テオドール・クルレンツィスが2017年度 第55回「レコード・アカデミー賞」大賞と大賞銀賞の2冠達成!
テオドール・クルレンツィスが2017年度 第55回「レコード・アカデミー賞」大賞と大賞銀賞の2冠達成!
音楽之友社発行のクラシック音楽専門誌「レコード芸術」誌による2017年度 第55回「レコード・アカデミー賞」が発表されました。鬼才指揮者テオドール・クルレンツィスが、大賞と大賞・銀賞の2冠を制覇!同じアーティストが大賞と大賞・銀賞を受賞するのは50年以上の歴史を持つ同賞の歴史の中でも初めてのこと。クルレンツィスにとっては2010年度、2016年度に続き、2年連続、3度目の同賞受賞となります。 https://www.ongakunotomo.co.jp/m_square/record_academy_total/2017.html
大賞の栄誉に輝いたのは11月1日に発売されたばかりの「チャイコフスキー:交響曲第6番『悲愴』」(交響曲部門)。
クルレンツィスにとってチャイコフスキーは「モーツァルト、マーラーと並ぶ大切な作曲家」と公言するほどの存在。この「悲愴」はクルレンツィスが初めて録音したチャイコフスキーの交響曲となりましたが、それだけに今春の音源編集中は「毎晩『悲愴』のマスターとともに眠ってるんだよ」と語っていたほど作品に入れ込んでおり、自分が納得いく形に仕上がるまでじっくりと時間をかけたため、ほぼ3カ月遅れでの発売となりました。チャイコフスキーへの手紙という体裁で自ら書きおろした長文のライナーでも、「今でも私は、この音楽を演奏するということがどれほど途方もないことなのか、完全には理解できないでいる。これは演奏されるべきものなのだろうか? 私には分からない。そもそも演奏可能なものかどうかも私には確信が持てない。けれども、美を前にして泣くという能力を私たちが失ってしまったこの世界で生きることはそんなに楽なことではない」と作品への強い思いを吐露しています(ちなみにライナーのタイトルLove will tear us apartは、イギリスのロックバンド、ジョイ・ディヴィジョンの1980年のヒット曲です)。
大賞銀賞は「モーツァルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』」(オペラ部門)。
クルレンツィスが2013年にスタートさせたモーツァルトのダ・ポンテ・オペラ三部作レコーディングの掉尾を飾るアルバムとなったもので、クルレンツィス曰く「あらゆる演奏家にとって重要なオペラ」の21世紀の決定盤として既に欧米のメディアで絶賛されてきています。これは2015年11月から12月にかけて、セルゲイ・ディアギレフの生まれ故郷として知られるロシアのペルミ国立歌劇場を2週間閉鎖してレコーディングされたもので、その模様はドイツの国際TV放送ドイチェ・ヴェレによってドキュメンタリー『クラシック音楽の反抗者』が制作されたほど話題になりました。モーツァルトはクルレンツィスにとって、チャイコフスキー、マーラーと並ぶもう一人の「神」であり、あらゆる点で完璧を期したいという強い思いのゆえに、2014年に一度全曲をレコーディングしながらも納得がいかず、歌手を入れ替えて再度全曲をレコーディングしたほどです。このオペラについてクルレンツィスは「今の時代に誰かが初めて《ドン・ジョヴァンニ》を観ることによって感じた興奮は、18世紀にプラハあるいはウィーンでこれを観た人が感じた興奮と全く同じものだろうと確信しています」と語り、「今から数百年先の未来でも、この音楽はこれを聴いたあらゆる人に正確に同じ衝撃を与えるだろうと信じています。モーツァルトの音楽は、歳月を経てはいるけれども素朴なところは全くなくて、ものすごく前衛的な音楽であり続けています」と作品の永遠性を確信しています。
クルレンツィスがそれぞれのアルバムで指揮しているオーケストラ、「ムジカエテルナ」は、チャイコフスキー「悲愴」ではモダン楽器、モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」ではガットに張り替えた弦楽器セクションをはじめとするピリオド楽器(および通常よりは低めのピッチ)を使用しています。同じオーケストラが演奏レパートリーによって完全に楽器を持ち替えるのは珍しく、そのことにもクルレンツィスの強いこだわりと意気込みが反映されています。
なおクルレンツィストムジカ・エテルナは2019年2月に待望の初来日が予定されています。 http://www.kajimotomusic.com/jp/news/k=2855/