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「汽車に乗って」以降、約8ヵ月ぶりとなるYUKIの新曲「メッセージ」は、ソロ初となるクリスマス・ソング。ラヴァーズ・ロックのスロウなリズムが心地良く流れる優しい曲だ。

「元々のデモ音源はラヴァーズではなくて8ビートの速い曲でした。これはよく覚えているんですけど、朝、トレーニングに行くためにデモを聴きながら歩いていたら、突然 “これは絶対ラヴァーズにしたほうがいい!”と閃いて、すぐディレクターに電話したんです、朝7時に(笑)。その時に“雪が降らないクリスマス”というイメージも湧いてきました。私が生まれた場所ではクリスマスに雪が降るというのは当たり前のことだったんですけど、東京に来てクリスマスに雪が降らなくて、なかなかそれに慣れなかった。そんな情景が浮かんできたんです」

 知らず知らずのうちに物語に引き込まれ、いつの間にかワクワクしながらクリスマスの夜を待つ、気ままで可愛い主人公の気分にさせてくれるこの曲。そんなとびきりステキなクリスマス・ソングに、YUKIは「メッセージ」と名付けた。

「私のクリスマスのイメージは、感謝の気持ちを伝えたり、恋の告白をしたり、人から人に何かを伝える日というイメージがあるんです。それは言葉だけではなくて、大切な人の仕草だったり眼差しだったり。歌詞の中にも〈君がくれたメッセージ歌いながら〉という歌詞があるんですけど、私は今までいろいろな人に助けられてきて、人からいろいろなことを学んで、人と携わったことが必ず自分の中に残っていて。それはその人からもらった“メッセージ=伝言”だと思っているんです。例えば想像もつかないような景色や見たこともないようなものを見た時にもそこから伝わってくる何かがあって、それも私にとってはすべてメッセージなんです」

 今回は楽しいことばかりを歌詞に入れたかったというYUKI。そんなクリスマスのワクワクするような言葉の中に顔を覗かせるのが、少しだけ切なくて、でもどこか愛しい海の風景だ。

「私にとっては海が幼い頃の原風景なんです。一番多感な時に過ごしたところだし、その日にあったことや思ったことを適当に歌にして、いつも家の前の海で歌っていました。「汽車に乗って」を作ってから、やっぱり自分の原風景からは逃れられないんだなと思っていて、今は頭の中にある景色や自分の持っているものをすべて歌に出すことが出来ているんです。ここ数年嫌だなと思っていた自意識もバランスよく歌詞に入れられていて、日記ではない歌として出来上がっている。それが素直に、普通に書けているから、作っていてすごく楽しいんです」

そして、この曲のハッピーなクリスマス気分を一層盛り上げているのが、まるでやわらかな雪がしんしんと降り積もるように幾重にも重なるYUKIのコーラスだ。

「このハーモニーのレコーディングは本当に大変でした。全然大変そうに聴こえないんですけど、ハーモニーだけで4時間以上かかっているんです。ウイーン合唱団みたいに、背中に羽をつけた天使の気持ちで歌っています(笑)」

誰もが幸せなクリスマスを過ごせますように。そして、今年のクリスマスは雪が降りますように(笑)。そんなYUKIからの“メッセージ”を込めて――Happy Merry Christmas!

Interview & Text by Kazue Yaguma