「天網恢々祖にしてポンチャック」第六回
| DAY5(1996/10/4) Singapore→Cairo | |
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（イ・パクサの独白） しっかし退屈だな。ここ。何だっけシンガポールか？女は不細工だし街並みが綺麗なだけで他には何もなし。ホテルは豪華だが、いいとこそれだけだぞ本当に。 えっ？なにぃ。タバコ吸っちゃいけないの、外で？うそだあ。何？法律。知らないよそんなこと、全く。こっちは疲れてるんだからタバコぐらいいいじゃない。あ、そ。ダメ。ったくやってられないぜ、かー、ぺっ、ぺっ、ぺっ。ええええ、道に唾を吐いても行けないのかよ。うるさいなあ白井さん。 で、今日は何処行くの？昨日は腹減って唄えなかったけど、今日は頑張るよ。あ、そう海に行くの。何かいやだなあ俺スーツなんだよ。ああ泳ぐ訳じゃない。はいはい行きます行きます。あれっ？白井さんは別行動？ロケハンでタイガーバームガーデンへ？何それ。食べ物？。ま、いいか。 あ、しまった女房に電話するの忘れた。怒ってるかな、大丈夫かな、昨日電話した時も何か迷惑そうだったからなあ。やっぱり一日に五回も電話する必要ないかな。四回にするかな。あ、タクシー。しかしタクシー乗って飛行機乗ってタクシー乗って、そればっかりだね、ここんところ。 海だ海だ海だ、うわあ綺麗だなあ。太平洋？大西洋？やっほぉ。うるさい？あははは。韓国はどっち？分からない？そうか。そうだよな。はいはい唄いますよお。 アリアリィスリリィアラリヨォ お腹が空いた。テンジャンチゲ食べようよぉ。えええええええ。ホテルに戻るの？ここで食べようよ。あ、そう。このへんレストランが無いの。しょうがないなあ。ホテルに戻って近所で韓国料理店を探す？いやもういいよホテルで食べよう。白飯さえ手に入れれば、女房のキムチがあるからさ…キムチ………ああああああああっ。しまったあああっ。 バンコクのホテルの冷蔵庫にキムチを全部忘れてきた！！ ねえ。戻ろうよ。バンコク。ダメ？…ケチ。いいじゃん。キムチさあ。大事なんだよ。女房に怒られるってば。頼むよぉ。キムさん持ってきてくれないかなぁ。あ、もう来ないの。うわあ。どうしようこれから。………あ…………そうだ。スーツケースにカクテキが少し残ってた。やっほう。何とかなるぞこれで。いやいやあ。すいませんねえ皆さん心配かけまして。さあ食べますか食べますか。 うわ。まずいなこのご飯。 はいはい。次はどこですか。唄いますよ唄いますよ。ああ、その白井さんが行ったタイガーなんとかね。結構遠いのね。またタクシー。はいはい。うわああああああああ悪趣味というか俺なりの美学にぴったりの場所だな。極彩色とはこのことね。はい唄いますよ唄いますよ。えっ？今日はおしまい？何だよそれじゃ観光旅行と一緒じゃん。あ、観光旅行がコンセプトなんだ。じゃあしょうがないねえ。ところでコンセプトって何？ ま、当然のことだが夕食は韓国料理だな。おっ。シンガポールのテンジャンチゲも旨いではないか。いやあママさん、美味な店があるって聞きつけて、はるばるソウルから飛んできたんだから、サービスしてよぉ。それはともかくあそこに飾ってある扇子を俺に頂戴、ダメ？ああダメかあ、せっかくソウルから来たのに。 ふぅ。喰った喰った。腹一杯だ腹一杯だ。寝よう寝よう。 えっ。これからエジプトに行くの！？そりゃ無茶だよ１１時だよ夜だから迷っちゃうよ迷子になるよ迷子になると女房にしかられるし、第一睡眠不足で死んじゃうよ。ああ８時間あるからたっぷり飛行機で眠れるって。いやそれにしたって俺もう４２歳だよ中年だよ関節とか腰にそろそろ問題が出てくる歳だよ、ここでもう一泊しようよお。 ダメ？日程の都合？うわあ。勘弁してよ。本当のこと言うけど飛行機が怖いの。すごく。機内でいつもそわそわしてるでしょ？あれ落ち着きがないんじゃなくて、単純に離陸が怖い着陸が怖い。揺れたりしたらもう大変。だからさぁ。ダメ。あ、そ、しょうがないねえ。じゃあさ、ちょっと待って…女房に電話しなきゃ。 ……てな訳で、ほんとおっに何もない国シンガポールを深夜に出発し我々はエジプトに向かった。はたしてキムチもない我々の一行はどうなるか。多分どうもなんないけど。 |
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