SUN ELECTRIC


about "PRESENT"


基本的に「エレクトロニカ」とは、ピッチを「ヘン」にしたり、楽しいダンスを「タイム」から作り出したりすることだ。 サン・エレクトリックの6枚目のリリース、「プレゼント」では、彼等は音楽的に奇妙で、肉体的にもとてつもない快感を与える(勿論この2つの要素はお互いには関係ない)音色を作り出す事によって根本に触れている。 それだけではなく、彼等は最も優れたエレクトロニカのマップが正確に位置を示す「ジャーニー」を引き離す何も分かっていない評論者がよく挙げる偽物の特異性をも打ち砕いている。 それはわれわれ個々の内なる「ジャーニー」ではない旅はまったく意味を持たないと言うことだ。

「プレゼント」の素晴しい点は、一体何処までトラベルするのかという点だ。初めの2曲の空間内では初めのベルリンの森から揺らめくようなガムラン・スタイルのベースにのって、ムっとするようなレイン・フォレストが現われる。 その後は気持ちよくシャッフルされ、流れるままにメッカノのテクノトレインのリズムにのり、たえまなく続くメロディと、リズムの相互作用の中で、気付く間もなく何処か他の所へワープして行く。 その後の"GOLDSTUCK"から"WAITATI POST"迄の3曲からなる道のりは、おそらくクラフトワークによる"TRANS EUROPE EXPRESS"B面の"AGE-OF-STEAM"のシークエンス以来最も 心地よいシークエンスの3曲であろう。そして、アルバムが進むに従って、より深く、より遠く音楽の中へ中へと入って行くのである。

「プレゼント」はサン・エレクトリックの1993年のデビュー作「キッチン」、1994年の「アー!」に続くにふさわしい作品である。 またこれは、「30.7.94」ライブにドキュメントされた彼等のエレクトロニクスと即興のライブ・アドベンチャーの発見を統合するものでもある。それはループするトランス・ミュージックを甘やかし過ぎるのであろう身動きのとれないグルーブの中へ音楽を閉じ込めてしまわない為に彼等が故意に紹介した無作為な要素である。「ある程度の無作為さをコントロールしている限り、それらの要素は音楽をより生き生きさせる」サン・エレクトリックのトム・スィールとマックス・ローダーバウアーは断言する。「ステージでは僕らは全世界のローカル・ステーションの電波をキャッチできるチューナーをつかってその音をシンセサイザーに通してるんだ。 僕らはそして僕ら以外にもそう信じている人は多いんだけど、音楽はやがて何時かは作り手がセットした限界とそれをコントロールするリスナーとの間で自由に変化できるようになるだろう。

BY CHRIS BOHN




1996 (C) Sony Music Entertainment (Japan) Inc.



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