どんな機材を使えばいいの? |
1)シンセサイザー |
●シンセサイザーとテクノ
「synthesize = 合成する」
電圧をコントロールして、そこから発振される波形を合成することによって音を作り出すことに成功した機械、それがシンセサイザーです。
最初にシンセサイザーが作り出されたのは、テクノというジャンルが確立するよりもずっと昔の話であって、シンセサイザーが発明されてすぐにテクノが産まれたわけではありません。
またテクノロジー無くしてテクノはあり得なかったのですが、そのテクノロジーも「最新」のものである必要はありません。
面白いことにテクノという音楽が産声をあげた頃、そのクリエーター達が使っていたのは、当時最新の機材ではありませんでした。一般の音楽分野では既に使われなくなり、誰も見向かなくなったような古い機材を使って、彼等はテクノを作り出したのです。
それは彼等が、高価な機材を簡単に入手できるような恵まれた環境にはなかったせいでもありますが、しかし機材の新旧には関係なく、それ以上に音楽を創るためのオリジナリティー溢れるアイディアと、深い情熱があったからだと思われます。
つまりテクノはテクノロジーだけに頼ったものではなく、あくまでも人間のセンスやアイディアこそが重要であるという事を意味しているのです。
一方、今の話と矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、現在のようなにテクノシーンが全体的に盛り上がってきたのは、最新のテクノロジーのおかげである部分も大きいと思われます。
何故なら最新の技術のおかげで、シンセサイザーをはじめとした電子楽器や、コンピューターとその周辺機器などが、より扱い易くなったうえに、非常に安い価格で入手できるようになったからです。そして誰しもが、手軽にテクノを作る環境を手に入れることができるようになったのです。
古い機材にはそれらにしか出せない味がありますし、最新の機材には非常に優れた機能、そして安定性や可能性があります。
何を使おうが、後はアイディア次第です。結局のところ、全ては人間自身が創り出すものなのですから。
●キーボードタイプとモジュラータイプ
シンセサイザーで一番一般的なのは、鍵盤のついた「キーボード」と呼ばれるタイプのものです。シンセサイザーと言われれば、まず最初に思い浮かぶのがこのキーボードでしょう。
キーボードタイプのシンセでは、それ自身が内蔵している音源を鍵盤を弾いて演奏できるのはもちろんのこと、他のシンセサイザーなどを繋ぎ、遠隔操作で接続先の機材を演奏することもできますし、接続先の音色の変更など、様々なコントロール情報を発信することができます。
そうして他の機器を一括してコントロールする役割を持たせたキーボードを、「マスターキーボード」と呼びます。
これは使う人がコントロール用に選んだキーボードのことであって、何をマスターキーボードにするかは人それぞれです。決して「マスターキーボード」という商品が売っているわけではありません。
しかしそれ自体は音源を持たず、他の機材の演奏やコントロールするためだけのキーボードはあります。ちなみにこの場合は音源が無いので、シンセサイザーとは言えません。
また鍵盤のついてないシンセもたくさんあって、これらは俗にモジュールタイプと言います。
鍵盤が無い分サイズは小さくできるので、狭い部屋のスペースを余分に取らないので助かります。
特にテクノの場合、家で一人で作ることが多いでしょうから、鍵盤はひとつあれば十分でしょう。
●アナログシンセサイザー
昔は単音しか鳴らせなかったけど、もう今じゃ同時に32音くらい鳴らせたりします。両手両足使っても、一回じゃ弾けないくらいですね。
単音しか出ないものをモノフォニック・シンセと言い、同時に2音以上出せるものはポリフォニック・シンセと言います。
現在のシンセはほとんどがポリフォニックですが、昔のモノフォニック・シンセが持つ味を気に入っていて、未だによく使っている人もたくさんいます。
さらに電圧をコントロールして音を生成していたものはアナログ・シンセと言います。
ほとんどのモノフォニックシンセは大体アナログシンセです。
アナログシンセでも後期にはポリフォニックのタイプも出てきて、ローランドのJUNO-106などが有名です。
よく「アナログっぽい深い低音」などという言い方をしますが、それはこれらのシンセ特有のものなのです。
●デジタルシンセサイザー(FM音源方式)
その後ラジオなどでも使われるFMほ原理をデジタル化して楽器に応用したFM音源方式が産まれました。
これはヤマハが特許を取っていて、DX7というシンセサイザーが空前のヒットとなり、時代は一気にデジタルへと向かいます。
FMシンセサイザーは、アナログ・シンセと比較して格段にリアルな音を出す事ができ、さらに発振器が無い事もあって随分低価格だったということも人気の要因となっていましたが、いざ自分で音作りをしようと思うと、少々難解なものでもありました。
●デジタルシンセサイザー(PCM音源方式)
そこでもっと簡単に、もっとリアルということで登場したのがPCM音源です。
これは、簡単に言えば実際の生の楽器の音などを録音したものが、メモリーに入っていて、鍵盤を弾くと再生するという手法です。
ただ録音するとは言っても、より多くの音を入れるため多少質を落としているので、実際の音と全く同じではありません。
反対に生の音を再生するだけでもなくて、それらを幾つか組み合わせたり電気的に処理したりするので、かなり自由度の高い音作りが出来ます。
現在のシンセは、一部の特殊なものを除いてほとんどがこのPCMシンセです。
ケンイシイが初めて買ったシンセはコルグのM1という当時ベストセラーだったPCMシンセの代表格です。
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