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DARREN EMERSON
PARTY REPORT

ダンス・ミュージック・シーンにおいて、DJでありミュージシャンであるというアーティストは数多く存在している。しかしそのほとんどがソロあるいは2人組というスタイルの中で、「バンドのメンバー」として活動しているダレン・エマーソンは多少希稀な感のある存在だ。
彼は元々DJとしての活躍が注目されていた中で、アンダーワールドという、あえて言うなら「売れない2流バンド」に加入することになった。
それ以降のアンダーワールドの飛躍ぶりはご存じの通りである。当初はそれ故に「ダレン・エマーソンのバンド」というような捉え方をされがちだったこのバンドも、現在はやはりカール・ハイドがフロント・マンとして認識されている。

とは言うものの、ダレンの存在は彼等にとって非常に大きなものであることには間違いない。
ダレンの加入を起爆剤として成長していったアンダーワールドの、昨年夏のレインボー2000でのライブ・パフォーマンスは多くの人々の心を捕える最高のものだったのは記憶に新しい。
そのダレンがレインボー2000以来急遽来日し、東京と大阪でDJプレイを披露してくれることになった。

東京での会場は、外国人アーティストの来日プレイの場としてお馴染みの新宿リキッド・ルーム。
このパーティーが決定してから当日までの日は浅く、ろくなプロモーションもない状態だったにも関わらず会場内は超満員。
さすがはダレンエマーソン。やはりアンダーワールドのメンバーである彼のプレイを心から待ち望んでいた人がこれほどまでに多く存在し、その鋭い嗅覚を持ってここに集まってきたに違いない。
そしていつものテクノ系パーティーには見受けられないような、少しロックっぽい雰囲気を持った人たちもたくさん来ている。
どうやら映画「トレイン・スポッティング」の効果も手伝っているようだ。

テクノ・ファンのみならず多くの音楽ファンが期待する中スタートした彼の1曲めはURの「AMAZON」。
名DJによる名曲プレイでフロアーは否応なしにヒート・アップ。
続けて前半はミニマル志向なセレクトで最初の波を見せることになった。
一旦盛り上げはしたものの、すぐにクール・ダウンさせ、また軽く上げてさらにまたダウン。
小さい波の繰り返しというなかなか渋い展開で気持ちのいいグルーブを醸し出していった。
美しいシンセ・トーンの効いたディープで少しトランシーな世界。そう、ちょうど彼の所持するレーベル「UNDERWATER」の持つ雰囲気に近い。
その中に時折ジョーイ・ベルトラムの作品など少しアグレッシブなものを交え、起承転結を感じさせるストーリー性のあるプレイをしてくれた。
ひょっとしたら多くのアンダーワールド・ファンには満足のいかないプレイかもしれない。 特にヒット曲「ボーン・スリッピー」の持つようなロックっぽいテイストなど微塵も感じさせない落ち着いた選曲なのだから。

このプレイについて、パーティー当日に日本入翌日は大阪でプレイした後にすぐ帰国しその直後にU2とのコラボレートを控えているという超多忙な彼の、メンタル的な部分がそのプレイに出てるのでは?という意見もあった。
しかし本人は疲れた表情などまるで見せず終始にこやかにしていたし、本当にゆっくりとした美しい曲でのプレイ終了後もしきりにフロアーに向かって手を振る様子から見て、このプレイの中に彼の現在の本質があるのではないかと思われる。(実際パーティー終了後の朝7時の段階で、「クラブに行きたい」とか「バーに行きたい」とダダをこねていたそうだ。)

前述のように彼のレーベル「UNDERWATER」からリリースされるメロディアスでディープ、そして美しい展開を持ったトラック類は今の彼そのものの志向なのだろうし、「これからボクのプレイが始まるよ」から「これでボクのプレイは終わりだよ」というダレンの創ったストーリーは、目を閉じていても感じ取れる程だった。
考えてみれば当り前のことだ。
アンダーワールドはダレン・エマーソンとカール・ハイド、リック・スミスのそれぞれ違ったテイストを持った3人によって創られるものだけに、ああいったオリジナルなものになるのだろう。
あれだけ革新性の高く、テクノやロックなどといったひとつのカテゴライズにはめ込む事のできないアンダーワールドの音楽は、そういった人達の集まりでなければ生まれ得ない。
例えば同じ方向性を持った3人によるものだったとすれば、それはきっと一過性のもので終わってしまうだろう。
彼等がそうはならないであろう事をまだ先を見ぬ間に感じさせてしまうのは何故なのだろうと考えさせられていたところ、この日のダレンのプレイによってその答えを見つけられたような気がする。

1997 (C) SONY RECORDS, a group of Sony Music Entertainment (Japan) Inc.

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