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▼ SOUL QUEST OVERTURE

「自分の大事なもの、願っていること、それが自分にとってのソウルだと思っているんです。そして、「何が私のソウルなの?」って探して見つけることが明日に向かう力になるはずなので、そういう意味で『SOUL QUEST』というアルバムは聴く人にとってのソウルを見つけるきっかけになれば、そして、明日へ向かおうという作品になればいいなと思いますね」
▼THIS IS ME

「「THE TOUR OF MISIA JAPAN SOUL QUEST」が始まる前の今年の1月、鷺巣詩郎さんから「最高傑作のディスコ・ソングをMISIAに捧げます」というメッセージと共に「THIS IS ME」と題されたこの曲が送られてきたんです。鷺巣さんとは「THE GLORY DAY」ほか、数多くの曲を作ってきましたが、この曲では今までのイメージを覆して、リアルタイムで80年代に音楽を作ってきた方らしく、突き抜けるような力強さとアッパーなグルーヴに煽られました。そして、「鷺巣さんって、人が描いたイメージで生きているのではなく、目の前のキャンバスに自分が描きたい音楽を思いっきり描いて生きている人なんだな」って思ったことから、自分にとっての「THIS IS ME」を歌詞にしたんです」
▼EDGE OF THIS WORLD

「この曲は前作『JUST BALLADE』に入れずに、そのまま引き続いて作っていた曲です。そして、最初はそこまでまとまっていなかった自分の伝えたいことが自分の願いによって未来を作るというメッセージへと徐々にまとまっていきつつ、前作がバラードだったので、次のアルバムはソウル、R&Bを念頭に置いた作品にしたいなって。そんな思いがこの「EDGE OF THIS WORLD」に進化しました。エッジの聴いたバラードのような、ダーク・エレクトロ・ハウスといえるような……そして、この曲から次に出来上がった「MAWARE MAWARE」に向かっていくベクトルが感じられますね」
▼素晴らしいものを探しにいこう

「2月からスタートしたツアーのタイトルを考えていた時、この曲がすでにあったんです。曲自体、ドーンとした重いものではなく、爽やかでアップテンポ、そして踊りたくなるようなものなんですけど、"素晴らしいもの探しに行こう"というのは、つまり、"SOUL QUEST"なんですよね。私がアフリカへ行ったことも、COP10の名誉大使に選ばれたり、ライヴでみんなと会うことも、そして、日々の楽しみを探していくことも、全ては、"素晴らしいもの探しに行こう"ということ。そういうメッセージにつながる、ツアー・タイトルにふさわしい言葉はないかな?って考えていた時に、昔、一瞬、頭をよぎった"SOUL QUEST"という言葉がふさわしいと思ったんです」
▼記憶

「震災前に作った歌ではあったんですけど、3月11日以降、自分のなかでも震災後に作った歌のように聞こえるところがあります。環境問題や貧困問題、子供たちの心の問題も含めて、自分から知ろうとしたり、敢えて尋ねてみようと思わないと見えてこないことが世の中には沢山あって、そうした部分に目を向けることはすごく大事だと思うんですね。そんなことを考えて、口ずさみながら、この曲の歌詞を作っていたんですけど、その言葉をもとに作詞家の松井五郎氏と作業するなかで、「記憶」という言葉が出てきたんです。記憶というのは過去の体験から生まれるもの、そして、未来に向かって持ち続けているものだから、つまり、記憶というのは未来に影響を及ぼすものですよね。そして、未来に影響を及ぼすなら、哀しい記憶より、「あの時、楽しかったな」とか「あの時、すごく大事にされたな」っていうような、優しい記憶が多い方がいいですし、それがまた明日のための力になると思うんです。いま私が言ったことは言葉にすると綺麗事に聞こえるかもしれませんが、でも、音楽家は優しい記憶を沢山残すために活動していると思いますし、この曲も優しい記憶につながるものにしたかったんです。そんな曲が哀しい記憶を沢山生んでしまった震災後にたまたまリリースされましたが、「記憶」という曲に込めた優しい気持ちを早く取り戻せる日が来ることを願うと同時に、これからも優しい記憶を作らなきゃいけないなと今は思っています」
▼雨のソナタ

「昨年夏、JPを中心としたサウンド・プロダクション・チームが男性だけで行った2週間の合宿から生まれた楽曲です。初めて曲を聴かされた時、どの曲もものすごく素晴らしいなと思ったんですけど、真っ先に耳に飛び込んできたのがこの曲だったんです。「LIFE IN HARMONY」で自然とのつながりを表現したすぐ後だったこともあって、合宿での制作中に実際の雨と雷の音をフィーチャーした、このミッド・テンポのバラードに反応したんでしょうね。すでにライヴでも披露しているんですけど、初めて聴く皆さんから好評を頂いている1曲ですね」
▼君には嘘をつけない

「「To Be In Love」ほか数々の曲を作ってくださったJoiさんの楽曲とhinataさんの歌詞、その組み合わせを前に、レコーディングが出来ないくらい涙がこぼれた曲です。「君には嘘をつけない」と言いながら嘘をつこうとしているのか、それとも嘘をつけないのか、歌を聴いていてもまだ迷うんですけど、演奏は「THE TOUR OF MISIA JAPAN SOUL QUEST」ツアーが始まった時のメンバーによるもので、ライヴに来てくださった方にはより深く聴いてもらえる曲になったんじゃないかと思います」
▼真夏のカメレオン

「ドラムとベースの掛け合いがすごく格好いい曲なので、そのビート感を楽しみつつ、そしてカメレオンな歌詞をぜひとも楽しんで頂きたいですね。ピアノはジョン・レジェンドのサポートを担当しているクリス・ロブさんに担当して頂いたので、ソウル・ミュージックがお好きな方は彼のプレイもチェックしてみてください」
▼MAWARE MAWARE

「アフリカの音楽や子供たち、人とのつながりや自然や文化に対するリスペクトから行っていた社会貢献活動とその思いを感じ取ってくださって、オファーを受けた2010FIFAワールド・カップのオフィシャル・アルバム収録曲です。私とMUROさん、JPからなるクリエイティヴ・ユニットがプロデュースを担当したんですけど、その作業にあたってはMUROさんから「この話はある意味で原点回帰だと思うんだよね」って言われたんです。アフリカから人類が誕生したという説やソウル・ミュージックもそのルーツはアフリカにあるわけですし、「ソウル・ミュージックを愛する僕たちはぐるっと一周して帰るんだよ」って。そういった話やサッカーボールが転がるイメージから着想した"MAWARE MAWARE"っていうフレーズをこの曲で歌ったんですけど、そうしたら偶然にもスワヒリ語で"MAWARE"は"回る"という意味だったんです」
▼LIFE IN HARMONY

「昨年3月に国連の生物多様性条約第10回締結国会議、COP10の名誉大使に任命して頂いたことを受けて、COP10のスローガン「Life In Harmony Into The Future」から生物の多様性についてのメッセージを込めました。ここで歌っていることは日本だけの問題ではないので、世界中の人に聴いて欲しいと思っていたんですけど、デイヴィッド・フォスターさんにアレンジして頂けるという話になって、ロサンゼルスに飛びました。デイヴィッドさんとの作業は、必要最低限の、それでいて洗練された機材だけが置かれた彼のスタジオから出てくる音の深みに感動しながら歌入れしたことを思い出します」
▼明日へ

「東日本大震災が起こった3月11日は地下のスタジオに籠もって、楽曲を制作していたんですね。そこで揺れに気付いて、みんなで外へ逃げだしたんですけど、あの日は交通機関も麻痺していましたし、一人で家に帰るのも怖い状況だったので、いつでも逃げられるように靴を履いたまま、地上のスタジオに移って、歌入れを続けたんです。ただ、あんな恐ろしいことが起こって、助けを求めている人がいること、そして自分の非力を思いながら、迷いつつの作業は混乱のまま終わって。それから1週間ほどは、音楽活動が一切出来ない状況だったんですけど、何故出来なかったかというと一つには自分の心の問題もありましたよね。どういう気持ちで歌えばいいのか。音楽が無力であるようにも感じられましたから、まずは被災者の方に対して、何か身体的なサポートが出来るような「HOPE FOR JAPAN」という組織をみんなで立ち上げて体制を整えました。そして、ツアーはそのまま延期せず続けようと思っていたんですけど、お客さんの安全や電力のこと、そして東京もものすごく混乱していたので、延期を決断しました。そして、次のライヴまでの2、3週間を過ごすなかで、震災当日やその前といった感じで自分の思いが過去に戻っていって、夜になると涙が出たり、怖くなったり。そして、報道を通じて、今に迷っている人、夜も眠れず怖い思いをしている人がいることを目の当たりにして、これからどうなっていくのか、遠い未来のことが何も考えられない状況下で自分がやるべきことを思いました。私は被害に遭っていないわけですから、こういう人間がいま頑張らなきゃいけないと思いましたし、遠い未来のことは分からなくても、ほんの少し、5分先でもいいから、その先へ向かって活動していくことがやっぱり大事なんじゃないかなって。そこで私は「明日に向かって歌うんだ」という気持ちになりました。それがまず一つのメッセージ。それから、被害に遭われている方に対しては、世界中から祈りの言葉が伝えられていましたけど、たとえ、届かないとしても「私たちが頑張ることで安心して眠ることが出来る状況になって欲しい」と願わずにはいられませんでした。そんな気持ちがこの曲には込められていますし、それを全国で歌うことによって、とにかく明日へつなげたいと思っています」