Daniel Barenboim|インフォメーション
http://www.sonymusic.co.jp/artist/DanielBarenboim/info
ソニーミュージックによるDaniel Barenboimのオフィシャルサイト。Daniel Barenboimの最新情報、着うた(R)、試聴、ライブ情報などを掲載。
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視聴率60%を記録!世界的なパンデミックから不死鳥のように音楽の力をよみがえらせたウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート、本日デジタル配信スタート。
http://www.sonymusic.co.jp/artist/DanielBarenboim/info/536785
<img style="display: block; margin-left: auto; margin-right: auto;" src="http://www.sonymusic.co.jp/img/common/artist_image/11020000/11020101/images/DN11563.jpg" alt="" width="500" height="331" />
<img style="display: block; margin-left: auto; margin-right: auto;" src="http://www.sonymusic.co.jp/img/common/artist_image/11020000/11020101/images/DN23660.jpg" alt="" width="500" height="334" /> Photo: © Dieter Nagl
毎年1月1日に行なわれるウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート。2022年は当初フルキャパシティの観客を入れての公演が予定されていたが、直前になってオーストリア政府の規制により1000人に限定しての開催となった。ちょうど元日の午前11時15分から開催された地元オーストリアでは、TVの視聴率が何と60%を超え、これは2014年以来の高視聴率となった。オーストリア国内だけで116万人が見た計算となる。
ウィーンの地元紙『クーリエ』は、「芸術的に卓越した成果。今後語り継がれる記念碑的なコンサート。ダニエル・バレンボイムとウィーン・フィルはこのコンビならではの音楽を聴かせてくれた」と絶賛。『ウィーン新聞』紙は「この上なく贅沢な音の絵」、『ディ・ツァイト』紙は「ウィーン・フィルはワインのコルクの栓を軽やかに開けた」、『クローネン』紙は「ウィーン・フィルは人を魅了するサウンドを全開させた」と称賛の言葉を連ねている。
観客が半分になり、マスク着用とはいえ、客席には華やぎが戻り、定番の「美しく青きドナウ」「ラデツキー行進曲」などに加えて、ツィーラー没後100年メモリアル、ヨーゼフ・シュトラウス生誕195年など、2022年のさまざまなアニヴァーサリーなどテーマ性を織り込んだ多彩な作品で構成され、ニューイヤー・コンサート初登場曲も6曲含まれていた。2014年以来8年ぶりニューイヤー・コンサート3度目の登壇となるダニエル・バレンボイムは、ウィーン・フィルとは1965年以来半世紀以上の共演歴があり、気心の通じ合った表情豊かな演奏を繰り広げた。
また「美しく青きドナウ」の演奏の前に行われる「新年の挨拶」では、通例の「明けましておめでとう」に加えて、バレンボイムが約2分間にわたって英語でスピーチを行った。「このコンサートでは、数多くの音楽家が一つの『共同体』になっています。このようなことが現在の規範になるべきなのです」と、コロナによって人と人とが離れていくことへの警鐘を鳴らし、つながりを持ち続けることの重要性を訴えた。続く「ラデツキー行進曲」では客席が一丸となった拍手を巧みにコントロールして、華やかにコンサートを締めくくった。また同時に2023年のニューイヤー・コンサートの指揮者がフランツ・ウェルザー=メストであることも発表された(2013年以来10年ぶり)。
【アルバム情報】
■タイトル/アーティスト ニューイヤー・コンサート2022/ダニエル・バレンボイム&ウィーン・フィル
New Year’s Concert 2022 | Daniel Barenboim & Vienna Philharmonic
<img src="http://www.sonymusic.co.jp/img/common/artist_image/11020000/11020101/images/202112031151150.jpg" alt="" width="350" height="350" />
■品番・発売日・定価:
CD(2枚組):SICC-2236~37 2022年1月26日 ¥3,190(¥2,900+税)
ブルーレイ:SIXC‐59 2021年2月16日予定 ¥6,270(¥5,700円+税)
■デジタル配信:
2022年1月7日 通常配信+24bit96kHzハイレゾ
[CD収録曲] [ ]内は演奏時間
CD1 [51:06]
第1部
1.フェニックス行進曲 作品105★ (ヨーゼフ・シュトラウス) [2:14]
2.ワルツ「フェニックスの羽ばたき」 作品125 (ヨハン・シュトラウス2世) [7:25]
3.ポルカ・マズルカ「海の精セイレーン」 作品248★ (ヨーゼフ・シュトラウス) [3:40]
4.ギャロップ「小さな広告」 作品4 (ヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世) [2:38]
5.ワルツ「朝刊」 作品279 (ヨハン・シュトラウス2世) [10:57]
6.ポルカ・シュネル「ちょっとした記録」 作品128★ (エドゥアルト・シュトラウス) [2:29]
第2部
7.オペレッタ「こうもり」 序曲 (ヨハン・シュトラウス2世) [8:41]
8.音楽の冗談「シャンパン・ポルカ」 作品211 (ヨハン・シュトラウス2世) [2:36]
9.ワルツ「夜遊び」 作品466★ (カール・ミヒャエル・ツィーラー) [10:21]
CD2 [52:34]
1.ペルシャ行進曲 作品289 (ヨハン・シュトラウス2世) [2:26]
2.ワルツ「千一夜物語」 作品346 (ヨハン・シュトラウス2世) [8:39]
3.ポルカ・フランセーズ「プラハへご挨拶」 作品144 (エドゥアルト・シュトラウス) [3:30]
4.性格的小品「家の精霊」★ (ヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世) [4:40]
5.ポルカ・フランセーズ「ニンフのポルカ」 作品50★ (ヨーゼフ・シュトラウス) [3:58]
6.ワルツ「天体の音楽」 作品235 (ヨーゼフ・シュトラウス) [9:37]
アンコール
7. ポルカ・シュネル「狩り」 作品373(ヨハン・シュトラウス2世) [2:21]
8. 新年の挨拶 [3:00]
9. ワルツ「美しく青きドナウ」 作品314(ヨハン・シュトラウス2世) [10:26]
10. ラデツキー行進曲 作品228(ヨハン・シュトラウス1世) [3:53]
*日本ヨハン・シュトラウス協会刊の『ヨハン・シュトラウス2世作品目録』(2006)、『ヨーゼフ・シュトラウス作品目録』(2019)に従っています。
★ニューイヤー・コンサート初演奏の作品
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ダニエル・バレンボイム
[録音]2022年1月1日、ウィーン、ムジークフェラインザールでのライヴ・レコーディング
ダニエル・バレンボイム プロフィール
1942年11月15日、ブエノスアイレス生まれ。5歳のとき母親にピアノの手ほどきを受け、その後は父エンリケに師事。少年時代から音楽の才能を発揮し、7歳で最初の公開演奏会を開いてピアニストとしてデビュー。1952年、イスラエルに移住。2年後の1954年夏、ザルツブルクでイーゴリ・マルケヴィチの指揮法のマスタークラスに出席。この年ヴィルヘルム・フルトヴェングラーを訪ね、アドバイスを受ける。
1952年、ウィーンとローマでヨーロッパ・デビュー。1957年にはレオポルド・ストコフスキーの指揮で、ニューヨークにおいてオーケストラとの協奏曲デビューを果たす。ピアニストとしての名声を確固たるものとした後、1960年代半ばからイギリス室内管弦楽団とのモーツァルト作品(ピアノ協奏曲・交響曲・歌劇)の演奏で指揮者としての活動を開始し、1970年代からは、欧米各地のオーケストラに客演を開始。パリ管弦楽団(1975~89年)、シカゴ交響楽団(1991~2006年)の音楽監督を歴任。
オペラ指揮者としての活動は、1973年のエディンバラ音楽祭におけるモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」に始まる。1970年代はベルリン・ドイツ・オペラに客演し、1981年にはバイロイト音楽祭に「トリスタンとイゾルデ」でデビュー。1999年までほぼ毎年バイロイトに登場し、「ニーベルングの指環」全曲、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」、「トリスタンとイゾルデ」を指揮。1992年からはベルリン国立歌劇場音楽総監督に就任、現在に至る。さらにこの間、ミラノ・スカラ座の首席客演指揮者(2007~11年)および音楽監督(2012~17年)にも就いた。1999年には、友人でパレスチナ系アメリカ人学者のエドワード・サイードとともに、国家としては対立を続けているイスラエルとアラブ諸国の優秀な若手音楽家を集め、ゲーテの「西東詩集」から命名されたウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団を創設し、その指揮者を務めている。
2022-01-07
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ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート、2022年はバレンボイム指揮。デジタル配信は1月7日スタート。
http://www.sonymusic.co.jp/artist/DanielBarenboim/info/535715
<img style="display: block; margin-left: auto; margin-right: auto;" src="http://www.sonymusic.co.jp/img/common/artist_image/11020000/11020101/images/202112031151150.jpg" alt="" width="360" height="360" />
コロナ禍の中で今年も来日公演を実現させ、日本の音楽ファンに熱いメッセージを届けたウィーン・フィル。彼らのコンサートの中でも最も有名なのが毎年1月1日に行なわれるニューイヤー・コンサートだ。元旦に黄金のムジークフェラインザールからTVとラジオを通じて世界90カ国以上に放送され、5千万人が視聴するというこのクラシック音楽界最大のイベントは、1939年に始まる80年以上の歴史を誇る。音楽の都ウィーンを象徴するシュトラウス一家のワルツやポルカが演奏され、その高額のチケットは世界一入手困難。そのため、ニューイヤー・コンサートを聴くことは音楽ファンの憧れでもある。
2022年の指揮者は、現在ベルリン国立歌劇場音楽総監督をつとめるダニエル・バレンボイム。アルゼンチン出身のバレンボイムがウィーン・フィルと初共演したのは1965年8月のザルツブルク音楽祭でのことで、ピアニストとしてモーツァルトのピアノ協奏曲第24番を演奏している。それ以来200回近い共演を重ね、今ウィーン・フィルと最も密接な関係にあるバレンボイムは、昨年コロナ禍で演奏休止を余儀なくなくされた同フィルが、演奏再開後最初に迎えた指揮者でもある。ニューイヤー・コンサートには2014年以来、8年ぶり・3度目の登場となるが、これは来年80歳をむかえる巨匠へのウィーン・フィルからのプレゼントともいえよう。
2022年は、演奏会冒頭に「フェニックス行進曲」、ワルツ「フェニックスの羽ばたき」と、不死鳥(フェニックス)の名を冠した曲が2曲並んでいて、「コロナに屈しない」というウィーン・フィルの決意表明であるかのよう。今年生誕195年となるヨーゼフ・シュトラウスのポルカ・マズルカ「海の精セイレーン」など、ニューイヤー初登場曲は6曲。「こうもり」序曲、「天体の音楽」などの有名曲も並び、「ペルシャ行進曲」や「千一夜物語」、「プラハへご挨拶」といった、名前からエキゾチシズムを喚起させる作品も取り上げられるなど、華やかなコンサートが目に浮かぶようだ。もちろん定番のアンコールや新年の挨拶も予定されている。
元旦の演奏会でのライヴ収録直後に音声の編集が行われすぐさま発売・配信されるのがニューイヤー・コンサートの通例で、2022年は1月7日に全世界でデジタル配信が開始される。ヨーロッパのCDショップの店頭に並ぶのは1月14日。国内盤での発売はCDが1月26日、ブルーレイが2月16日の予定。CDの音声はフリーデマン・エンゲルブレト率いるベルリンのテルデックス・スタジオ、ブルーレイの収録はオーストリア放送協会(ORF)が担う。毎年の収録を通じてホールの特性を知り尽くした両者が生み出す鮮明な音声と映像は、たくさんの花で美しく彩られた黄金のホールで繰り広げられる音楽の饗宴を生々しく楽しむ贅沢を与えてくれるだろう。ブルーレイには、海外ではTV生中継の休憩時間に放映されるウィーン・フィルのメンバーによる室内楽でつづった映像作品のほか、恒例のウィーン国立バレエ団によるバレエ・シーン付きの特典映像が収録される予定。
なお2021年は無観客公演となったニューイヤー・コンサートだが、2022年の公演が無観客で開催されるかどうかは現時点では未定。ウィーンでは、オーストリア政府によるロックダウンのため12月12日までは公演が行われていない。
発売概要
[アルバム・タイトル/アーティスト]
ニューイヤー・コンサート2022 / ダニエル・バレンボイム&ウィーン・フィル
[発売日]
デジタル配信:2022年1月7日(通常配信・24ビット96kHzハイレゾ配信・ストリーミング)
2CD:SICC-2236~7 2022年1月26日予定 3,190円(税込)
ブルーレイ:SIXC‐59 2021年2月16日予定 6,270円(税込)
レーベル: ソニークラシカル
[収録予定曲]
第1部
1.フェニックス行進曲 作品105★ (ヨーゼフ・シュトラウス)
2.ワルツ「フェニックスの羽ばたき」 作品125 (ヨハン・シュトラウス2世)
3.ポルカ・マズルカ「海の精セイレーン」 作品248★ (ヨーゼフ・シュトラウス)
4.ギャロップ「小さな広告」 作品4 (ヨーゼフ・ヘルメスベルガー)
5.ワルツ「朝刊」 作品279 (ヨハン・シュトラウス2世)
6.ポルカ・シュネル「ちょっとした記録」 作品128★ (エドゥアルト・シュトラウス)
第2部
7.オペレッタ「こうもり」 序曲 (ヨハン・シュトラウス2世)
8.音楽の冗談「シャンパン・ポルカ」 作品211 (ヨハン・シュトラウス2世)
9. ワルツ「夜遊び」 作品466★ (カール・ミヒャエル・ツィーラー)
10.ペルシャ行進曲 作品289 (ヨハン・シュトラウス2世)
11.ワルツ「千一夜物語」 作品346 (ヨハン・シュトラウス2世)
12.ポルカ・フランセーズ「プラハへご挨拶」 作品144 (エドゥアルト・シュトラウス)
13.性格的小品「家の精霊」★ (ヨーゼフ・ヘルメスベルガー)
14.ポルカ・フランセーズ「ニンフのポルカ」 作品50★ (ヨーゼフ・シュトラウス)
15.ワルツ「天体の音楽」 作品235 (ヨーゼフ・シュトラウス)
他 アンコール曲を収録予定
*日本ヨハン・シュトラウス協会刊の『ヨハン・シュトラウス2世作品目録』(2006)、『ヨーゼフ・シュトラウス作品目録』(2019)に従っています。
★ニューイヤー・コンサート初演奏の作品
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ダニエル・バレンボイム
[録音]2022年1月1日、ウィーン、ムジークフェラインザールでのライヴ・レコーディング
2021-12-03
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野村三郎氏によるNYC2014コンサートレポート
http://www.sonymusic.co.jp/artist/DanielBarenboim/info/435260
オーストリアでの視聴率、何と60%超え!
<img style="margin-top: 10px; margin-bottom: 10px;" src="http://www.sonymusic.co.jp/img/common/artist_image/11020000/11020101/images/NYC2014-1_PhotoTerry-Linke.jpg" alt="" width="600" height="302" />
『バレンボイム、平和のためのコンサートで勝利を収める~音楽的にも、世界平和の希求の点でも充実の一言に尽きる。・・・ウィーン・フィルの類まれな音色を聴かせてくれた《平和の棕櫚》は当夜のハイライトの一つ。・・・《ディナミーデン》の解釈は輝かしい瞬間。』(『クーリエ』紙)
2014年のウィーン・フィル/ニューイヤー・コンサートは、巨匠バレンボイム2度目の登場となりました。ウィーン在住の音楽評論家・野村三郎氏によるレポートをお届けします。
平和を望むニューイヤー・コンサート~バレンボイム2度目の登場
オーストリア人はウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートを聴かないと、新年を迎えた気分にならないらしい。いや放映される90カ国の病みつきになった人たちもそうかもしれない。わが国からも大勢の観客がやってくる。オーストリアでは何と視聴率が60%を上回った。今年の指揮者はダニエル・バレンボイム。イスラエルと周辺の若い音楽家を集めウエスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団を作って平和活動を実践している彼は、今年が第1次世界大戦が始まって100周年を迎えることを念頭に、曲目の選定に加わった。
盛大な拍手に迎えられてバレンボイムが指揮台に上がると、《喜歌劇「美しきエレーヌ」によるカドリーユ》(エドゥアルト・シュトラウス)の景気のいい出だしが始まる。カドリーユのメロディで往時の着飾った上流階級の人々が、列をなしてエレガントに踊る様を姿を思い浮かべたいところ。次は打って変って流れるように静かなワルツ《平和の棕櫚》(ヨーゼフ・シュトラウス)。この作品にこそプロイセンに敗れたオーストリアへの平和の思いが込められている。続く軽やかな《カロリーネ・ギャロップ》(ヨハン・シュトラウス1世)は、皇后カロリーネ記念の門が作られ、川に橋が掛けられたことに因む。異国情緒たっぷりの出だしの《エジプト行進曲》(ヨハン2世)では団員の歌う「らーらー」というメロディが聞こえる。バレンボイムはディヴァン管弦楽団を思い、この曲を選んだ。《もろびと手を取り》(ヨハン2世)のワルツはベートーヴェンの「第九」の合唱の詩がきっかけとなっている。第1部は《恋と踊りに夢中》という題名通り軽快なポルカ・シュネルで盛り上げ、締めくくられた。
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生誕150年を迎えるリヒャルト・シュトラウスやドリーブの音楽も演奏
第2部はまず喜歌劇「くるまば草」序曲(ヨハン2世)。ホルンが森の雰囲気を醸し出し、ゆったりとしたメロディががフルート、ホルンで彩られる。最後はアッチェレランドして盛り上げて終わる。このいささか長い曲の後の短いギャロップ《ことこと回れ》は水車の描写。名曲《ウイーンの森の物語》が続く。曲の間にツィターが哀愁を帯びて奏でられ、これがいかにもウィーン風なのだ。ワルツのメロディーが流れると踊っている気分になっているのだろう、人の肩がかすかに揺れる。
ウィーン・フィルの初期、ヘルメスベルガー一家は3代続いてコンサートマスターを生み出した。その最後のヨーゼフは作曲、指揮もした。彼の《大好きな人》はフランス風ポルカで、どこかウィーン風と違う軽い清楚な曲。こういう曲の後はポルカ・シュネルの《花束》。ヨーゼフ・シュトラウスが造園協会会館に捧げた曲。アンダンテにの後のヴィヴァーチェといったところ。続く《月光の音楽》は今年生誕150周年を迎えるリヒャルト・シュトラウスへのオマージュ。彼の歌劇《カプリッチョ》のフィナーレに近くでそうされる。ナチズムの荒れ狂う中、古き良き時代にテーマを求め、「音楽が先か」「文学が先か」と一見時代離れした戯れを作曲した。
ヨーゼフ・ランナーはウィンナ・ワルツの先駆者であった。《ロマンティックな人々》はセンチメンタルな味わいを秘めた名曲。ポルカ・マズルカ《からかい》(ヨーゼフ)は東欧のマズルカを取り入れ、どこか農民風。《害のないいたずら》(ヨーゼフ)は謝肉祭の騒ぎを反映したような活気に満ちたポルカ・シュネル。
フランスのバレエの大家レオ・ドリーブは《ピツィカート》をバレエ音楽《シルヴィア》に用いた。シュトラウスの《ピツィカート・ポルカ》に影響されたらしい。ピツィカートは作品をおのずと典雅にする。ヨーゼフの《秘めたる引力》は別名《ディナミーデン》。この中にR・シュトラウスが《ばらの騎士》で引用した「mit mir私と一緒に」とオックス男爵が口ずさむメロディが隠されている。人の惹きあう力なのだろう。秘密めかした始まりから軽やかなワルツへ変化が楽しい。再びヨーゼフで《憂いもなく》はポルカ・シュネルの高揚した気分だ。途中で団員たちが「アッハッハ!アッハッハ!」と合いの手を入れ、最後も「アッハッハ!」と陽気に終わる。ところがこれを作曲していた頃ヨーゼフは死の病に見舞われつつあった。作品の表面からだけでは伺えない何ものかがあるものだ。ヨハン2世も死の直前まで髪を黒く染め、コルセットで背中はぴんと張って活動していた。ウィンナ・ワルツは表面的なエレガンスと陽気さだけでとらえてはいけない。もっと違うところにウイーン風の魅力が隠されているものだ。
指揮者のいない《ラデツキー行進曲》
アンコールは《カリエール(馬の疾走)》(ヨーゼフ)。その後は例年どおり、新年の挨拶に続いて《美しく青きドナウ》。新年の挨拶では、バレンボイムが小声で「私とウィーン・フィルは」と言って振り返ると、団員が大声で「新年おめでとう!」とやっていた。そして定番《美しく青きドナウ》。このワルツのリズム、思い入れこそウィーン・フィルならではのものだ。最後はお決まりの《ラデツキー行進曲》。バレンボイムは団員の間を握手して回り、手拍子をとる観客にはポイントで合図するだけ。この間、最後まで指揮は一切せず、この演出が「指揮者のいない《ラデツキー行進曲》」各新聞の見出しになっているほど。バレンボイムの演奏については前回の登場より高く評価されている。2009年は音楽が重かったが、今回は「オーケストラは好きに演奏すればいい」と話していた通り、指揮者が振り回さないでいる方がかえっていい結果となり、いい演奏に仕上がった。こうして2014年のウィーンは、ウィンナ・ワルツで明けたのである。
野村三郎(音楽評論家、ウィーン在住)
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all photos by Terry Linke
2014-01-06
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音楽を通じて「世界の平和」を希求するバレンボイムとウィーン・フィル。
世界70カ国4億人の心に届く世紀のクラシック・コンサート、ソニー・クラシカルから登場。
http://www.sonymusic.co.jp/artist/DanielBarenboim/info/435060
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【CD】2014年1月22日予定 SICC-1705~06 2枚組 3,000円(税抜き2,857円)<a href="https://www.sonymusic.co.jp/artist/DanielBarenboim/discography/SICC-1705" target="_blank">▶商品詳細</a>
【DVD】2014年2月12日予定 SIBC-192 4,935円(税抜き4,700円)<a href="https://www.sonymusic.co.jp/artist/DanielBarenboim/discography/SIBC-192" target="_blank">▶商品詳細</a>
【ブルーレイ】2014年2月12日予定 SIXC-4 5,985円(税抜き5,700円)<a href="https://www.sonymusic.co.jp/artist/DanielBarenboim/discography/SIXC-4" target="_blank">▶商品詳細</a>
【DVDおよびブルーレイには特典映像つき(予定)】
[1]ニューイヤー・コンサート2014の舞台裏
[2]ランナー:ワルツ「ロマンティックな人々」作品167、ドリーブ:バレエ「シルヴィア」から「ピツィカート」のバレエ・シーン
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【2014年のニューイヤー・コンサート・聴きどころ】
■4億人の心に届く世紀のクラシック・コンサート。
毎年1月1日に行なわれるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるニューイヤー・コンサート。クラシック音楽の中でも最も有名なコンサートであり、ウィーンの誇る黄金のムジークフェラインザールからTVとラジオを通じて世界80カ国以上に放送され、4億人が視聴するというビッグ・イベント。
■音楽ファンの憧れ―新年恒例の楽しく華やかなシュトラウスの調べ。
1939年に始まる70年以上の歴史を誇るこのコンサートも2013年で73回目を数えます。音楽の都ウィーンを象徴するシュトラウス一家のワルツやポルカが演奏される華やかなイベントで、そのチケットは世界一入手困難と言われています(20万円以上)。またその模様は毎年CD/DVD/ブルーレイによってソフト化され、クラシック音楽のソフトとして大きなセールスを上げています。
■巨匠ダニエル・バレンボイム2度目のニューイヤー登場。テーマは「世界平和」。
ウィーン・フィルの2014年ニューイヤー・コンサート、指揮は巨匠ダニエル・バレンボイムが2009年以来2度目の登場です。1914年の第1次大戦開戦から100年経た2014年のテーマは「世界の平和」。ベルリン国立歌劇場とミラノ・スカラ座という2大歌劇場を牽引するのみならず、ウェスト=イースタン・ディヴァン管の結成など音楽界にとどまらない幅広い活動を展開しているバレンボイムならではのテーマであり選曲です。バレンボイムは、「2014年は第1次世界大戦の開戦100年にあたる年ですので、これをテーマの主軸に据えたいと考えています。というのは、第2次世界大戦はみなさんよくご存じで話題となりますが、第1次世界大戦のことはいまやすっかり忘れられている。どうしてこの戦争が起きたのか、いかに大変だったのか、将来のためにみんなが知る必要があると思うからです」と語っています。
■気心知れたウィーン・フィルとの共演
バレンボイムは、ウィーン・フィルにとっては定期演奏会や音楽祭・国内外へのツアーの重要なパートナーであり、長年の共演に培われたおたがいへの尊敬の念で結ばれています。2011年3月11日の東日本大震災に際して、バレンボイムとウィーン・フィルは、すぐさまモーツァルトのピアノ協奏曲第23番の第2楽章をその犠牲者に捧げて演奏したことも話題になりました。バレンボイムは「ウィーン・フィルは自分が演奏したいというスタイルをもち、私も自由に指揮します。その方向性が見事に一致し、すばらしいコンサートが生まれるのです」と語っています。
■ニューイヤー・コンサート初登場9曲。指揮者のポートレートでもある第1部。
演奏曲目も例年通り練りに練られたもので、ニューイヤー・コンサート初登場の作品が9曲含まれています。指揮者にちなむ第1部は、妻エレーナ・バシュキロワとの結婚25周年にちなんだ《喜歌劇「美しきエレーヌ」によるカドリーユ》に始まります。ワルツ「平和の棕櫚」、音楽に平和の架け橋となってほしいという願いのこめられた「カロリーネ・ギャロップ」(ウィーン市内のカロリーネ橋にちなむ)、エジプト行進曲、ワルツ「もろびと手をとり」など「音楽を通じての世界平和」を希求するバレンボイムらしい選曲が続きます。
■R.シュトラウス生誕150年も。個性的な曲がそろった第2部。
第2部では個性的な曲と有名な曲のミックスぶりが絶妙です。たとえば有名なワルツ「ウィーンの森の物語」は、ウィーンの森の一角をなしていたクロイスターノイブルクに1114年に建立されたアウグスティヌス派の修道院の900周年を記念しています。また2014年に生誕150年をむかえるリヒャルト・シュトラウスの歌劇「カプリッチョ」から「月光の音楽」が取り上げられるのも聴きもの。ヨハン2世とヨーゼフの合作「ピツィカート・ポルカ」からインスピレーションを受けた、ドリーブのバレエバレエ「シルヴィア」から「ピツィカート」も演奏されます。
■ウィーン・フィルの響きを捉えた充実のサウンド
鮮明な映像と音声は、たくさんの花で美しく彩られたウィーン・ムジークフェラインの黄金のホールでく広げられる音楽の饗宴を生々しく楽しむ贅沢を与えてくれます。CDは、ORFによるTV放送とは別に、2007年以来一貫してニューイヤー・コンサートのCD収録を担当してきているフリーデマン・エンゲルブレヒト率いるベルリンのテルデックス・スタジオのチームが収録に当たっています(したがってTV放送をもとに商品化されるDVD/ブルーレイディスクとは別音声・別編集・別ミックスということになります)。テルデックス・スタジオは、2000年のアーノンクール指揮の年で初めてニューイヤー・コンサートを収録し、それ以来最も数多くこのコンサートを収録するチームとなっています。収録の難しいムジークフェラインの音響特性を知り尽くした彼らならではの安定感のあるサウンドは、黄金のホールに響き渡る、香ばしく厚みのあるウィーン・フィルの輝きを見事にとらえています。一方ブルーレイディスク/DVDのサウンドは、これまた長年このコンサートの生中継を担当しているORF(オーストリア放送協会)収録によるもの。両者の聴き比べも興味深いところです。
■ホールの黄金の輝きを写しだす華麗な映像
HD収録による精細な映像は、文字通り黄金色のホールの輝きと、美しい色とりどりの生け花に飾られた華やいだコンサートの模様を描き出します。本編は基本的にオーストリア放送経由で世界に放映されるTV映像と同じですが、TV放映時にバレエが挿入されるランナー:ワルツ「ロマンティックな人々」作品167、ドリーブ:バレエ「シルヴィア」から「ピツィカート」のみ、バレエなしのフル・コンサート・ヴァージョンが収録されています。[この2曲のバレエの入ったヴァージョンは特典映像に収録されています。]
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【収録曲】
【CD1】
第1部
1 喜歌劇「美しきエレーヌ」によるカドリーユ作品14(エドゥアルト・シュトラウス)
2 ワルツ「平和の棕櫚」作品207★(ヨーゼフ・シュトラウス)
3 カロリーネ・ギャロップ作品21a★(ヨハン・シュトラウス1世)
4 エジプト行進曲作品335(ヨハン・シュトラウス2世)
5 ワルツ「もろびと手をとり」作品443(ヨハン・シュトラウス2世)
6 ポルカ・シュネル「恋と踊りに夢中」作品393(ヨハン・シュトラウス2世)
第2部
7 喜歌劇「くるまば草」序曲(ヨハン・シュトラウス2世)
8 ギャロップ「ことこと回れ」作品466(ヨハン・シュトラウス2世)
9 ワルツ「ウィーンの森の物語」作品325(ヨハン・シュトラウス2世)
【CD2】
1 ポルカ・フランセーズ「大好きな人」作品1★(ヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世)
2 ポルカ・シュネル「花束」作品188★(ヨーゼフ・シュトラウス)
3 歌劇「カプリッチョ」から間奏曲「月光の音楽」★(リヒャルト・シュトラウス)
4 ワルツ「ロマンティックな人々」作品167(ヨーゼフ・ランナー)
5 ポルカ・マズルカ「からかい」作品262★(ヨーゼフ・シュトラウス)
6 ポルカ・シュネル「害のないいたずら」作品98★(ヨーゼフ・シュトラウス)
7 バレエ「シルヴィア」から「ピツィカート」★(レオ・ドリーブ)
8 ワルツ「ディナミーデン」作品173(ヨーゼフ・シュトラウス)
9 ポルカ・シュネル「憂いもなく」作品271(ヨーゼフ・シュトラウス)
[アンコール]
10 ポルカ・シュネル「カリエール(馬の疾走)」作品200★(ヨーゼフ・シュトラウス)
11 新年の挨拶
12 ワルツ「美しく青きドナウ」作品314(ヨハン・シュトラウス2世)
13 ラデツキー行進曲作品228(ヨハン・シュトラウス1世)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ダニエル・バレンボイム
[録音]2014年1月1日、ウィーン、ムジークフェラインザールでのライヴ・レコーディング
★この9曲はニューイヤー・コンサート初登場の作品であることを示す。
*DVDおよびブルーレイの本編収録曲はCDと同じです。
【DVDおよびブルーレイには特典映像つき(予定)】
[1]ニューイヤー・コンサート2014の舞台裏
[2]ランナー:ワルツ「ロマンティックな人々」作品167、ドリーブ:バレエ「シルヴィア」から「ピツィカート」のバレエ・シーン
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■TV放送予定
2014年1月1日夜、NHK教育TV、NHKFMにて生放送予定。ハイビジョン、総合TVでも随時再放送予定。
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2013-12-27
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<h1>【インタビュー】</h1>
<h2>「ウィーン・フィルは自分が演奏したいというスタイルをもち、私も自由に指揮します。その方向性が見事に一致し、すばらしいコンサートが生まれるのです」~ダニエル・バレンボイム2度目のニューイヤー・コンサート</h2><h3 style="text-align: right;">伊熊よし子</h3>
http://www.sonymusic.co.jp/artist/DanielBarenboim/info/435066
<img style="margin: 10px; float: right;" src="http://www.sonymusic.co.jp/img/common/artist_image/11020000/11020101/images/nyc2014-Aphoto2.jpg" alt="" width="477" height="328" />ウィーン・フィルから大いなる信頼を受け、深い絆で結ばれているダニエル・バレンボイムは、2009年に初めてウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートの指揮台に立った。そのときは「平和」をテーマに掲げ、プログラムもそれに即したものだったが、今回も新たに「世界の平和」をテーマに選曲を行っている。
2013年10月初旬、ベルリン国立歌劇場のベルクの歌劇「ヴォツェック」の本番前に、シラー劇場でマエストロに話を伺った。
「私は常に音楽を通して世界の平和を強く訴えたいと思っています。2009年のニューイヤー・コンサートでもそれを実現しましたが、2014年は第一次世界大戦の開戦100年にあたる年ですので、これをテーマの主軸に据えたいと考えています。というのは、第二次世界大戦はみなさんよくご存じで話題となりますが、第一次世界大戦のことはいまやすっかり忘れられている。どうしてこの戦争が起きたのか、いかに大変だったのか、将来のためにみんなが知る必要があると思うからです。」
バレンボイムはそのための作品をいくつか選び、これからウィーン・フィルとの話し合いのなかで詳細を決めたいと語った。その時点で決まっていた作品に関しては…。
「平和と関連するヨーゼフ・シュトラウスの《平和の棕櫚》はぜひ演奏したいですね。それから私が1999年にパレスチナ系アメリカ人学者のエドワード・サイードと創設した、パレスチナとイスラエルの若手音楽家で組織するウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団の結成15年を記念し、ヨハン・シュトラウス2世の《エジプト行進曲》を加えたい。そしてウィーンの自然の美しさは平和に通じると思いますので、ドナウ河沿いの町のクロスターノイブルクの修道院設立900年を祝し、シュトラウス2世の《ウィーンの森の物語》を、さらに2014年に生誕150年を迎えるリヒャルト・シュトラウスの歌劇《カプリッチョ》から《月光の音楽》を考えています。」
バレンボイムは、初めてウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートの演奏を聴いたとき、「立ち見席でもいい」と思うほど深い感銘を受けたという。
「ウィーン・フィルはシュトラウス一家をはじめとするワルツやポルカを熟知し、旋律、フレーズ、リズム、テンポなど、すべて自分たちが演奏したいというスタイルで自在に演奏します。ですから、私も自分の本当に表現したい方法で自由に指揮をする。その結果、ふたつの方向性が見事に一致し、音楽が融合し、すばらしいコンサートとなるのです。」
ウィーン・フィルは「特別な音をもっている」と彼はいう。それは世界のどのオーケストラとも異なる特有の音で、音楽が自然に流れ、独創性を保持し、指揮者冥利に尽きると。
「ニューイヤー・コンサートは単なる娯楽作品を演奏したり、アンコールピースだけを並べるものではありません。ひとつのドラマをもち、創造性に富んでいます。ウィーン・フィルもリハーサルから真剣勝負ですが、指揮者も責任重大です。でも、私はすべての音楽を楽しみながら指揮しますよ。」
彼は音楽家だった父親から「音楽をよく考えて演奏すること」という精神を伝授された。それを座右の銘とし、どんな作品を演奏するときもスコアを深く読み、熟考する。ニューイヤー・コンサートも各曲の真意に寄り添う、洞察力に富む演奏が披露されるに違いない。
(2013年11月)
2013-12-27