■収録曲
トラック タイトル time
M01 Rydeen(風と水の思想) 3:30
 
M02 Asian Women 3:09
 
M03 草原の扉 3:16
 
M04 Let's Take A Coffee(コーヒー・ルンバ) 3:55
 
M05 上海月夜 3:58
 
M06 Mythological Falls 3:52
 
M07 One Note Samba 2:57
 
M08 中国女(La Femme Chinoise) 2:56
 
M09 月下美人 2:26
 
M10 新日本紀行 6:23
 
M10 上海月夜(上海反転新解釈) 6:23
 

INTERVIEW


松武秀樹氏

「コンピューターミュージックの本質を世の中に伝えたいなっていうのが、ぼくの活動のテーマなんです」

●ロジック・システムと『To・Gen・Kyo』

----そしてロジック・システムになるんですけど、1981年に結成された松武さんのソ ロ・プロジェクトですね。
「YMOの2回目のワールド・ツアーが終わって、ぽっと間が空いたんですね。それで なにをしようか、と。このへんでYMOとはまたちがう打ち込みの音楽にトライしてみ ようかなって気になったんですね。ぼくならではのテクノ・ポップを作りたいと」
----そのコンセプトはやはり…。
「“If you don't listen this album, you can't enjoy the essence of computer music”ですね」
----ファースト・アルバムの『ロジック・システム』ではなんといっても「ドミノ・ ダンス」が世界中でシングル・カットされて、香港などで大ヒットしたんですよね。
「ライヴもやりましたよ、香港で。なんだかすごい熱気でした。ぼくひとりとコンピ ューター、シンセだけのライヴで、みんなああいうライヴを見るのは初めてだったよ うで驚いてましたね」
----YMOとはまたちがうテクノということで、大きな話題となって。でも、セカンド の『ヴィーナス』では方向性が少し変わりましたね。
「1枚目はどちらかというとヨーロッパ調の暗めのテクノで、こちらはアメリカで すね。ロスでレコーディングしたんです。マイケル・ボディッカーやユートピアのロ ジャー・パウエルに手伝ってもらって」
----ドン・グルーシンらロスの名うてのスタジオ・ミュージシャンも参加してますね。
「なんか途中からすごいことになっちゃって(笑)。だから、ロスのすご腕の ミュージシャンがいっぱい参加してくれて、独特のテクノ・フュージョン的な音になって ますね」
----そしてサード・アルバム『東方快車』がすぐに制作されて…
「あの『東方快車』は、ぼくの鉄道好きから生まれたアルバムで、列車による大陸の 旅っていうコンセプトのアルバムです。ただ、その旅は楽しいだけじゃなくて、あの 頃からきなくさい紛争が起き始めたチェチェンやアフガンといった中央アジアの問題 も意識して作りました。結局のところ、情報の欠如が戦争というものを生むんじゃな いかって思いがあって、大陸横断鉄道が自由に行き来するときがくれば、情報の風通 しがよくなって、あのあたりの戦争も減るんじゃないかなあ、とか」
----このアルバムのリリース後、いったんロジック・システムは活動を休止しましたね
「もうとにかく忙しくなっちゃったんですよね。80年代後半はいまのぼくの仕事につ ながらいろんな活動がいっぱい始まって、シンセやコンピューターMIDIなんかもどん どん普及していって、気がついたら7〜8年ぐらいロジック・システムのレコーディ ングをしてなかった(笑)」
----91年の復活第1弾が、今回再リリースされる『To・Gen・Kyo』でした。
「ひさしぶりにロジック・システムをやろうっていう機運が高まってきて、じゃあ今 度はどういうものをやろうって考えたとき、ぱっと浮かんだのがアジアっていうコン セプトだったんですよ。打ち込みの音楽に全曲中国語のヴォーカルを乗せよう!っ て」
----そのときはなぜアジアだったんでしょう?
「まずひとつはあの頃、アジアン・ポップスが盛り上がっていて、ぼくも大好きだっ たんですよ。ディック・リーとか。そして、アジアのペンタトニック音階を使った摩 訶不思議な打ち込みの音楽をやりたいと思ったんです」
----このアルバムには「ライディーン」の中国語ヴァージョンも入ってますが、この 曲に中国語の詞をつけようと思われたきっかけは?
「まずYMOのカヴァーを、原曲とは全然ちがうアレンジでやりたくなって、“ライディー ン”か“テクノポリス”を中国語のヴォーカル・ヴァージョンでやろうと思ったんで す。でも、“テクノポリス”はどうも歌をつけるのは難しい(笑)。逆に“ライディー ン”はこのカヴァーのようにゆったりしたテンポにすると中国語の歌がとてもよくは まって…。ぱっと聴いただけじゃ、最初はなんの曲かわからないと思いますが (笑)」
----中国語の女声ヴォーカルがすごくマッチしてますね。
「そう。で、ちょっとエロティックな香りもあるでしょ。このアルバムの裏コンセプ トは“エロティックなアジアの旅”なんです。アジアの大平原から夜の歓楽街を巡っ ていくというコンセプトで、男と女の出会いがアジアのいろんな場所でっていう。で も、それらの旅は実は全部、日本で見ていた一夜の夢だったというのが落ちで、それ で本編の最後に富田勲先生の“新日本紀行”のカヴァーが入っているんです。スネー クマン・ショウじゃないけど“ああ、日本はいい国だなあ”っていう(笑)」
----収録曲の中に「LET'S TAKE A COFFEE(コーヒー・ルンバ)」がありますが…。
「これはもともと“お茶しない?”っていう、ま、ナンパのような曲をということで 入れたんですが、91年のオリジナル・リリースのときは中国語ヴァージョンだったん ですよ」
----今回は日本語ヴォーカルのものに差し替えられてますね。
「最初はもちろん中国語ヴァージョンの再録をするはずだったんですが、歌詞を中国 語に変えることに対して、今回は作詞の権利を持つ方の許可が取れなかった。それで オリジナルの日本語の詞のままのヴァージョンに差し替えざるを得なかったんですが、 実はこの日本語ヴォーカル、人間じゃなくてコンピューターが歌っているんです。ヴォ コーダーでもサンプリングでもない。人間の声紋(フォルマント)を自由にシミュレー ションできる、まだ発売前のヴォーカル用のコンピューターを使用しました。言葉の 発音に関しては日本人と外人の声紋のデータを備えていて、今回はあえて英語ヴォー カル用の外人のデータに日本語ヴォーカルを歌わせるって試みをしています。だから、 外人が日本語の歌を歌っているように聞こえるでしょ(笑)」
----聴いていて、コンピューターが歌っているとは気づきませんでした。
「でしょ。災い転じて福となすというか、ひょんなことからこの新しい機械を使うこ とができておもしろかったですね」
----今回はボーナス・トラックも収録されていて、この「上海月夜」の“上海反転新 解釈ヴァージョン”は以前、シングルのカップリングのみで発表されたヴァージョン?
「そうです。ダブ・ヴァージョンなんですけど、これはあまり知られていないけどい いトラックなんで、ぜひみなさんに聴いていただきたかった」
----それにしてもこの『To・Gen・Kyo』というアルバムはとてもポップで、ところどこ ろ新しい試みもあり、コンセプトもしっかりしているとてもいい作品ですね。
「作るときは苦労したんですけどね(笑)。とくに“ライディーン”をどういうふう にカヴァーしようかとか、ずいぶん悩んだ憶えもある。でもその甲斐あって、自分で もすごく気に入っているアルバムになりました。みなさんもぜひ聴いてみてください」