04年にもブッシュ政権打倒をめざすミュージシャンたちが大挙参加した「ヴォート・フォー・チェンジ」ツアーのリーダー役を務め、ジョン・ケリー上院議員を熱心に応援したが敗北・・・。 2008年4月、ブルースは「オバマ上院議員は次期大統領にふさわしい人格的深みと思慮深さと柔軟性を持っている。彼は俺が過去35年の間に自分の音楽の中で描いてきたアメリカに語りかける」と声明をだし、オバマ氏はすぐに、ブルースの歌うアメリカは「我々の未来として共有するヴィジョン」と発表。彼の集会で〈ザ・ライジング〉がテーマソングとして流されるようになった(11月4日夜の当選後のグラント・パークでの次期大統領のスピーチの直後に流れたのも、その曲だった)。 10月16日にはニューヨークでビリー・ジョエルと組んで、選挙運動の資金集めのためのコンサートを行い、ブルースとビリーがお互いの曲にも参加し合うという特別なパフォーマンスを披露。オバマ氏は楽屋でミッシェル夫人に「大統領に立候補したのは、私がブルース・スプリングスティーンになれないからだ」と語ったそうである。 そして投票日直前の11月2日には、激戦州のオハイオ州クリーヴランドに、妻のパティ・スキャルファと3人の子供たちを伴って出向き、8万人の前で歌い、オバマ一家と一緒に舞台に立った。ブルースのセットの後に登場した上院議員は彼をこう讃えた。「音楽を通して皆さんの人生に入りこみ、アメリカの庶民の物語を語る一握りの人たちがいます。ブルース・スプリングスティーンはそういった人たちの一人です」。 その集会で「オバマ上院議員に捧げます」との紹介で、パティと一緒に歌った新曲が本作の表題曲〈ワーキング・オン・ア・ドリーム〉だった。 「俺の引いたカードの手はひどかった」「土砂降りの中、ハンマーを打ち下ろし、手は荒れてしまい」とヴァースでは苦闘を歌うが、コーラスでは「夢はいつか自分のものになるはず」と誠実な愛と真摯な努力によって夢を取り戻せると希望をこめて歌う。すべての夢を追い続ける人々へ向けて高らかに歌い上げ、希望と勇気を与えてくれる賛歌。「夢」は、個人の「ドリーム」であるだけでなく、ブルースが長年作品の中で歌い、次期大統領が国民に語りかける「ヴィジョン」でもある。 |
「ワーキング・オン・ア・ドリーム」 |
ここでは、夜は長く、昼は孤独 俺が引いたカードはひどかった 夢を追い続けている 土砂降りの雨の中、ハンマーを打ち下ろす 夢を追い続けている 夢を追い続けている 太陽が昇り、俺は梯子を上る 夢を追い続けている (対訳:三浦久) |