?世界の警察官でいるのが良いのか?僕が思うのは、人々の「恐怖心」をあおることでアメリカが戦争をする事を正当化している気がするんだ。そして、個人的には戦争をすることの方が、軍を派遣しないように、罪のない人々を殺さないように外政を変える事よりも怖いと思うんだ。

染野:そういう中で自由の意味、在り方とかを問い直すことは曲作りのモティヴェーションにもなったと思うのですが、この機会にそういったことは如実に曲に反映されてますか?
エディ:できる限りね。欲について書いたり、できるだけポエティック(詩的)にしたつもりなんだ。例えば”Weeds with big leaves, steeling light from what’s beneath”(green deseaseより)という歌詞の一文があるんだけど、資本主義というのはある意味私欲を思いっきり肥やしても誰も止める人がいないんだ。でも、人として自分のまわりに何も持っていない人や、人種、社会的地位のために何も手に入れられない人がいるのに、自分の豊かさを喜べるのだろう。

染野:エディの歌詞はいつも難解でイメージをするのに苦労するのですが、今回は直接的な表現をされているところがありますよね。何か書くにあたって違いがあったんですね。
エディ:いいね。過去にはなぞなぞのような歌詞を書くのが楽しくもあったんだ。でも、今回はコミュニケーションを取るのが大事だと思ったし、皆とアイデアを共有したりもね。もしかしたら、成長の過程だけだったかもしれない。賢くみせたくて、難しく書いてみたりとかもせず、コミュニケーションを取りたかったんだ。自分でもよくわからないけど、loveという言葉も使えるようになったし。この時に言わなくてどうするって気分だったんだよね。

染野:all you need is loveのところを言ってるんですね。
エディ:love is all you needね。そうそう。やっぱり歌うのはちょっと抵抗があるんだけど、伝えるという事がその次に大切だからね。例えば最新のテクノロジーを使ってコミュニケーションを取ることによって、我々を救ってくれるんだ。この先50年人類がすめないほど環境が壊されずに済むんだ。たとえば地球の写真を衛星から撮ると、人間は写ってないんだ。無限の宇宙に浮かぶ緑と青色の球体なんだよね。とても儚いものなんだよね。確か92年だったと思うんだけど、デトロイトのバーで会った宇宙飛行士の話を忘れないよ。宇宙に出て地球を見ると、大気がまるで玉葱の皮ぐらいに薄く見えて、そこで彼は大至急地球に戻って、いかにこの大気が儚いものかを伝えたい衝動に駆られたらしいんだ。どんなに自分達の住んでいる環境を大事にすべきか言葉では言えないぐらいなんだってね。そのイメージをずっと歌詞に使おうと思っていて、Bush Leaguerの中に”with onion skin plausibility of life”(世の中というのは玉葱の皮のようにはかないよ)と言う風に書いたと思うんだけど、コミュニケーションを取る事によって彼の言葉とかが世の中に広まるんだ。今は、人類が、そして人類の中でも特定の人達が今後の地球のありかたを握っていると思う。そしてその特定の人達というのは、大企業に勤めていて、彼等は自分たちの経済的利益を考慮した上で地球の環境を操っていくんだ。だから、人々はちゃんとこの事態を認識した上で、必要に応じて抵抗もすべきで、本当にそんな人々に牛耳られたら、我々は何もできなくなってしまうんだ。今でも我々の存在が消えていく気がして、そんな中WTOの抗議運動は大企業に対して立ち上がったという意味では重要だったと思うよ。

染野:そういう中でパール・ジャムの音楽が果たす役割が当然あると思いますが、それはどういったものですか。
エディ:流れって?(WTO抗議運動とか、世界を変えたりとか、というのはおおげさかもしれませんが)世界を変える?ワオ。僕らはただのバンドさ。曲を書いたりするけど、ダンス・ミュージックを書いてるわけではなく、自分たちの頭の中、心の中にある事をレコードに反映させているだけなんだ。僕達のコンサートを見にくる人達は自分達の好きな曲を聴いて、演奏しているのをみにきているだけだと思うんだ。個人としては、2000年の大統領選でラルフ・ネーターがディベート(大統領選にむけての討論会)に参加できるように支援をしたりして、大統領選がもっと意味のある意義のあるものなると願っていたんだ。その時は、自分が世の中に影響を与えている気がしたけどね。パール・ジャムはバンドさ。普段僕も、週の中で3日ぐらいは5時を過ぎればビールをひっかけながら友達と音楽を演奏するんだ。でも、皆でそういった話もするんだ。ただ不満不平を言っているわけではなく、答えはどこかにあると思っているし、自分達よりもこういった事に詳しい人々もいるし、この間のファンクラブの会報誌に興味を持てば情報として読めるように入れたりもしたし。ファンは自分達でそれは判断してくれて良いと思ってるし、僕達は提案をする事は悪いことでないと思っているけど、そこまでだ。

=ここでHoward Zinn, Naom Chomsky, Daniel Quinnの具体名が出る。

染野:このアルバム、まだタイトルが決まってないようですが
エディ:今すぐにでも決めようか。紙をくれればここで打つよ。
染野:そのアルバムは今までの中で開放感みたいなものを感じたのですが、エディにとってどんなアルバムなのかということと、どんな達成感というのがありますか?
エディ:「日本に愛をこめて」なんてどお?いいタイトルでしょ?(笑) どんなアルバムというのは言えないね。あまりにも近い存在だから。それをしようとすると自分にもっと仕事が課せられること事になるね。(笑)とても納得しているアルバムだ。自分達のスタンダードに見合うものだと思うし、自分達として良いものを作ろうとしているから、それができていればハッピーだ。ちょうど子供を産むのと似ているよね。産む行程は大変で、産まれて初めてそれを見る。そこでホッと一息つくんだ。頭の形がちょっとゆがんでいるかも知れないけど、そのうち丸くなるとわかっている。曲もそんな感じだ。いつもアルバムを作るのはすごく集中力を要するプロセスで、特に納得の行く歌詞を書かないといけないときは特にそうだ。トム・ウェイツの言葉を引用すると「頭の中に曲が何曲もあって、それは外に出さないと金にならないし、常にどうしようか悩みの種でもあった。曲をようやく作り終え、頭もすっきりしたところで、さぁ、お父さんの為に稼いできておくれ」と。(笑)



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