エイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェームスと旧友グラント・W・クラリッジのふたりによって設立されたレーベル、リフレックスは昨年からロンドンのチャリング・クロス駅の裏手にある隠れ家的なクラブ、サウンドシャフトで不定期なパーティー<リフレッシュ>を始めた。基本的にこのパーティー<リフレッシュ>はクロスオーバーな選曲でレーベル関係者やその友人達を中心とした人々に楽しんでもらえることを意図し、それを「ブレインダンス」というキーワードで表現してきた。わずか3ポンド(日本円で約600円)というゲートプレシャーでこのレーベルのアーチストやスタッフ達のセレクションによる音楽や時にはライブステージまでが楽しめるこのパーティーはかつてマドンナやカイリー・ミノーグといった、一見音楽的接点を見い出し辛いと思われるような顔までをみることができたが、それでも入り口ドアでビール瓶片手にグラントは「Love Not Money!(大切なのは金より愛だよ!)」と変わらず笑いながらゲストを迎える。この極めてファミリーな雰囲気こそがまさに「リフレックス」なのである...。

...と少々堅苦しい文体で始めてみましたが、そのリフレックスのアーチストたちが大挙して来日!日本で「ブレインダンス」パーティーを展開するということで、ソニーテクノ・チームは京都、大阪、東京の3都市で行われたパーティーのうち、12月2日の京都メトロと12月5日の東京、恵比須ガーデンホールの2ケ所での模様を見てきました。

京都のクラブシーンでも老舗のメトロはこの日超満員。入り口を入って両脇にあるフロアへの通路は両方とも一人通るのも大変な程の盛況ぶり。フロア奥にあるステージのその奥に置かれたターンテーブルではリチャードとグラントがドラムンベースからエレクトロまで、それでもロンドンでのパーティーにくらべると幾分まとまった感のある選曲でDJを勤め、バーバリーの帽子を被ったマイク・ドレッドやエイフェックス・ツインのTシャツを着たサイロブが次々とライブステージに登場。サイロブのステージの前の時のリチャードの選曲はデジタル・ハードコアばりのドラムンベースが連発!会場はまるでハードコア系のライブさながらのタテノリ状態!!ステージ側からはビールがまかれたりして、もータイヘン!な様相を呈していました。

さて、東京、恵比須のガーデンホールの方はこれまた1,600人からのオーディエンスが詰めかけ、楽屋で本人達も「まるでポップスターのコンサートみたい」とまるで他人事なセリフを吐くような大盛況状態。この日は急遽サム&ヴァリーがライブで出演することになり、さらに豪華なパーティーになりましたが、サム&ヴァリーのADK氏曰く「2日前に急にグラントが電話してきてライブやってくれって言うんですよ」。グラントの方は世界中どこにいてもマイペースなようです。

この日最初のライブはそのサム&ヴァリー。小型のサンプラーなどを操りながらヴォーカルを担当するADK氏とバックトラックを担当するSAMさんのふたりがステージ上に現れ、アルバム「マイ・フェイバリット・クリニック」からの「Horn Cattle」などを演奏。アンスータブル・ロックな世界を余すところなく披露していました。

続いてマイク・ドレッドがステージに登場。日本ではまだ紹介されていない彼ですが、実はコズミック.コマンドの名義でリフレックスにはその初期から関わっていた人物。その独特のグルーブ感覚は地元イギリス以外でも、ドイツはじめヨーロッパで広く支持されています。実はスキンヘッドのマイクはこの日はアフロヘアのウィグにサングラスで登場!ノリノリのステージをみせてくれました。


そして次はサイロブ!このレーベルの看板アーチストの彼ですが、この日実は体調を崩してしまい、出演も危ぶまれました。ところが一旦ライブが始まると何とこの日の出演者全員がステージに登場!サイロブを元気づけようと周りでガンガンに盛り上げていました。実はこの日リチャードがオーディエンスの前に姿を現したのはこの1回のみ。実はライブと交互に行われていたDJはリチャードとグラントが担当していたのですが、DJブースはステージ脇に隠されていて、彼のDJぶりは本人の希望でオーディエンスには見えないようになっていたのです。DMX KREWのMCなども入って元気を取り戻してきたサイロブは後半はサンタのコスチュームに早変わり、珍しく本人のラップなども交え、ノリのあるステージを繰り広げました。

午前2時近くになるとステージにはDMX Krewが登場!日本でもファンが急増加のEd DMXが登場で会場は一気にヒートアップしてきました。鉢巻に小さな日の丸の旗を立てて登場したDMX Krewは途中、いきなり「ひげダンス」まで織りまぜつつエレクトロな世界を展開。詰めかけた女の子のファンも大満足といった感じのステージでした。

そして最後にステージに登場したのはナゾの新人アーチスト、エイジェント30。なんと彼は片言の日本語を話しながらキョーレツな変態エレクトロチックなドラムンベースのトラックを連発!会場も異様な盛り上がりをみせました。最後の曲をメローなトラックで締めくくろうとしたところオーディエンスからブーイングを受けた彼は「ブーって何よーっ!!」と雄叫びを上げつつ演奏を途中でやめたかと思うと、またもや超ド級にキレたトラックをスタートさせ、会場は狂喜乱舞!楽屋で少し話を聞かせてくれたグラントによると、エイジェント30は来年2枚のアルバム・リリースが予定されているとのことなので、これは要チェック!

ということで嵐のように駆け抜けたリフレックス・オールスターズのパーティーでしたが、一番強く受けた印象は、やはり彼らのアットホームぶり。やさしくレーベルを仕切るグラントと髪も切ってさわやか兄さんぶりを漂わせていたリチャードが中心となり、これからも彼ら独特の世界観を繰り広げていくことでしょう。1999年もブレインダンスは止まらない...。

BACK