まずは分りやすい点から始めよう。そう、JJ72は全員ティーンエイジャーだ。シンガーのマーク・グリーニー以外誰もその名前の意味を知らない。そして彼はジャーナリストたちが次々と彼に押し付けてくる様々なバカバカしい理論にちょっと迷惑している。(ジャニス・ジョップリンが死んだ時のストーン計測の体重だとか?ドイツの飛行機だとか?)そして、彼らは同期の連中がアマチュアランクに聴こえるほど、気迫のこもった強烈なサウンドすらクリエート済みなのだ。

「ボクにとって特別な音楽があまりナイなぁって感じたのが、自分たちで始めた全てのキッカケだと確信してるんだ」とマークは語る。「本当にシンプルなギターミュージックってのは、クラシック・ミュージックやマリア・カラスのような人を聴いているのと同じような効果があるって感じるんだ。『Closer』を始めから最後まで聴く事とか…あれはボクにとってはクラッシック・ミュージックだからね」。

Joy Divisionは、マークが受け入れる数少ないバンドの1つだったとインタビュアーに告げて以来、JJに憑きまとっているバンドだ。(ついでに彼はまたノルウェーのポップ・ヒーローであるA-Haの大ファンでもある。氷河期時代に流行った陰気な曲「Take On Me」が特に)。しかし彼らの驚くべきデビュー・アルバムの魅惑的な挽歌「Oxygen」、豪奢なスタッカートの「October Swimmer」、或いはオブリークな音域の「Snow」を聴けば、ただのディビジョン系サウンドと云うだけじゃなく、天真爛漫ではあるが威厳があるという共通する感性も持っていて、ペプシチャートのDr.Foxのくだらないトークに比べ音楽にはもっと意味があるんだという信念がある。

そう言い放ってはみたが、実はこのバンドは最も奥ゆかしくはじまったのだ。「ボクがマークのとこに歩み寄っていったんだ、彼との面識は全くなかったけど」。たった一度きりのドラム・レッスンを受けただけで現代のキース・ムーンだったという事に気づいたという、ドラマーのファーガル・マシューズは語る。「彼がギターをやってたのは知ってて、カッコイイジャケットを着てたし、ちょっと一発声掛けてみるか!ってね」。

色々なベース・プレイヤーとプレイした後、彼らはヒラリー・ウッズに決心を固めた。スクール制作だった「Sweeney Todd」での彼女のツッパったパフォーマンスに刺激を受けたことも理由の一つだった。そして後の残りは(案外)シンプルだったようだ。ジャーナリストやラジオ局に(可愛らしく手書きのレターも同封して)「Oxygen」を送った。突如としてJJはあの有名人以来、アイリッシュ・ロック・バンドの中で最も話題にのぼる1つになった。前例のないラジオ・ワンFMでのオンエアーや、メロディー・メーカー、NME、セレクトに記事が掲載され、そのすべてが今年の「最も期待される新人グループ」の1つとしての地位を得る事に荷担したが、客もプレスも同時に本当の意味で度肝を抜かれたのは、彼らの刺激的なライブ・ショーだった。

特に記憶に残るギグは、大勢の音楽関係者の前で演奏されたロンドンはカムデンにあるファルコンでのギグである。「そのギグに来てるのは殆ど業界関係者だって知ってたから、ボクらはビルの角に沿って並んでる列を見て、“うわぁ〜!”ってビビってたんだ」とマークは笑う。「みんなステージの上に手を添えてこっちを見てるんだ。そこでボクらは、“ところでみなさん、どんなもんでしょうか?”って感じで。実際ツアーっていうのは、バンドで演奏するって事が段々仕事じみてくるよね。でも今のところは勿論世界で一番イイ仕事だけどさ」。

“見逃しちゃならん”という時期があった点で、彼らのギグは初期のスウェードになぞられてきた、そして彼らは今や地元のダブリンではサインを求められる存在でもある。だが、バンドがいつも滞りなく進んでる訳ではない。ロンドンで大成功を収めたそのギグの後、ファーガルの腕に怖ろしく大きな血腫が出来た。「腕がグラディエイターの手みたく大きくなったんだ」とファーガルは笑う。たまに、トラビスのドラマーに似てると言われる事も怖れているらしい。「ファーガルの健康不良には、しょっちゅう悩まされてるよ」とマークは語る。「彼は道を歩いていて突然歩道から転んで落ちるようなヤツなんだよ」。

まぁ、死にそこなった経験と退屈なジャーナリストっぽい質問はさておいて、今やJJ72の台頭は見事なまでに避けられないようだ。彼らのアルバムはスウィートなメランコリック・ラブソング「Not Like You」から、「Surrender」の激しく血も滴るようなソニックな攻撃、真の感動を呼ぶ心臓切開手術の「Improv」へと移動する。全てをリンクしているのは目的への真剣さ、世界は3分間のポップソングで変えられると云う事の現実化なのだ。マークはきっとそんな大そうな事は言わないだろう、「インタビューやらめんどくさい事やらお金の事やらが全部なかったとしても、結局自分はただグレートな、グレートな曲を作りたいってだけなんだ」。