1999年4月28日、オープン初日にして、あえなくクローズすることになってしまったお台場のクラブ、MOTHER。
しかし、オープニング・ウィーク随一のテクノ・イベントであり、ファン待望のDJ HELLが来日した「GERMANY DYNAMYTE」は、そんな不運に見舞われながらも、驚くほどの機動力でお台場から新宿LIQUID ROOMへと開催地を移し、結果的には大盛況のグッド・パーティとなった。


会場は、MOTHERとメインフロアのRED ZONEがDJ HELL、SHUFFLEMASTER、Q'HEYによるDJアクト、ラウンジフロアのLOVE ZONEはENOとALEXによるディープ・ハウス中心の和めるスペースとなっていた。

一番手のSHUFFLEMASTERは、得意のシカゴ物を効果的に織りまぜながら、ハードな展開でクラウドをのっけから盛り上げる。
知的かつ迫力のあるプレイでフロアを魅了する。

さて、メインDJのHELLだが、日本に到着するやいなや、レコード・ケースとスーツケースが紛失するという災難に合い、休憩も取らずに渋谷のテクニークでレコードを新たに買い揃えたそう。
前半はフロア・オリエンテッドなテクノを展開し、後半徐々に「SWEET DREAMS」のような80年代のディスコ、エレクトロ、ブレイクビーツといったジャンルのカテゴリーを超えた選曲を披露してくれた。
おそらく本人にとっては、普段使っているレコードがなかったために会心の出来とは言えなかったのかもしれない。


ラウンジのLOVE ZONEは、ENO→ALEXと絶妙なタッグでディープ・ハウス系の音を存分に聴かせてくれ、往年のハウス・ファンから若いテクノ・リスナーにいたるまで堪能させてくれていた。
メインフロアのトリを務めたQ'HEYは、いつもながらのハードなプレイでフロアを圧倒。ブレイクからジャストなタイミングでイコライザーをフルにして拳を振り上げるアクションにクラウドが絶叫する様子は、まるでロックのライブのような盛り上がりを見せていた。

アンコールの嵐が鳴り止まない程の熱狂ぶりだった。MOTHER閉店のニュースから少ない情報を頼りに移転開催地のリキッドルームへ辿り着き、パーティを最後まで楽しんだクラウド達とスタッフやDJ達が共有した満足感、達成感といった空気がフロアに充満していた。
ハウス・ファンとテクノ・ファンがクロスオーバーし、それぞれが思い思いに楽しんだ一夜。


音楽のジャンルの垣根や障害を超えて、ダンス・ミュージックが未来へ向かって進化していく可能性、クラブカルチャーを作り上げている人々の熱意、そして、それを愛する人々のパワーを感じた夜だった。

 

GO BACK TO NEWS INDEX