めまぐるしいリズムと破壊的な電子音、そしてうなるベース! 僕の音楽は、ドラムン・ベースともテクノとも違うものなんだ スクエアプッシャー(=まともな売人)という名前を持った22歳のイギリス人青年が、このところのテクノ/ドラムン・ベース界を大いに騒がしている。とにかく、日本の人気のほどといったら、あのケン・イシイ以来のフィーバーぶりなのだ。その盛り上がりの理由は彼の繰り出すサウンドが、彼自身の弾く生のベースをフィーチャーした、これまでに聴いたこともなかったようなマッドなセンスの強烈なドラムン・ベースであったころはもちろんだが、それ以上に、本人のキャラクターによるところも大きいだろう。 彼の名前はトム・ジェンキンソン。インタビューは午前中に行われたのだが、現われたトム君は前夜ほとんど寝ていないということで、絵に描いたようにバッドな表情。こりゃ先が思いやられるぞと思ったのだが、心配することはなかった。話を始めてみると、素顔の彼はシャイでピュアな音楽青年だったのだ。 「12歳の頃からベースを弾き始めたんだけど、どうしてベースを選んだのかは昔のことなんでよく覚えてないなあ。バンドを組むために楽器を覚えたわけじゃなくて、自分一人で、何かこう、おもちゃみたいな感じで弾き始めたのがベースだったということなんだよね。で、次第にエレクトロニックな音楽にも興味を持ち始めて、いろんなバンドでベースを弾きながら、家では機材で音作りをするというのを並行してたんだ。でも、だんだんバンドへの興味が薄れていっちゃって......。それで、今みたいな、自分で打ち込んだエレクトロニック・サウンドに変わっていたんだよね。僕は、自分の音楽はドラムン・ベースともテクノとも違うものだと思っているんだ」 確かにスクエアプッシャーのサウンドは、実に斬新かつユニークなものだ。めまぐるしいリズムと破壊的な電子音、そしてうなるフュージョン・ベース! そのライブの仕方もまた変わっている。マシンからベーシックな音を出しながら、ひたすらベースを弾きまくるのだ。断わっておくが彼のベースは馬鹿テク、ベーシストとしての技量も並々ならぬものがある。 「ベーシストで好きなのは、ジャコ・パストリアスなんだ。14歳の時にやってたバンドのドラマーがフュージョン/ファンク系の人で、彼からジャズのレコードをたくさん聴かせてもらったんだけど、その中にジャコパスがあって、すごいハマっちゃったんだよね。彼に似ていると言われたりすることが、実は一番嬉しいんだ」 7月に行われた初めての日本でのライブは超満員。会場の雰囲気はクラブ系というよりは完全にロックのノリ。本人も、「こんなにウケたことはロンドンでもなかった」と言う。 「すごくキモチよかったよ。もしもこの先、僕がミュージシャンを引退しちゃうとか、あるいはしばらく活動休止して、そのあと復活するとかいうことがあったら、その記念ライブは絶対に東京でやりたいと思うよ(笑)」 *ちなみにトム君の不眠の理由は、ホテルの部屋にエイフェックス・ツインが何度もイタ電攻撃をしてきたせいだそうです(!) |
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