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Renaat Vandepapeliere / Bob de Wit Inteview

(March 12,1997 @ Sony Office 7)

ローカスト、ワックス・ドクター、マンナ、ヴォイジャーのアルバム、そして日本からはケン・イシイの新曲や期待の新人ブン・ブン・サテライツと今年もにわかに活気付いているベルギー、R&Sレコードの社長レナート・ヴァンデパペリエ氏(以下RV)とネットワーク/マルチメディアを担当しているボブ・デ・ウィット氏(以下BW)が来日。 心機一転のローカストやベルギーのシーン、R&Sにとってのネットワークについてなど、聞いてみました。


-ここにきてR&Sはリリース・ラッシュといっていい程リリースが続いていますが、個人的にイチオシというとどれになると思いますか?

RV:ちょうどでき上がったばかりだというのもあると思うけど、ローカストの新作「モーニング・ライト」は今年最も重要なボーカル・エレクトリック・アルバムだと思う。全16曲がすべてボーカル曲で、しかもワンテイクでレコーディングされているんだ。たとえばマーク(ヴァン・ホーエン)が「明日会おう」と約束した時点では彼は何も作ってなくて、彼はそれから一日たった次の日に会った時には2曲のデモ・テープを持って来ている。そういったデモ状態の音をそのままマスターにしているんだ。

-16曲ということはかなり長いアルバムってことですか?

RV:いや、今言ったようにこのアルバムはすべてボーカル・トラックだし、だからどれも3分程度の作品になってる。

BW:延々続くアンビエント・トラックが16曲入ってる訳じゃないからね(笑)。

-じゃあ、ラジオのオンエアでのヒットなんかも期待できるということですか?

RV:もちろん。No Problem!

-このアルバムからのファースト・カットとなる「ユア・セルフィッシュ・ウェイ」では808ステイツらと共に日本の新人、ブン・ブン・サテライツのリミックスが収録されていますね。このリミックスのいきさつや、彼等自体に関してどう思っているか聞かせてください。

RV:ブン・ブン・サテライツは素晴しいアーチストだと思う。R&Sとしてはまずヨーロッパにおいて、彼等の名前をまずはできるだけ多くの人達に知ってもらう必要を感じた。 それで彼等自身の作品に先んじてリミックスを依頼したんだ。

-先日のライブ(3月14日、東京・恵比寿のMILKに於いて)を観ての感想は?

RV:まだワークすべき点はいくつかあると思うけど、全体的には気に入ったものだったね。

-本人たちはライブ後に話した時には、機材面でもうまくいかなかったところがあったと話していましたが...

RV:それは全然感じなかったね。ステージは素晴しいものだったと思う。

-話はローカストに戻りますが、先程の話では「モーニング・ライト」はワンテイク録りだって話でしたね。 これってエレクトリック・ミュージックにおいての「ライブ感」というものと関わることだと思いますが...

RV:そうだね。エレクトリック・ミュージックのアーチストが行うライブというのはこれまでステージ上で黙々と器材とにらめっこしながら進んで行くものが多かったけど、それってオーディエンス側としては最初は興味本位で見ているんだけど、だんだん退屈なものになっていってしまうんだよね。当然金銭的な問題がそこには生じてくることも確かだが、もうエレクトリックな音のアーチストにもステージ上でのライブ感やヴィジュアル的アプローチが求められているのは確かだ。 ローカストについて言えば、彼等の5月下旬から始まる予定のライブでは、サウンド的にも専任の優れたエンジニアを起用し、そこにリンクするヴィジュアルも、例えば演奏中にあるアーチストの姿がバックのスクリーンに写し出されると、それに続いてそのアーチストの曲の一部がサンプリング/ループされて演奏中の曲の上にのってきたり。 あと演奏中のそれぞれの奏者の脇にスクリーンを用意してそこにあたかももう一人の人間がいるかのように見せたり。様々なヴィジュアル・アプローチが用意されている。


-次にベルギーのシーンについて聞きたいんですが。クラブ・シーンなんかはどういった感じなんですか?日本に住んでいる私たちにしてみると、ブリュッセルってまだそのシーン自体、想像が難しいんですが?

RV:現在のシーンは東京やロンドンなどの他の大都市のそれと違いはないよ。ドラム・ン・ベースのクラブもあればハウスやテクノやデジタル・ロックで盛り上がっているところもあるし。

-ラジオのようなメディアは?

RV:ベルギーのラジオは他の国のそれに比べて成熟していると思うね。国営放送規模の局でも昼間の時間帯によくケン・イシイの曲が他のポップな曲と同じにオンエアーされるし、ジャンルやメジャー・マイナーといった垣根はそこには存在していない。

ベルギーのシーンに特筆すべきものと言うと、まさにそれ、ライブでもラジオでもクロスジャンルなものがすんなり受け入れられている点だと思う。例えばテクノ・シーンだけをとってみても、最初はみんなが口を合わせて「フリーマインド!フリーマインド!」って叫んでたクセに今じゃ細々とした小さな集団になってお互い罵り合っている。そういうのが一番キライなんだ。そう言ってるような人間の作る音楽に限って10年前の音と何一つ変わっちゃいない。音楽は音楽、リズムはあくまでリズムだ。大切なのは常にそのなかでプログレッシブであり続けることだと思うね。自分自身、来年の自分がどういう音楽を求めているかなんて正直判らないね。だからR&Sだってこれからどういう音楽を扱ってゆくかは問題ではないんだ。要はプログレッシブであるということだよ。


-さて、続いて日本でもファンが楽しみにしているケン・イシイの次のアルバムに関して話して貰えませんか? 大体でいいんですけど、いつ頃のリリースが予定されていますか?

RV:すごく難しいね。 ...(約5秒間の沈黙) 来年だね。彼自身も方向性の転換期にきているみたいだし、世界中のいろんなアーチストたちを巻き込んだものにはしようと話しているんだけど。実はアメリカのロック系のビッグ・アーチストとのコラボレーションの話しもあるんだ。そういったことのためにはいろんな手続きも踏まないといけないし、まだ時間が必要だね。けど、来年にはきっとそういった成果が彼のアルバムというかたちで出せると思う。

-新しいアーチストは探しています?

RV:常に音楽的に新しくて個性的でパワーのある才能は探している。ただ、ケンやローカストのフォロアーのような存在は求めていない。 これまでになかったようなものを作れる才能だね。


-じゃあ、今度はボブにR&Sのインターネットでの活動について聞かせて欲しいんだけど、基本的なコンセプトとこれからの方向性で何か明らかにできることがあったら教えて貰えますか?

BW:基本的にR&Sのサイトはレーベル自体、アーチスト、リリースに関する情報の提供を意図している。だからできるだけ多くの人達がこのサイトを楽しめるように過度に重いグラフィックやサウンド・データは盛り込まないようにしている。勿論レイアウト、つまりそのサイトがどう見えるかという事は重要だから、グラフィックには気をつかうけどね。 それに規模の大きなリンク集を設けて、そこからあらゆる音楽についてのサイトに飛べるようにしている。勿論それを検索できるようにもする。リンク集を持たないレーベルのサイトもあるけど、インターネットの大きなメリットの一つはそうやって世界中のいろんなサイトへ一瞬にして行けることだろう? 実はもうすぐサイトの構成やデザインを一新するんだけど、新しいサイトでは更に詳細で且つ使いやすいサイトを目指している。日に数百通来るメールには、そのすべてに一つ一つ答えることが現状できないから、FAQのページも設ける。あと、メール・オーダーのページも作るけど、これは決してビジネス的な目的ではない。僕のところには勿論アメリカや、イギリスや東京といった大きな都市ばかりではなく、アフリカや南米のレコードを入手すること自体がとても困難な場所に住んでいる人達からも多くのメールを受け取るんだ。このメール・オーダーのページはそういった人達の要望に応えるためのセクション。 僕自身は常にテクノロジーの最新情報も入手しながら、その中で最初に言ったように、多くの人達がスムーズに情報にアクセスできるということを念頭に置きながら、それらを取り入れてゆくというスタンスだね。

-いやぁ、すごく共感しちゃいますね。けどホント、デザインとデータ量の均衝点を見つけるのって葛藤の連続って感じですよね。 

BW:誰もがペンティアムの200MHzのCPUにISDN引いてページを見ている訳じゃないからね(笑)。

-ブラウザ自体もまだまだ落ち着きそうにないって感じですよね。

BW:うん、あの戦争はもう情勢を見守るしかないよ(笑)。けど、リアルプレイヤー(ex-リアルオーディオ)のように低いデータ転送速度でも少しなりとも転送技術が上がっているものなどは積極的に取り入れていきたいと考えている。 音楽もテクノロジーも速度を持って進化しているよね、だからそれを注意深くウォッチしながら、そして当然インフラ的な部分も見ていきながら多くの人達が僕らの提供するものを楽しんでもらえるようにしていきたい。

1997 (C) SONY RECORDS, a group of Sony Music Entertainment (Japan) Inc.

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