デヴィッド・ボウイ来日記者会見

席に座ると「こんにちは」「元気ですか?」と日本語で挨拶するボウイ。
超満員の報道人の中、にこやかに微笑んで会見はスタート。挙手する記者陣の中から質問者をボウイ自ら選んだり、逆に会場へ質問を投げかけるなど笑いのおこる場面も。以下は記者会見の要約です。
Q: 久々に来日して、約8年ぶりとなりますが、日本の印象は変わりましたか?
BOWIE: この2日間ゆっくりすることができたので、近辺の高層ビル街を歩いたりして前回来日した時と同様にとても楽しく過ごしている。日本の人はとてもおしゃれだと印象に残っていたんだけど、今回さらにおしゃれになっていることに気づいた。自分はパーカーしか持ってきてないのに・・・(笑)

Q: 日本がお好きと聞いているのですが…特に京都がお好きとか。今回は京都にいく計画もありますか?
BOWIE: 大阪公演の際に必ず京都に立ち寄りたいと思っている。せっかく、日本いるのに京都を訪れないわけにはいかないよ。京都には友人が住んでいるので、とても親しみのある土地なんだ。観光客が訪れないような場所を案内してもらえるしね。

Q: 今回のワールドツアーは昨年の10月からスタートして、今年の夏まで続く、久しぶりに大がかりなものですが、どれくらい前から計画なさっていたのでしょうか?
BOWIE: そんなに前から計画していたわけではなく、アルバム「リアリティ」が完成したときに、久々にワールドツアーに出ようと決めたんだ。実際にスタートしてみると、ホントに楽しいよ。まだ春から夏までツアーが続くので、楽しんでいきたいと思っている。日本のみんなも今回のコンサートを楽しんで欲しい。

BOWIE: 僕からも質問したいのですが・・・。
日本の男性が髪を金髪やシルバーに染めている人をよく見かけるのですが、それは今年の流行なんですか?
それと男性が小さい透明な石のような、プラスティックのようなイヤリングをしているのもよく見かけるのですが、それは何なのでしょうか?

(会場から笑い)

Q: ライヴを意識して制作されたという、最新作「リアリティ」の楽曲は、ツアースタート時から、現在まででご自分の中で、どのように変化してきていますか?
BOWIE: 新曲というのはライヴでやればやるほど、力強くなっていくものなんだ。アルバム「リアリティ」の曲をライヴでやることには非常に満足している。今回のツアーは新作だけでなく、前作「HEATHEN」からの曲や、過去のアルバムからの曲、またみんなが満足してくれるようにヒット曲も盛り込んでいるので、楽しんでもらえると思うよ。今回はライブの選曲をするのがとても難しかった。これまでのたくさんのアルバムから曲を選ばなかきゃいけないからね。最終的には自分が満足のいくステージをできるように選曲をしたので、それをみんなが楽しんでくれたらいいな。

BOWIE: 僕からもうひとつ質問があるのですが・・・。
地下鉄の1日乗車券はどの路線でも使えるのですか?それは750円だと知ったのですが・・・。非常に重要なことなんだ!(笑)
某記者: それは営団地下鉄のものは営団地下鉄でしか使えないのでは・・・
BOWIE: なるほど!

Q: 今回の来日公演はどのようなコンサートになるのでしょう?見所を。
BOWIE: シンプルで過度な演出がないステージだから、僕はいちシンガーとしてバンドの演奏とともに曲を聴かせるといったシンプルは内容になっている。このツアーでの曲の解釈の仕方、聴かせ方はとても評判がいいんだ。とても満足しているよ。今回のツアーは僕の今までのツアーの中で最もシンプルなステージだね。そして、このツアーをやっていくうちに僕が35年間、演奏してきた曲の中に共通点があることに気づいたんだ。それは自分にも“スタイル”があるということだ。

Q: 春からVittelのTV-CFが流れていますが、その撮影秘話を教えてください。
BOWIE: とてもおもしろいコマーシャルだよね。あれだけのキャラクターを一辺にみせることができるなんて。ユーモアのあるコマーシャルになったと思うよ。もちろん僕はずっとVittelしか飲まないよ(笑)。

Q: 京都でのオススメの秘密の場所は?
BOWIE: それを言ったら秘密の場所にならないよ。今回そこへ行ってたら報告するよ(笑)。

Q: 日本のミュージシャンで知っている人、よく聴く人はいますか?
BOWIE: 日本の音楽を聴くことはほとんどないんだ。最近は欧米のアーティストがたくさんの作品をリリースしているから、それさえもとても聴ききれてないんだ。それにここ数年は自分の音楽に集中していたいので他のアーティストの作品を聴く機会が少ないんだ。
たぶん次はビートルズあたりが、ビックになると思うよ(笑)。

Q: 最近映画や広告で、70年代や80年代の音楽やビジュアルが取り上げられることが多くありますが、それについてどう思いますか?ご自身の過去の音楽が使われることはどう思いますか?
BOWIE: 僕の音楽がそういうことに使用されることを前向きに捕らえている。というのも僕の世代のミュージシャンの音楽はラジオでオンエアされにくくなっている。だから、コマーシャルで使用されるのはいいことだと思う。実際にVittelのTV-CFがフランスでオンエアされたときに、それをきっかけに若い世代の人達が、僕の音楽を知り、聴いてくれるようになったからね。僕の音楽が映画や広告で使用されるのはラジオ代わりのようなものだとも思っている。重要なのは音楽と、その映画や広告に接点があるかどうかだね。不思議なことに"HEROES"という曲は、5つの全く違うTV-CFで使用されているんだ。その中でどのTV-CFが"HEROES"という曲を象徴しているTV-CFだと言えるのか?みんなの意見が聞きたいね。

BOWIE: 僕から質問していい?
君の番組でNEW KILLER STARをオンエアしている?
某記者: はい
BOWIE: 例外だね(笑)。ありがとう。

Q: 覚えた日本語ってありますか?
BOWIE: “タバコ クダサイ”でも僕は吸わないけどね(笑)。日本は日本語ができなくても、過ごしやすい国だと思う、特に東京は。ここ数年は英語ができる人が増えていると感じた。都心部以外でもそうだね。それに日本人はみんなとても親切で、道をたずねた時に英語で説明できない人は手を引っ張って、そこまで連れていってくれたりする。蕎麦屋やうどんやに行きたいと思って道をたずねると、そこまで連れていってくれたことがあるんだ。こんな経験ができるのは日本だけだね、ホントに素晴らしい国だよ。僕の下手な日本語で、例えば“エレファント(象)ハ、ドコデスカ?”と聞いたら、日本ではちゃんと象がいるところへ連れていってくれるんだよ(笑)。

Q: “タバコください”はいつ覚えたんですか?
BOWIE: 1973年の初来日の時に覚えた最初の日本語だよ(笑)。“コレハ、シガレット デズ”
あと1ヶ月くらい滞在できたら、もっと日本語を思い出せると思うよ。めったに訪れない国の言葉はなかなか覚えられないね。今回、日本へ向かう飛行機の中でなかなか日本語が思い出せなくて焦ったんだけど、日本に着いてみると結構思い出せるものだね。だから、あと1ヶ月も滞在できれば、みんなと立派な会話ができるようになるね(笑)。込み入った話もね(笑)。

Q: 歳をとることを恐れる人が多いと思いますが、NEVER GET OLDという曲を歌っているあなたにとって歳をとることはどういうことですか?
BOWIE: 確かに僕も40代のころは歳をとるのが恐かった。今、60歳を前にして歳をとることを楽しめるようになった。若いころに持っていたこだわりが徐々になくなってゆき、人生の中で何が大切なことなのかが見えてくるようになった。本当に大切なことはそんなに多くはないんだ。人に対する思いやり、地球、家族を大事にすること、それが生きていく上で最も大切なことなんだ。若いころは自分のキャリアや野望にこだわり過ぎて、なかなか気づかないものなんだ・・・。こうやってダラダラ話しちゃうなんて、僕はなんて退屈なヤツなんだ(笑)。

Q: これまでに様々な表現や方法論で音楽を発表してきましたが、今回はとてもシンプルなロックンロールに戻っていますね。それについてはどう考えていますか?
BOWIE: 時々自分の本質を見つめなおすことがあるんだ。自分にとって曲創りとはどういうことなのか?ステージで演奏するってことはどういう意味を持つのか?と考えた時に、原点に戻ろうと思うときがある。それが今なんだ。この先、実験的なことをやるかもしれないけど、その時は自分を見つめ直した上で、先に進んでいくのだろう。自分のキャリアを振り返ると確かに過激なこともやってきたけど、今はシンプルな自分の本質に立ち戻っている。それは創作の息を吸ったり吐いたりする、つまりアーティストの肺の部分のようなものだね。

Q: 今、あなたが18歳だったら、ロックンロールをやっていると思いますか?
BOWIE: 現在の混沌とした世の中で、若いアーティスト達は自分のやっていることに意義を見いだせなくて、悩んでいる人が多いと思う。もし僕が18歳だったら、敢えてその中に入ろうと思わないだろう。精神的に崇高なものを求めているかもしれない。僕の世代でも若い頃にやったように、リュックサックを背負ってインドを一人旅したりして、精神的な世界を追求しているだろう。お坊さんになっているかもしれないね、それもギターをガンガン弾くお坊さんにね(笑)。
本社ビルのエントランス・ディスプレイ

来日を記念して、本社ビルのエントランスがボウイでいっぱいです。
期間は3月末まで。一般の方への開放は残念ながらしておりませんが、 通りがかりの際にチラッと覗いてみてください。
一番右側は、最新のツアーポスターです。

▼ こちらがエントランス・ディスプレイの原画