80年代プレイバック 9
1989『バンドブーム』〜ラスト80sは“世界でいちばん熱い夏”だった!〜
昭和から平成へ……。エポックな時と重なる新しいムーヴメメント。それが時代を鳴らすバンドブーム!!!!
僕らのJUST A HERO=BOφWYが登場!
 
  会員番号4番・ファーストおニャン子クラブ=新田恵利のソロデビュー曲「冬のオペラグラス」のヒットチャート独走で始まった1986年。この年、52週間分のオリコン週間ランキングの内、じつに36週間分(30曲)の1位をおニャン子ファミリーがチャートを席巻する前代未聞の一極集中、ニャンニャンパワーが爆発! そんなおニャン子現象を横目に、ひとつのムーヴメントが水面下から沸き上がろうとしていた……。同年3月、BOφWYが4thアルバム『JUST A HERO』を発表した。彼らにとって自身最高のオリコン5位を記録。この1週間後、渋谷屋根裏で伝説のイベント“JUST A BEAT SHOW”が開催され、BOφWY、ザ・ブルーハーツ、レピッシュら後のBEATシーンをリードするツワモノたちが一堂に顔をそろえたのだ。何かが起ころうとしていた。会員番号4番・ファーストおニャン子クラブ=新田恵利のソロデビュー曲「冬のオペラグラス」のヒットチャート独走で始まった1986年。この年、52週間分のオリコン週間ランキングの内、じつに36週間分(30曲)の1位をおニャン子ファミリーがチャートを席巻する前代未聞の一極集中、ニャンニャンパワーが爆発! そんなおニャン子現象を横目に、ひとつのムーヴメントが水面下から沸き上がろうとしていた……。同年3月、BOφWYが4thアルバム『JUST A HERO』を発表した。彼らにとって自身最高のオリコン5位を記録。この1週間後、渋谷屋根裏で伝説のイベント“JUST A BEAT SHOW”が開催され、BOφWY、ザ・ブルーハーツ、レピッシュら後のBEATシーンをリードするツワモノたちが一堂に顔をそろえたのだ。何かが起ころうとしていた。

  トレンディドラマ『男女7人夏物語』がスタートし、TUBEの「シーズン・イン・ザ・サン」が街のBGMとなった86年夏。ff(フォルティシモ)なハウンドドッグと、My Revolutionな渡辺美里のそれぞれ西武球場コンサートが大きな音楽ニュースとなっているなか、BOφWYは初の日本武道館ライヴを大成功に収め、着実に時代の先を進んでいた。そして、むかえた11月。BOφWYは5thアルバム『BEAT EMOTION』を発表。「B・BLUE」「ONLY YOU」など文字どおりBEATを強調したソリッドでポップな楽曲群は、80sティーンネイジャーのCLOUDY HEARTをガッツリと掴み、ついにオリコン1位を獲得。ここで、時代とBOφWYは完全に一致した。その1年後の87年9月。マイケル・ジャクソン来日旋風が吹き荒れるなか、BOφWYは最大のヒット作となる6thアルバム『PSYCHOPATH』を発表。シングル「MARIONETTE」もついにTBS『ザ・ベストテン』で少年隊、光GENJI、中山美穂らをおさえて堂々1位を獲得し、BOφWYは日本音楽界そのものを飲みこんでしまった。同年12月、クリスマスイヴのステージ上で彼ら4人は突如半年後の解散を発表……まさに人気絶頂の時だった。
女の子にモテたいなら、バンドやろうぜ!?
 
  高校3年の始業式から間もない1988年4月5日。教室の黒板に真っ白なチョークで書かれた大きな文字は忘れられない。「今夜BOφWY LAST GIGS」。書き殴ったのは、前年の文化祭でBOφWY完コピバンドを演って、人気者となった友人達だった。僕は尾崎豊をコピーしていたが、この頃はすでにOZAKI自身の人気が低迷していたこともあり「17歳の地図」を上手く演奏するよりも、下手でもいいから「MARIONETTE」をレパートリーにしているバンドのほうが圧倒的に女の子にモテた。ギターケースを持って校内を歩くだけで、誰でも主人公になれた幸せな時代だった。

  さて。わざわざBOφWYの解散ライヴをアピールする友人達に興ざめするクラスメイトもいたが、羨望する者のほうが実はたくさんいたのだ。チケット争奪戦でNTTの電話回線がパンクしたニュースも流れたばかり。好むと好まざるとに関わらずBOφWYは間違いなく僕らの時代のアイコンになっていた。U2やボン・ジョヴィ好きの洋楽派もBOφWYだけは隠れて聴いていた。洋楽の東京ドームこけら落としアーティスト=ミック・ジャガーを前月に観ていた僕は、水道橋駅に着いたらまず帰りの切符を買っておくことを友人達に助言。その時の会話に死語となった「E電」「BIG EGG」が飛び交っていたことは間違いないだろう。BOφWY解散から1か月後の5月3日、CDとなった『LAST GIGS』は一斉に店頭に並び、ライヴアルバム初のミリオンセラーに輝いた。彼らは本当に伝説になってしまった……。
80s最後の青春はDIAMONDSな輝き!
 
  BOφWY解散の前後期。ザ・ブルーハーツ、レッド・ウォーリアーズらが日本武道館のステージに立ち始めたころ、ユニコーン、ZIGGY、レピッシュ、X、ゴーバンズ、筋肉少女隊、JUN SKY WALKER(S)らが次々にメジャーデビューを果たし日本のバンドシーンは活性化した。1988年秋にはトレンディドラマ『君が嘘をついた』の主題歌にプリンセス プリンセスの「GET CRAZY!」が起用され、女の子バンドも一躍クローズアップ。普通の女の子が「私もプリプリみたいになりたい!」と楽器を手にし始めたのもこの頃からだ。ギタリストの中山加奈子が地元横浜の高校出身ということもあってか、僕の周りではプリプリのファンが多かった。印象的だったのは89年高校卒業直後の春。友人が応募して当たったtvk(テレビ神奈川)の公開録画番組のライヴを観に行った(横浜SOGOだったかな)。ヴォーカルの奥居香が「これから発売する新曲を歌います。気にいってもらえると嬉しいです」と、飛びきりポップな曲を披露した。“♪ダイアモンドだね〜ア〜ア〜いくつかの場面”。プリプリの代名詞、史上初のCDシングルのミリオン突破、そして1989年度年間No.1シングルとなる「Diamonds」だった。今でもあのメロディを耳にすると10代最後の時間を過ごした“いくつかの場面”を想いだす。そのB面収録されていたバラード「M」を聴くと、19歳の胸キュンな記憶がいまでも蘇る。あのコは今どうしているのかな……。
いか天、ホコ天の百花繚乱の平成バンド時代!
 
  プリプリが人気絶頂をむかえた1989年は、もう昭和ではなかった。7日間の幻の“昭和64年”を経て、時代は平成という新しい年号をむかえていた。この年の2月にはTBS系深夜番組『平成名物TVいかすバンド天国』が始まっていた。毎週土曜深夜に10組のアマチュアバンドが登場し、複数の審査員たちによってチャンピオンを選出。前週のチャンピオンバンドと競演して勝った方が“イカ天キング”。5週連続でキングとなったバンドは“グランドイカ天キング”となり、必然的なメジャーデビューが約束されるというアマチュアバンドの登竜門番組として人気を博した。実際にこの番組の出演をきっかけにFLYING KIDS、JITTERIN' JINN、RABBIT、BEGIN、たま、BLANKEY JET CITYなど数多くのバンドがメジャーデビューを果たしている。演奏が悪いと画面が小さくなるフェイドアウトや、歯に衣着せぬ辛口の審査批評などの番組構成も楽しかったが、「世の中にこんな凄い、面白いバンドいるのか!」というバンド時代を背景にした世代共感を呼んだことが人気の要因だった。“イカ天”は89年の流行語大賞の大衆賞も受賞。その際、司会の三宅裕司は正しい表記は「いか天」であると指摘したが、当時の番組台本にも“イカ天”とされていることから、その真偽のほどはいまだに不明だ。

  もうひとつの“天国”は、TBSの赤坂ではなく、原宿の“歩行者天国”だった。ローラー族、竹の子族、一世風靡セピアの路上パファーマンス集団が聖地としてきた“ホコ天”は、80年代後半にはアマチュアバンド達がライブ発信地としてストリートを占拠するようになった。象徴だったJUN SKY WALKER(S)は86年からストリートライブを行い、ブレイク直後の88年にもシークレットライブを敢行し“原宿大パニック”を起こした。そして、THE BOOM、The FUSE、KUSU KUSU、remote、AURAなど多くの個性的バンドがこのストリートから巣立っていくことになる。“いか天”の人気とリンクし、89年夏には“ホコ天”参加バンドは100を超える百花繚乱状態となっていた。日曜日ともなるとお気に入りのバンドたちを一目観ようと、全国からファンが原宿に押し寄せ、付近の交通渋滞が社会問題となって何度もニュースで取り上げられている。

  あれから20年──。80sバンドブームの中でひときわ強烈な個性を放っていたユニコーンが、特大ヒットした再始動アルバムを引っ提げ2009年夏もライヴに精を出す。“伝説のバンド”を観にきた若いリスナーを横目に、会場の大半を埋める80s LOVERSの誇らしげな笑顔が何とも言えない。あのころのようにみんなキラキラと輝いている。僕らの時代はまだ終わっちゃいないぜ、と言わんばかりに。
文/安川達也
歴代“いか天キングバンド”一覧
歴代 アーティスト 勝抜数
初代 SLUT&SLASH BAND 2週
2代 GEN 1週
3代 FLYING KIDS 5週[初代グランドキング]
4代 イエロー太陽's 1週
5代 RABBIT 3週
6代 JITTERIN' JINN 1週
7代 セメントミキサーズ 3週
8代 突撃ダンスホール

1週

9代 ダイヤモンズ

1週

10代 宮尾すすむと日本の社長

3週

11代 NORMA JEAN

4週

12代 BEGIN

5週[2代グランドキング]

13代 サイバーニュウニュウ

1週

14代 たま

5週[3代グランドキング]

15代 マルコシアスバンプ

[4代グランドキング]

16代 STONE CRAZY

2週

17代 THE BOOTS

4週

18代 RAMBLE FISH

3週

19代 LITTLE CREATURES

5週[5代グランドキング]

20代 SOLID BOND

1週

21代 LANPA

4週

22代 悪名エレキショー

1週

23代 ジョリーロジャー

1週

24代 COLLAGE

1週

25代 BLANKEY JET CITY

5週[6代グランドキング]

26代 PANIC IN THE ZU!

5週[7代グランドキング]

27代 GLU

4週

28代 EDITION DE LUXE

1週(番組終了)