今年で32周年を迎えることになった、ヨーロッパ最大の音楽見本市「MIDEM」。会場となっているカンヌは、南仏の避暑地と知られる普段は静かな海辺の街だ。しかし、このカンヌ、1月の「MIDEM」と6月の「カンヌ映画祭」の時期は、世界中から多くの業界人と観光客で賑わう。 「MIDEM」の会場もビーチサイドにあるのだが、その近くの船の中が小さな会場になっていたり、ビーチパラソルの下でワインを飲みながらミーティングをしていたり、通常行われるような見本市よりもくつろいだ雰囲気の中で行われるのもこの「MIDEM」の特徴でもある。 メインの会場は、日本でいう「幕張メッセ」のような巨大な4フロアにわかれ、それぞれブースを出店していたり、ヴィデオでプロモーションをしていたり、ターンテーブルが置いてあったりする。 さて、この「MIDEM」、テクノのフィールドでも数多くのレコード会社やレーベルが参加していて、様々なイヴェントや情報交換などが盛んに行われたようだ。 参加したレーベルは、例えば「R&S」「Warp」「React」「EYE-Q」「Axis」「Rephlex」「Deviant」「MFS」そして日本から「Frogman Records」など。大きなレコード会社から小さなインディペンデント・レーベルまで、参加費を払えば誰でも参加でき、特にディストリビューターにプロモーションをしたいレーベルやコネクションを広げたいレーベル・オーナーや無名のアーティストにとっては大きなチャンスの場になっているようだ。 また、主催の「MIDEM」サイドから招待される一流のアーティストも数多く来ていて、ジェフ・ミルズや来られなくなったカール・コックスの代わりにロジャー・サンチェスがミュージック・ビジネスのレクチャーで講演したり、「MIDEM」のさまざまなオフィシャル・パーティでプレイした。 主なパーティはポール・ヴァン・ダイクがプレイしたパーティ「MFS Night」、ジェフ・ミルズのカクテル・パーティ「Purpose Maker」などで、最終日の20日に行われた3ルームにわかれたビッグ・パーティ「Parm Beach Beats 3」では、グリーン・ベルベット、フランソワ・ケヴォーキアン、ロジャー・サンチェスのDJやダブ・ピストルズ、シェイズ・オブ・リズムなどのライブなどが繰り広げられた。こういった豪華なパーティがある為に、音楽業界の人のみならず、多くの一般のお客さんやパーティフリーク達も「MIDEM」に惹きつけられるようだ。 4日間に渡って開催された今年の「MIDEM」、新しい才能やコネクションの発掘、プロモーション活動やそういったビジネス活動以外のイヴェントも数多く繰り広げられた。音楽業界やその周辺の人間にとって、この「MIDEM」は、一年の始まりと共に、その一年の動向と現状を把握して自ずからの方向性をさぐるという、重要な意味を持つイベントでもある。しかし、それ以外の人たちにとっても、この「MIDEM」は門戸を開いている。 例えば、インディ・レーベル出身のランDMCが50万枚以上のセールスを誇るようになったというサクセス・ドリームが実在するこのダンス・ミュージック業界、いいプロモーターやディストリビューターとの出会いによって、新たな可能性を見つけることだってできるかもしれない。 これを興味を持たれた人、「MIDEM」への参加登録料が高いなどのハードルの高さはあるにせよ、実際に「MIDEM」に参加してみるというのもいいかもしれない。
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