LOCUST OFFICIAL INTERVIEW
London/1997.4.12

lpic1.GIF 質問作成:小林正弘
インタビュアー・トランスレート:小林ミミ

Q=質問
M=マーク・ヴァン・ホーエン
Z=ゾーイ・ニブレット



Q
まず、あなたはBBC放送で働いていたという固い経歴の持ち主ですが、ベッドルームミュージックを作り始めようとしたきっかけを教えて下さい。

M
2年前までベッドルームで音楽を作っていた。もともと音楽が大好きで音楽にとりこになっていたんだ。レコードを買うと、50回ぐらいノンストップで聞いたりと、ほんとに音楽に入りこんでいたので、自然に音楽を作るようになっていった。最初にモーグ・シンセサイザーを買って、それと、テープレコーダー2台で録音をはじめたんだ。


Q
テープレコーダー2台でピンポンしながら作っていったんですね。テープコンクリートみたいなのもやっていたんですか?

M
ポップミュージックを書いていたから、それはやらなかった。


Q
歌も歌っていたんですね。

M
そう。でも、最初の2曲で僕は歌に適してないと思ったよ。


Q
具体的に影響をうけたアーティストがいたら教えて下さい。

M
デビッド・シルビアンとブライアン・イーノだね。


Q
どうしてそれらのアーティストを好きなんですか?

M
実際 ブライアン・イーノ、何種類かのジャンルの音楽を融合させて新しい物を作り上げている事。アートを通して語りかけることができる事。他の人と一緒に仕事をして、新しいアイデアを出していく事ができるし、それにいわゆるマルチメディア、ビジュアルアートもやっているし、そういう意味で単なる楽器が弾けるとかのミュージシャンではなく、フューチャー的なアーティストといえると思う。彼は一番最初にスタジオが楽器だと知らしめた人だろう。もちろんジャマイカのダブの人達もそのようにスタジオと付き合っていたけれど、彼の場合それを、明らかに音で示していたと思う。


Q
デビッド・シルビアンは?

M
デビッド・シルビアンね。ええと、まあ、ブライアン・イーノの方が僕は影響を受けたからね。デビッド・シルビアンはブライアン・イーノから、アイデアをいっぱいとっているし。なぜデビッド・シルビアンの名を出したかというと、ブライアン・イーノに匹敵する影響を受けたという事で出してみた。デビッド・シルビアンは、ジャパンを抜けたあと、全てにおいてパーフェクトにこなしていったと思う。1つ1つの曲、サウンド、音1つ1つ、ボーカル全てにおいてパーフェクトだった。ブライアン・イーノは、彼より広い範囲にわたって影響を与えているところがすばらしいと思うけれど、デビッド・シルビアンの完成度は僕の達成したいところだね。


Q
また、クラブ・カルチャーやストリートミュージックに影響をうけましたか?

M
もちろん。


Q
どの辺の?

M
1991年にそれらの大きい波に入っていったよね。それがクラブへいき始め、エクスタシーをとり始めた頃。その頃、ワープ、R&Sも大きく成り始めたんだと思うよ。LFO、 CJ Bolland、彼等が主に僕をクラブミュージックに引き入れたプロジェクトだね。


Q
ところであなたはシーフィールの12インチシングル"モア・ライク・スペース"や"プレイソングス"のコ・プロダクションに加わっているわけですが、彼等とは、どうやって知りあったのですか?

M
シーフィールのメインの人物、マーク・クリフォードが1985年に僕たちの地元でバンドをやっていてライブを見にいったんだ。その時、彼はノイズをテープループして、それにノイズっぽいギターを併せていた。僕が住んでいたような小さな街で当時そのような面白い試みをしているバンドはなかったからね。ライブが終わってすぐマークを訪ねていったよ。それですぐバンドを一緒にやる事になったのさ。それがシーフィールの最初さ。


Q
じゃあ、あなたもシーフィールだったのですね。

M
そう。最初のEPで弾いているよ。"モア・ライク・スペース"の時はシーフィールのメンバーだったけれど、"プレイソングス"の時は、コ・プロデュースをした。


Q
その後R&Sのアンビエント専門レーベル、アポロから作品をリリースしていくわけですが、R&Sからリリースしたきっかけは? 

M
テープをいくつかのレコード会社に送ったんだ。全てのレコード会社がオファーしてきたけれど、R&Sが一番条件もよく情熱的だったからさ。


Q
ざっとあなたの経歴をきいてきたわけですが、基本的にあなたの作る音楽は実験的なエレクトロニック・ミュージックだと思うのですが、最新作"モーニング・ライト"では全編に渡ってボーカルをフィチュアーした歌ものにチャレンジしています。この変容は意図したものなのですか?

M
僕はすでに、80年代からボーカルミュージックを作っていた。90年代初期にはクラブ系にいったけど、それは僕にとっては違うところへ入っていったという感じ。で、また今ボーカルミュージックに戻ってきたという事は、また自分のメインの所へ帰ってきたとも言える。インストルメンタルミュージックを作る前は、8ー9年程ボーカルミュージックを作っていたから、また元に戻ったわけ。


Q
例えばこれまでの曲作りと今回の歌ものの曲作りを比べてみて、なにか違った点はありましたか?

M
この前のアルバムはサンプルしたサウンドのデジタルプロセッシングをマックを使ってたくさんやった。それが、この前のアルバムができ上がった主な過程。あと、スカーラ(シーフィールのメンバーのプロジェクト)とのコ・プロダクションもやっている。プロセッシングの技法を主に使ったのが以前のアルバムだったとしたら、今回のはアバンギャルド、いわゆる不思議な(変わった)音楽にボーカルを融合させたという形態だね。実在する音楽を少しだけ実験の方向に向け、曲はそれをのっけて走る車のような物と言うことがでいるかもしれないね。


Q
また、ゾーイ・ニブレット、ニール・ハルステット、メル・スカイ、グレイグ・ベセルのなどのボーカリストが参加していますが、基本的にローカストは、あなたのソロプロジェクトなのですか?今後、バンド編成になるということはないのでしょうか?

M
以前は僕だけだったけれど、これからは、共同体としてやっていこうと思う。ゾーイとグレイグが、ライブで一緒にやっていくからね。今、ローカストは臨時かもしれないけど、3人でやっているとみなされるね。今後どうなっていくかはわからないけどね。


Q
じゃあ、プロジェクトチームみたいに考えればいいわけですね。

M
そうだね。


Q
ライブは3人だけででやるわけですか?

M
それとドラムが入る。


Q
ところで、今回のアルバムを作るにあたって何かコンセプトがあったのですか?

M
えーっと、別にないよ。特に何かのアイデアがあってアルバムを作っていったんじゃないんだ。ただボーカルで曲を作りたいなと思って、とにかくどうなるかわからなかったけれどやってみようという事になったんだ。


Q
またアルバムタイトル"モーニング・ライト"が意味する物は?

M
このタイトルはある朝突然頭の中にうかんだんだ。ほんとにうかんできたっていう感じ。でも、はっきりした意味あいがある。それは僕にとって"新しい始まり"という意味があった。そしてそれには楽観的という部分が含まれていて、アルバムの音からもそれは感じられると思う。僕にとっては、とてもぴったりのタイトルだったんだ。それにアルバムを聴く人に聴いてみたいなという気持ちをおこさせると思う。タイトルをみた時にアルバムを聴く雰囲気にしていくとと思うんだ。


Q
ところで、今作はとってもポップなアルバムであり同時に実験的なアルバムにも仕上がっていると思うのですが、あなた自身は今作をどんなアルバムだと思いますか?

M
コマーシャルなできだと思う。メロディックなラインから、曲が楽観的な方向性をもちながら、深みも同時に持っているのがわかると思う。入って行きやすい作りになっている。聴いた人達も同じような感じを受ける事を希望するね。正直になり、自然の過程を経て、やさしい気持ちで音楽を作れば、聴いている人はそれを感じる。


Q
4人のボーカリストをフィーチャーした事で、今までのアルバムと違う点、もしくは変化した点はあると思いますか?

M
違いは明確だと思う。まず今回のアルバムのそれぞれの曲は、ソング(歌物)で、ローカストとしてそのような方法でアルバムを作ってないよね。今までは曲といってもエクスペリメンタルサウンドを乗せる車としての曲作りだったからね。それが大きな違いだね。


Q
個人的にはこれまでの難解なニュアンスのサウンドがずいぶんわかりやすいサウンドになったように感じつつ、でも本質はかわっていないと思うのですが、どうでしょう?

M
それは、僕が目的とする所と合っていると思う。もちろん本質は変わってない。このレコードが僕にとって違うところは、楽観的な物がいつも存在していた暗い要素と良い形で表わされているところだね。その両方はいつも僕自身の反映なんだ。


Q
ところで、なぜあなたはの作る曲は暗く内省的な雰囲気の曲が多いのですか?

M
そこにはいつも、2重性、いくつかの事が同時に存在しているんだ。もし人々がハッピーだったとしても、ただ、単純に完全にハッピーだとは限らない。僕の中にはいつもいくつかの事がおきているんだ。それらを音楽というアートに反映させるのはとても重要な事だと思うよ。楽観的な中に深さや悲しさが入っているような、そういう映画とか、レコードが自分でも好きだしね。それが、人生を単純に表わしていると思うしね。そういう事を自分の音楽でも表現したかったんだ。真っ白な物は何もないよ。


Q
では、シングル"Your Selfish Ways"には808STATE, SHANQ, CEASEFIRE, BOOMBOOM SATELLITESのリミックスが収録されています。彼等のリミックスを聴いた感想は?そして彼等を起用したのは、誰のアイデアですか?

M
僕自身"リミックス"ってあまり好きじゃないんだ。R&Sレコードがリミキサーを決めた。まあ、売りやすいのかなと思って承知したけど。シングルを発売と共にリミックスも発売して、相乗効果をねらった。最終的には皆満足したからいいけど。まあ、売らなければいけないというプレッシャーもあったから、記事に書いてもらったり広告を打ったりもしたよね。まあ、そんな事をいってるわりには、実はリミックスのいくつかはとても良いと思ったんだけどね。一番好きなのは、BOOMBOOM SATELLITESとSHANQ。BOOMBOOM SATELLITESは日本のプロジェクト。CEASEFIREはWALL OF SOUNDのアーティスト。SHANQは僕の友達であるケビン・ヘクターで、数年前に一緒にアルバムを作った。BOOMBOOM SATELLITESは確かではないけれど、日本のソニーと契約していると思う。R&Sとヨーロッパ地域契約していると思うよ。まだ、発売は何も してないみたいだけどね。


Q
ところで、今後予定されているライブは音楽と映像が一体になったものだという話を聞いていますが、具体的にどんなライブになるのでしょうか?またライブはバンド編成で行うのですか?

M
1995年の8月にライブのために、ビデオサンプリングの技術を使ったフィルムを作った。それはビデオサンプリングを使って、その中に含まれるサウンドをサウンドソースとしてサンプルして音楽を作っていった。タイムストレッチしたり、組み合わせたり、いろいろ操作して作っていった。ライブではそのテクニックとアイデアを使って、ビデオサンプリングがバンドのライブとシンクするようにするんだ。


Q
ビデオもライブで同時進行で取ったりするんですか?

M
いや、ビジュアルは全部すでに用意された物を使うよ。リアルタイムコンピュータを使おうとも思ったけれど、今回はそれをするには経費がかかりすぎるのでやめておいた。


Q
プロジェクターはいくつ使うのですか?

M
まだ、決めてないけど、、、


Q
まあ、予算にもよりますよね。

M
それだけじゃないんだ。雰囲気の問題も考えているんだ。たぶん4スクリーンだと思うけど、1つかもしれない。1つだとイメージを作っていくのに融通性がもたせられるよね。4つだとゴチャゴチャになってしまうかもしれない。


Q
4つのスクリーンの場合、それぞれ独立した映像になるわけですね。

M
そうだね。1つのスクリーンでもその中にボックスを作って違う映像をいれようとも思っている。4つのスクリーンで1つの映像をわけてもいいけど、観ている人が同時に4つ観て感じる事より、一つに集中した方がいい結果になるかもしれないね。


Q
ツアーは、総勢何人でまわる予定ですか?

M
僕たち4人の他に、サウンドエンジニア、ビジュアル担当、ツアーマネージャーと合計7人だね。


Q
では、最後にローカストとしての今後の音楽性を教えて下さい。

M
今、現在はライブのための準備をしている。それで、今回のアルバムの発表コンサートをいくつかする。そのあとはツアーだね。


Q
アルバムの発表コンサートは7月ぐらいですか?とすればどこで?

M
うん。ブリックレーンという地域のビールを作る所で。


Q
じゃあ、くさいんじゃないんですか?ビール工場ってくさいですよね。

M
(笑)いやー、そんな事はなっかたよ。僕がいった時はくさくなかったよ。ツアーの間に次のアルバムの準備として曲作りをする。


Q
また、ボーカルものになる予定ですか?

M
そうだね。さっきも説明したように、僕は前からボーカルの曲を書いていたし、クラブ音楽をやっていた数年をすごして、また戻ってきたという感じ。夏ぐらいから書きためて、年末にはレコーディングに入りたいと思ってるんだ。 


Q
次のアルバムもR&Sレコードより出るんですね。

M
そう。


Q
何枚の契約ですか?

M
アルバム6枚。これが3枚目。あと3枚だね。


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ゾーイにちょっと追加質問しました。


Q
アルバムの中で何曲書いているのですか?

Z
4曲よ。


Q
作る過程はどうでしたか?

Z
とても、簡単にいったわ。全ての段階で、スムーズに速く、問題なく進んだわね。


Q
4曲書くのに何日くらいかかりましたか?

Z
6日ぐらい。

M
まあ、一緒に作業をしたのは6日ぐらいで、曲としてまとまり、そのあと僕が一人でスタジオの作業とかをやったけどね。


Q
マークのスタジオはどうでしたか?

Z
こじんまりしてていいわね。


Q
今までこのような形でコラボレーションした事がありますか?

Z
いくつかコラボレーションはやったけれど、ミニストリー・オブ・サウンドのお友達のDJのダンスレコードと、モ・ワックスのアーティスト以外はこういう風にリリースした事はなかったわね。


Q
ロンドンでは一緒に曲を書こうという話って多いと思います。アーティストがいっぱいいますからね。でもなかなか発売につながらないという話をよく聞きますが、今回、とんとんと発売になってびっくりしましたか?

Z
1996年の1月にマークと会って、数ヵ月後にはもう曲ができていて、1年後には発売。これはとても速い経過だと思うわ。


Q
今後の計画は?

Z
ローカストのプロモーションをやって、良いプロジェクトだし次の物にも参加したいわ。それから時間ができたら自分のレコードの制作にはいる予定。ポップな物になると思うわ。


Q
R&Sより発売ですね。

Z
たぶんそうなりそうね。


Q
ビジュアルにも興味がありますか?

Z
絵を描いてるの。家中絵だらけよ。


Q
油絵?

Z
水彩画とチョーク。抽象画で、色彩が豊富なのもあるし、白黒のもある。ジャケットに使うかもしれないわ。


Q
自分自身、暗い方だと思いますか?明るい方だと思いますか?

Z
両方交互にくるわね。

M
だから僕たち作業がはかどるのかもしれないね。僕も両方あるからね。例えば昨日僕はすごくいいムードだったけれど、ゾーイはあまり機嫌がよくなかったからね。でもお互いよくある事だから理解できるんだ。


Q
じゃあ、これからも一緒に作っていくんですね。

M
そうだね。まあ、彼女も自分のアルバムをやっていかなくてはいけないからどうなるかはわからないけど、一緒にやっていくと思う。


Q
どうもありがとうございました。


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