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SQUAREPUSHER NEWS ARCHIVE VOL.2

CROSSBEAT OCT.
CROSSBEAT 10月号
写真:木原盛夫 / インタビュー:安部薫
通訳:ブライアン・バートン・ルイス


自分なりの新しい要素は加えられているけど基本は過去に自分が共感した音楽なんだよ

エイフェックス・ツインも絶賛した、生ベースとサンプラーを同時に操るバカテクの異才
「音楽を作り続けることだけが望み」という彼が淡々と語った、多様な興味の指向性


ドラムン・ベースと生のベースとを組み合わせ、サウンドのイメージに関する語彙を無限に増やすことに成功したしたスクエアプッシャーことトム・ジェンキンソン。人間とマシーンとの繋ぎ目ともいえる彼のサウンドは、エイフェックス・ツインことリチャード・ジェイムスに「トムは天才だ」とまで言わせ、リチャード本人に多大なる影響を与えたというのはあまりにも有名な話だ。そのスクエアプッシャーの今回行われた超満員の東京公演、たったひとりでベースを弾きながら、なおかつサンプラーをいじくるパフォーマンスからは、生の躍動に満ちたエレクトリック.サウンドがスピーディーに発射され、トムの天才ぶりを確認する格好の場となった。このように今まさに旬を迎えた彼であるが、実際は普通の22才の青年としての横顔も盛っている。そんな彼の素顔を読むべく、創作の背景や、取り巻くシーンなどについて語ってもらった。


●あなたの音楽はジャズ、フュージョン、ヒップホップ、テクノ等の要素が複雑にリンクしたものとなっていますが、それはジャンルに定住しないあなたにとってのもっとも理想的なスタイルなのですか。

「若い頃から膨大な量の音楽を聴くのが好きだったから、それらの音楽に対しての敬意が表れているということはあると思う。自分自身、影響から新しい音楽を生もうとしているわけだしね。でも別に計画して特定のジャンルの音楽を取り入れているってことはないな」

●アルバムだけでなくライヴでも生のベース・プレイにこだわっていますが、それも過去の偉大なるベース・プレイヤーへの敬意の表れなのですか。

TOM JENKINSON「確かにジョン・ポール・ジョーンやジャコ・パストリアスへの敬意は忘れてないよ」

●では、あなたの音楽的ルーツにはロックも含まれているのですか。

「メタリカやボルト・スワローといったスラッシュ・メタルを聴いていた時期もあったけど、何といってもレッド・ツェッペリンから受けた影響というのは大きいね」

●ロックの側面があるがゆえに、あなたはロックとダンスの両方のメディアから時代の寵児的な扱いを受けていますが、そうした状況についてはどのようにお考えですか。

「結構下積みが長かったから、別に音楽業界の目は気にしていない。どうせ連中はトレンドが変われば僕のことなんか落としていくだろうし。まあ、それも全く恐くないけどね。取り合えず今の内は稼ぎまくっておこうかな(笑)」

●常にアンダーグラウンドであり続けようというわけですか。

「大金をつかもうという気はないよ。ただ音楽が作れればそれだけで幸せだと思っている。それに生活をこれ以上のレベルに持っていく術も分からないから、今後もひたすら曲を書き続けるだけだよ」

●その曲作りのアイディアはどこから得るのですか?

「自宅のスタジオで機材をいじっているうちに曲が完成するって感じかな。ホント、スタジオ・ワークは一日中やっていても飽きないよ」

●最新ミニ・アルバム「ビッグ・ローダ」でのアナログ感漂うエレクトリック・サウンドには、あなたが好きだという"下らないコンピューター・ゲーム"の音に通じるところがあると思うのですが..........。

「確かにあの時期は昔のコンピューター・ゲームにはまっていて、レコーディングの時以外は殆どやっていたから、その影響が自然と出たってところはあるね」

●生楽器とエレクトリック・サウンドの融合ということで、ケミカル・ブラサーズ等と比較されることも多いと思うのですが、そのころについてはどうのように考えますか。

「別に彼らに気を配っている時間もないし、実際ケミカル・ブラザーズのサウンドも聴いたこともないから、何も気にならない。強いて比較すれば、僕と彼らでは音楽をやる根拠が違うってことじゃないかな」

●その根拠とは?

「まず、自分が聴きたくなるような音楽を作るってこと。だから一曲毎に違うものを作るよう心掛けている。結局、それ以外の根拠になっちゃうと同じような曲を書き続ける現象に陥りがりになってしまうだろうしね」

●じゃあ、時代毎にあなたの音楽も変わっているのですか?

「ああ、そうだね。実際、レコード棚も2〜3週間のサイクルで入れ替わっているんだ」

●それは新しいものなのですか。それとも古いもの?

「基本的には古いものかな。なぜなら新しいものを作るには必ず何か昔の音楽という拠点が必要だからね。つまり僕の曲は、自分なりの新しい要素は加えられているけど、基本となっているのは過去に自分が共感した音楽なんだよ」

●では今はどんなレコードが棚に入っているんですか?

「60年代後半から70年代前半のマイルス・デイヴィス」

●あなたはリミックスをしないことで有名ですが、マイルスぐらいのミュージシャンとだったら、今後コラボレーションするということはあり得るのですか。

「それはしょっちゅう考えている。その際、一番重要なのは、精神的に同じ観点でものを見れるかどうかってころ。例えば、マイルスと僕の音楽の捉え方が似ていたとしたら、二人とも同じ方向へ進んでいるわけだろ。だから、そこからまた違った新しいものが生まれる可能性も大いにあるんじゃないかな」






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